第12話
翌日、トカゲは森へと来ていた。
2回目だが、まだ森の中は見たことのない植物が生えていたりと、興味深いものがたくさんある。
その中でも、キノコに興味がわいた。
独特の形と変わった匂いに引き寄せられ、間近で匂いを嗅いだり咥えたりした。
口に入れると、昨日幼体からもらった食べ物に比べると数段落ちるが、美味いと感じた。
それで、次々にキノコを口に入れていたが、中にはマズイものや舌がピリピリするのもあったが、そういったものはすぐさま吐き出した。
そんな感じで森の中を探索していると、時々動物に出会う。
出会うのは、リスやネズミといった小動物、シカやイノシシといった大型の動物とも出会うが、トカゲと出会うと逃げていく。
逃げていく動物を見ても、トカゲは追うことはせず、ゆっくりと歩いていく。
トカゲの目当ては、ゴブリンなのだが、なかなか遭遇できない。
キノコをつまみ食いをしているが、量があるわけではないので、腹が満たされるわけではない。
森に入って数時間が経ち、このままではゴブリンと遭遇できないかもしれない、と思い始めた頃、遠くの方で声がするのが聞こえた。
聞き覚えのない声だったが、目当てのゴブリンと遭遇できていないトカゲは、その声の方へ行ってみる事にした。
声の方に近寄っていくと、だんだんとはっきりと聞こえるようになり、どうやら1匹だけでなく何匹もいる事がわかる。
ある程度近寄ったところで、騒いでいるのが目当てのゴブリンだった事がわかる。
その数は5匹もいて、ゴブリンたちが倒したのだろうと思われるシカへと群がってる。
どのゴブリンもいいところを食べようと、我先に飛びつき奪い合う。
中には、取っ組み合いを始めるほどだった。
今のゴブリンたちは、油断していて隙だらけだが、さすがに5匹もいるのを襲う気にはなれず、トカゲはしばらくその様子を見ている事にした。
ゴブリンたちは、どうにか食べる箇所が決まったようで、互いに牽制をしながらも食事を始める。
しばらく経つと、ゴブリンたちは獲物を食べ尽くし、残されたのは骨だけとなった。
食事が済んだゴブリンたちは、周囲を警戒もしないで、その場に横になり眠り始めてしまった。
それを見ていたトカゲは、こいつら、これでよく今まで生きてこれたな、と思った。
ゴブリンたちが眠り出しても、トカゲは動く事なく様子を窺う。
しばらくして、ゴブリンたちが深い眠りに落ちただろうと思うほど時間が経った頃、ようやくトカゲは動き出した。
トカゲは、眠りに落ちた1匹のゴブリンに近寄り腕を咥えると、ズリズリと引きずって移動する。
普通、そんなことをされれば目が覚めるものなのだが、ゴブリンは目覚める様子はない。
そのままトカゲは、10分近くも移動をすると、ここなら騒がれても他のゴブリンたちに気づかれないだろうと思い、引きずってきたゴブリンの喉に噛み付く。
すると、ようやくゴブリンは目を覚まし、噛み付いてきたものに抵抗しようと掴もうとするのだが、その前にトカゲは首の骨ごと噛みちぎる。
流石にそんなことをされたゴブリンは、ろくな抵抗もできずに命を落とす事となった。
トカゲは、ゴブリンが死んだことを確認すると、胸に噛みつき食べ始める。
まずは心臓——魔石——を、次に臓物を食べていく。
それらを食べ終えると他の部分を放って、きた道を引き返しゴブリンたちの元へ向かう。
ゴブリンたちのところにたどり着くと、同じことを2度繰り返し3匹目を食べ終えると、ようやく満足したのか、トカゲは近くの木に登りある高さまで来たところで目を閉じる。
トカゲが木の上に登ってからしばらくすると、眠りについていた1匹のゴブリンが目を覚ます。
目覚めたゴブリンは、周囲を見渡して1匹だけしか残っていないことを不思議に思ったのか首を傾げるが、少しするとどうでもよくなったのか、気にする素振りも見せず、残っていたシカの大腿骨を掴んで振り回し始めた。
それがうるさかったのか、残った1匹も目を覚まし、骨を振り回していたゴブリンを見ると同じように、骨を掴んで振り回す。
すると、2匹は掴んだ骨が気に入ったのか、肩にかついで移動を始める。
移動してしばらくすると、2匹は血の匂いを鼻にすると、顔を見合わせると、匂いの元に向かって走り出す。
そして、辿りつき目に入ったのは、食われて無残な姿になった仲間たちだった。
そのことがわかった2匹は怒り狂い、ギャーギャーと騒ぎ始める。
そうなれば、トカゲはうるさくって休んでもいられない。
騒いでいるゴブリン2匹を見ると、登っていた木を蹴り、ゴブリンめがけて飛び降りる。
しかし、ゴブリンはその事に気づかない。
気がついた時には、トカゲが1匹のゴブリンを押し倒し、喉に噛みつこうとしていた。
その事に気づいた、もう1匹のゴブリンは手にしていた骨を振り下ろし、トカゲの背中を叩く。
だが、叩きつけた骨は跳ね返り、よろめいてしまう。
体勢を整え、トカゲを見るが効いているようには見えない。
それでもゴブリンは諦める事なくトカゲを叩き続ける。
背中を叩かれているトカゲは、気にした様子もなく、押し倒したゴブリンへと噛み付く。
噛みつかれたゴブリンが抵抗してきたが、意にも介さず喉を噛みちぎる。
喉を噛みちぎられたゴブリンは、力を失い腕が地に落ちる。
トカゲはそれを確認すると、背中を叩いているゴブリンへと向き合う。
すると、ゴブリンは危険を感じたのか、叩くのをやめて後ずさる。
2匹は一瞬だけ睨み合うが、すぐさまトカゲが飛びかかる。
ゴブリンは慌てて骨を突き出すが、トカゲは骨に噛みつき、バキリっと噛み砕く。
ゴブリンは、噛み砕かれた事が信じられなかったのか、残された骨に目を向けるが、すぐに放り投げ身を翻し逃げていく。
トカゲは追おうと思ったが、意外にもゴブリンの逃げ足は速く、追いつくのは大変だと判断してやめる。
完全にゴブリンの姿が見えなくなると、トカゲは倒したゴブリンに近寄ると胸に噛み付く。
そして、心臓の部分を噛みちぎると、もう用はないと言わんばかりに、その場に残して森から出ていく。
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