第10話 悪魔襲撃
俺とアディル、ペテルは呆然としていた。いや、しない方がおかしい。街が火の海なのだから。
しかしそんなおかしいやつが一人ここにはいる。
「あ〜。襲撃されて15分といった所でしょうか。私たちのいた第六番街は魔法で加工された煉瓦のおかげでまだ火は来てなかったようです」
エリスは顔色変えずに呟く。
そしてその炎の中を蝙蝠のような羽や頭から角が生えた人型生物、俗に言う悪魔が三体のグループでそれぞれ破壊活動を行っている。
「おいおい! やべーんじゃねーのか!? おいペテル! お前は店に戻ってあれを持ってこい!」
「は、はい!」
ペテルは来た道を走って戻っていった。
アディルも落ち着きが無くなっている。
「落ち着いて下さい。この現象は昨日から予測できた事ですよ? 」
・・・・・・
・・・・・・
「「「は!?」」」
なんだこの娘? この規模の・・・人災? 災害? が予測の範囲内だと?
「レクトさんには昨日言ったのですが、エール・ゼルヴィンや様々な村で悪魔の襲撃があったという出来事がありました。ただ、この国に打撃を与えるには申し訳ないですがエール・ゼルヴィンよりもエルフィムや王都アイクレルトを狙うべきです」
そういえば昨日この街は商業関係が発達しているとか言ってたな。確かにそこを突くと経済関係は大きな傷を負う。
「ならなんでエール・ゼルヴィンを狙ったんだ?」
手当たり次第、なんて考えでは無いはずだ。
「私の考えですが、おそらく警備の緩和、戦力の低下が目的かと」
昨日の夜にエリスはこの街から2万の兵をエール・ゼルヴィンに派遣すると言っていたな。それに近くの集落にも。
「既にこの街は約3万近くの兵が外に出ています。アリスティア伯爵も派遣するのは惜しんだでしょうが、エール・ゼルヴィン卿との関係悪化を避けるためと悪魔の出現理由が不明瞭なのは良くないと考えたのでしょう。仕方がないですね。王都の場合はそこまで打撃は無いですがこの街で3万だと人口の3分の1。この街で戦えるのは残りの人数の半分以下でしょうか」
エリスは楽しそうな笑顔を浮かべる。
「さて、
「47万!? 勝てるわけねぇじゃねーか!・・・、いやその顔。雷閃の魔女様にはこの状況を打開する策があるンだな?」
「いいえ? これから探すんですよ。・・・・・・と、言っても探すのは魔法の術者ですが」
魔法の術者?
「あの悪魔は唯一の個体では無く召喚魔法で呼び出された個体でしょう。ならば魔法で操っている人を見つけて殺せば片付きます」
殺せばって、相変わらず物騒な言葉を使うなぁ。でも、
「どうして召喚魔法を使っていると分かるんだ?」
弱い個体でも召喚では無い可能性があるだろう。
そんな思いで質問したのだがエリスは少し俯いて黙った。
「・・・ どうした?」
そう聞くとエリスはすぐにさっきの笑顔に戻った。しかしその笑顔は少しぎこちない。
「私も・・・、使うからだいたい分かるんですよ」
なるほど。たしかにその使用者しか分からない事はたくさんあるからな。その一種なのだろう。
「エリスの嬢ちゃんが召喚魔法なんて聞いた事無ぇな。・・・奥の手か?」
「ま、まあそんな所です」
やはりエリスの笑顔がぎこちない。この手の会話はよした方がいいな。
「で、俺達がやる事はその術者を探す事か?」
「え、ええ。そうなります。三人で動くのは効率が悪いので私は別行動にしま・・・」
エリスの表情が急に引き締まる。
「エリス? 何かあっ・・・」
ドバァン! ゴン! ゴン! ゴン!
