逆転世界の過ごし方

サチヤ

第1話 えー‼︎ココはどこですか⁉︎

なんなのよー‼︎私が何したっていうの?

ここから出してよー‼︎ねぇってば‼︎

どんなに叫んでも返事がない。

それどころか人の気配すらしない。

いったいここは何処なのよー!!


三時間ほど前、私、工藤真奈花は大学の噴水前で友達と話していた。

とても楽しくて騒いでたら、うっかり噴水の中に落ちてしまった。

あっ!落ちる……って思ったのに、いつまでも底にたどり着かない。

えっ……足が着いた⁉︎私、逆さまに落ちたよね……。

おそるおそる目を開けると外国のお城の様な庭に立っていた。

ここは何処⁉︎服は濡れていないから夢……だよね?考え込んでいると、騎士の格好をした人達が近づいて来た。

何だろう?周りを見ても誰もいない。私に用があるんだろうか……

騎士はいきなり槍を突き付けて来た。

なっ何!!なぜ私が……

騎士の一人が叫んだ。

「なぜ女が短いドレスを着ている!」

「えっ!短いドレス?スカートの事⁉︎これのどこが悪いの……」

「怪しいヤツ‼︎連行しろ!」

「何で私が⁉︎なっ何するのよー‼︎」腕を両脇から掴まれた。

ふと騎士の顔を見て驚いた。女だよね……しかも騎士が全員女の人って、きっと女性騎士なんだろう……

「はっ、離してください!スカートの何が悪いんですか⁉︎女なら普通でしょ!!」

「女はドレスなど着ない!牢に連れてけ!」

「はっ。かしこまりました。」騎士に囲まれ牢屋に入れられた。

「私が何したっていうの‼︎」

「黙れ!お前の処分が決まるまで、おとなしくしていろ!」そう言うと牢にカギを掛けて行ってしまった。

はぁ……なんなのこの夢。やけにリアルなんだけど……誰か私を起こしてくれないかなぁ……自分で頬をつねってみた。痛い……痛みがある……現実なの⁉︎ウソでしょ‼︎出してよ……ここは何処なのよー‼︎

しばらくして、女性騎士とドレスを着ている男の人⁉︎が来た。なぜドレスを着ているの?とても涼しげな目元で整った顔なのに残念に思った。

「あなたは、短いドレスを着ていらっしゃるけれど、女性の方よね?何処からいらしたの?」と、聞かれた。

「ど、何処からって、日本よ!」

「日本⁉︎知らないわねぇ……」

「それよりここは何処なんですか?」

「シャナム国よ。愛と美に恵まれている国なのよ」

「シャナム国⁉︎愛と美って何処……も、もしかして、ここは地球という星じゃないんですか⁉︎」

「地球?いいえ?この星はサダールよ」

日本でもなくて、地球でもない……もしかして、異世界に来ちゃった……足の力が抜けしゃがみこんでいると、男性が大丈夫かと聞いてきた。

「えぇ……大丈夫です。ちょっとショック過ぎて……」

「あなたは、違う世界から来たようね。私の国シャナムに三百年ほど前に違う世界から来た人がいたから、あなたもそうなのね……」

「えっ‼︎私の他にもいたんですか⁉︎」

「えぇそうよ。勇敢な男性だったらしいわ。それに彼は、ドレスが好きでパーティには美しいドレスで出席してたらしいわ。だからこの国、いいえ、この星では男性はドレスを着て、女性はスーツを着るのがあたりまえの事なのよ。」

誇らしげに微笑む姿に、そうなんですかぁ……と、私は苦笑いするしかなかった。

「自己紹介がまだだったわね。私は、ジョエル・スミス。二十四歳で、この国の王子よ。あなたの名前は?」

「私は、工藤真奈花です」

「おいくつかしら?」

「二十歳です」

「まぁ⁉︎もう少しお若いと思ってましたわ」

「そ、それはありがとうございます」あぁ……女言葉が上手というか自然。

だけど……聞き慣れないから微妙だわ……私の世界にもおネェの人がいたけれど……これが言語なのだからしょうがない。慣れれば大丈夫⁉︎というか、私どうやって帰るの……あぁ……と、頭を抱えていると。

「真奈花さん。あなたをこの国のお客様として、おもてなしさせて下さいませね」

「えっ、でも……ご迷惑じゃないですか?」

「私どもの調べでは、残念ながら帰る事は難しいと聞いております。どうか、私どもの城でお守りさせて下さいませ」

「わ、わかりました。お世話になります」

行くところが無いし、助かるんだけど……お城で客人扱いは正直……気が引ける。

うーん……ガクッ。考えても行く所が無い。ただでお世話になるわけにはいかないから、何か手伝いをさせてもらおう……牢から出してもらい、ジョエル様の案内で部屋の中に入った。

「うわぁ……素敵‼︎」家具はどれも素晴らしい物だった。

「あの……いいんですか?こんなに素敵な部屋をお借りして……」

「お気になさらずに自由にお使い下さいませ。あと、この者が真奈花さんのお世話を致します、ミラ・ケインズでございます。何かありましたら、この者をお呼び下さいませ」

「初めまして真奈花様、私がミラ・ケインズでございます。どうぞミラとお呼び下さいませ」

「初めまして工藤真奈花です。宜しくお願いします」

うーん……メイド服着ている……しかもヒゲでマッチョだし……あっ?化粧はナチュラルメイクなんだ。へぇ……この世界は、普通に男女逆転なんだ……ちょっと見たくないんだけど……慣れるだろうか⁉︎なんだか不安になってきた……

「何かご用はございますか?」

「今はとくに大丈夫大丈夫です」

「では、後ほどご説明に参ります」

はぁ……お茶でも飲もうかなぁ……さてどうしたものか……




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