急に横では空から炎の塊が降ってきて爆発。上では何か硬質的な壁で阻まれる様な音がした。
「ほう・・・。今のを防ぐの。流石ね、雷閃の魔女」
上から女性の声が聞こえる。
振り向くと悪魔の女が上から見下ろしていた。
悪魔、一般的なイメージ通りで色黒で露出度高めな物を着ている。それに顔立ちが整っているため、美人と称される部類だろう。ただ、炎の塊を手にしているためそんな事どうでも良くなってくる。
「悪魔の分際で私を見下しているのは中々腹が立ちますね〜。貴女は確か『三柱』のカマエルでしたっけ。やはり出てきましたか」
エリスにはらしくない言葉使いだ。しかし、三柱? なんだそれ。
「なあ三柱ってなんだ?」
俺はアディルの方を向いて聞いてみる。
「おいバカ! カマエルから目を逸らすな殺させるぞ。三柱は悪魔アムネルの手下の中でも最上位の悪魔だ。強さ的にゃあ超級種と上位種の間だが、普通に化け物だ。こいつらが軽く暴れればこの街は焦土になるぞ」
つっよ。そんな奴にエリスは喧嘩を売ったのか。視線を外しただけで死ぬとか・・・・・・。
「私はこの悪魔の相手をしますね。 レクトさん達は行ってください」
ん・・・。いや、ここにいてもエリスの足を引っ張るだけだな。
「ああ。任せた」
「あとこれを持って行ってください」
俺はエリスから銀の十字架のキーホルダーを貰う。
「必ず役立ちますので」
「分かった。 死ぬなよ」
そう言って俺達は走り出す。
「逃がさないわ!
カマエルはこの場を離脱する俺達に魔法を放った。
ゴン!
「ダメですよ〜。私が相手です」
炎の魔法はエリスの魔法で防がれた。
そしてそのまま俺達は離脱した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺達は大通りから元から人気のなさそうな路地へ入っていく。
しばらく走ったが、やはり47万もの悪魔。どこに行っても悪魔だらけだ。
「おいおい冗談じゃねぇ!
「ちっ」
悪魔が襲ってきたのでアディルは地面の土からチタンを生み出し剣を作成。俺はベレッタを抜く。
ドバン! ドバン! ドバン!
「でりゃあ!」
当たった悪魔や斬られた悪魔は奇声を上げ、傷口から妙な液体を流しながら消えていく。
「この感覚、やはり召喚魔法のもだな!」
「死体が残らないなんて普通じゃないからな」
そうやって何体もの悪魔を殺しながら先へ進む。
「はぁ」
銃を撃っても剣で斬っても全く数が減らないな。おまけに残りの残弾も心もとない。
だが見えるだけでも二、三十の悪魔は周囲を囲む様に寄ってくる。
「
「そろそろやばいか?」
残りの残弾はマガジン一つ分だ。
それでも俺はベレッタを悪魔に向け、引き金を引こうとした。が、
俺の前を白いフードを被った小柄な人物が通った。その瞬間、悪魔の首に金属の反射光が走り、首が落ちる。
そして俺が瞬きをしている間にその後ろにいた悪魔の首が落ちている。
ゴトゴトゴトゴトゴトゴトゴト
俺の後ろから首が大量に落ちる音が聞こえる。
・・・・・・どうやら俺が瞬きをしている間に周囲の悪魔の首を落としたらしい。
その人物は俺の前で白いフード上げた。中からは見た事のある幼顔と赤髪が姿を現した。
「ようにいちゃん。無事か?」
「あ、ああ。助かったよベル」
ベルは剣をしまい、アディルの方を見る。
「お! アディ兄! 久しぶりー!」
「おおベル! サンキューな!」
知り合いだったのか。
「アディ兄はこの剣の作成をしてくれたからな! こいつはずっと俺の相棒だぜ!」
ぽんぽんと、剣を軽く叩く。
序列五位の愛剣を手がけたアディルの腕は相当なのだろう。やはり一目置かれているのか。
「そいつはA+ランクのブラックナスレ製だからな。切れ味、硬さは1級品。更にはブラックナスレの特徴でこの剣は伸縮自在なんだぜ。名前は金属部分を夜空に見立てて、太陽の次に明るいシリウスから取って
ほー。いい名前じゃん。
「無駄話してる場合じゃねーよにいちゃん方。こっちの北門側はあらかた対処したが流れの悪魔や残りを潰す作業が残ってるぞ」
「そうだな。いこ・・・」
う。と言おうとしたが、ベルの背後から五体の悪魔が襲いかかる。
「ベル! 後ろ!」
「ん?」
ベルが振り向いた瞬間、悪魔の魔法が繰り出されベルの命が奪われる。
と、思われた。
ベルは剣を抜いた。いや、抜いたように見えた。
そして気がつくと既に悪魔の首が落ちている。
「・・・・・・。一瞬かよ。レクトは今の見えたか?」
「・・・・・・。見えなかった。なんだよあの動き」
どう見ても人間の域を超えてるよ。
ベルはそんな思いを無視して軽く走っている。いやあの動きが出来るのだから歩いているのと同じだろう。
「ん? どうしたにいちゃん方。早くいこーぜ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺達は北門側の悪魔を半分以上全滅させ(主にベルが)、次は西門側に向かっていた。
「そういえば俺達の方は北側だったんだな。知らなかった」
「にいちゃんはまだ2日目だからな。分かんなくても無理ないぞ。エルフィムは円形の形で面積は半径16キロで約800k㎡。それを中心2キロが第七番街、アリスティア伯爵の私有地残りは四等分で東西南北に分けただけだな」
ほー。ここの領主のアリスティア伯爵か。
「アリスティア伯爵は強いのか?」
まあ最低限俺よりは強いと思うが。
「まあまあだな。普通の魔法師よりは強いが序列じゃ100番台だった気がするぜ。その辺の強さは使える魔法のランクで決まっかな。たしか、アリスティア伯爵は第四位魔法だっけか」
アディルがうろ覚えなのだから名のある方では無いのだろう。
しかしそれでも100番台か。人口が何人いるか分からないから国内200位以内は強い部類だと思うが。・・・魔法のランクか。
「アディルはどこまで使えるんだ?」
「俺か? 俺も第四位魔法が限界だなぁ。そもそも錬金術系統の魔法が第四位魔法までしかないしな。ベルはどうだ?」
「俺は第三位魔法だな。・・・・・・弱っとか思うなよ。俺は魔法の適正があまりなかったからな」
いや、あの動きをみて弱いなんて思わないだろ。
「そういえばエリスはどれくらい使えるんだろう。ベルは知ってる?」
「エリスは当たり前の様に人類最高峰の第五位魔法だぞ。あれは正直次元が違う。俺が知ってる中で魔法の撃ち合いで五分張れるのは、残りの三魔女、過去の人物だがリンドウ、それとガルデン都市国家連合の序列二位くらいなものだな」
ベルが次元が違うと言うレベルなのだから相当なのだろう。・・・・・・ん?
「ベルって序列五位だよな? なんでエリスの方が強いみたいに言ってるんだ?」
ベルはため息をついた。
「それは2年前の序列がまだ残ってるだけだぜ。この2年間でエリスは急速に力を付けてきた。それはエリスの父ちゃんが死んじまったせいだ」
それはマリアさん聞いたな。エリスは父の復讐心で強くなったって。
「悪魔アムネルへの復讐心。だがそれだけじゃねえよ、にいちゃん」
え?
「エリスの父ちゃんには契約していた1匹の魔獣がいた。その名前は・・・・・・
アディルの顔は急に青ざめた。まるでこの世の終わりを迎えたような顔だ。
「アディ兄は知ってるな。今から1200年前、このバルネスト大陸全土をたった1匹でぶっ壊した破滅を呼ぶ龍王だ。後半で残った国家は全ての国家と連合を作り上げ、
いやいやまた次元が違うのが出てきたな。
「そんな正真正銘のバケモノはエリスの父ちゃんが死じまった事によって今度はエリスと契約した。こうしてエリスは
「お!西門側だぜ」
今まで俺達は最短ルートの細い道を使ってきたが急に大通りに出て視界が開けた。
「 西門側には時計塔がある。そっちの方向に向かおう」
「了解」
「オーケー!」
さて、俺は俺の出来ることを探してやって行くか。
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