第3話 エルフィムの街にて
俺達は家を出た後馬車を借り、ガタガタの田舎道を二時間半ほど行くと高い壁に包まれた城が見えてきた。
壁は高さは100mくらいだろうか。それよりも大きい城は200mほど。
「あ、見えましたよ! あれが村から一番近い街、エルフィムです。 ここはアリスティア伯爵の領地なので商業関係が発達しています」
エリスは鼻歌混じりで説明してくれる。
貴族か。この世界は階級社会なのかな?
「・・・にしても高い壁だな。あそこまで高くする必要あるか?」
「ええ。空を飛ぶ魔物もいますし、侵入を防ぐためですね」
魔物ねぇ・・・。狂暴な動物を魔物と呼ぶわけではないと思うし、そういう区分の生き物がいるという訳か、やっぱり異世界だな。
逆に言うとこの世界には戦闘機や爆撃機の様なものは無いのかもしれない。あったとしたらここまで大きな壁は造らない。造った所で無駄に終わるだけなのだから。
「あの・・・」
「ん?」
エリスが気まずそうに訪ねてきた。
「やっぱり名前決めません? このまま名無しさんというのもあれなので・・・」
確かにそうだな。
「わかった。じゃあ何がいいかな・・・」
二人であれこれ考えて約三分。
「あ! 『レクト』なんてどうですか?」
ふむ。悪くはない。
「いいけど、どうしてその名前に?」
「この近くにはレクトという花が咲いているんです。その花言葉は『未知』。私にとっての未知は貴方ですし、貴方にとってはこの世界は未知の世界。という感じなのですが・・・」
めちゃめちゃええやん
「ありがとう。これからはレクトって名乗るよ」
「はい! よろしくお願いします、レクトさん!」
そうして、俺達は笑顔で握手を交わした。
~~~~~~~~~~~~~~~
城壁の麓には鎧を着た騎士風の人達がいて、簡単な荷物検査が行われたが、何事もなく(拳銃は若干奇妙な目で見ていたが)街に入ることができた。
街は煉瓦の家々が並び、相当な数の人がいる。中央には純白の城が堂々と聳え立っている。
俺達は専用の駐馬車場に馬を置き、服や食料を買った。そして今は商店街を散策している。
「にしてもこのメンチカツ美味しいな。何の肉だ? ・・・あむ」
「フェルト・ファンゴですよ。毛がとても上質なので、基本は毛を採取して治癒魔法をかけるのですが・・・メンチカツにするのはめずらしいですね。・・・はむぅ」
フェルト・ファンゴ? 見た目が分からないけど名前はゴツい感じたな。 ・・・あむ
「そう言えば異世界出身なのにどうして言語通じるんですか?」
・・・確かに。先程服屋や八百屋、魚屋等の色々な所でに行ったのだが文字も何故か頭に浮かんでくるし、言葉も何故か通じている。
「まあ俺もよく分からないけど別に良いんじゃないか? 実際、おかげで助かっているし」
「それもそうですね。 ・・・あ! あそこのクレープ屋さん行っていいですか? あそこのクレープ美味しいので!」
「ああ。構わないよ。むしろ俺も行きたい」
俺達はクレープを買い、食べながら次の目的地を目指す。
「なぁ。次はどこに行くんだ?」
エリスはニコニコしている。というより、エリスは基本たのしそうだ。
「 はむぅ・・・。んっ・・・。次は冒険者組合です。レクトさんの情報や、有事の際に戦えるようにしておかないといけませんからね」
「ん? 有事の際?」
「ええ。レクトさんの世界ではどのようや法律か分かりませんが、この国ではちゃんと冒険者組合に名前をのせている人でなければ戦ってはいけないことになっています。レクトさんが戦えるかは分かりませんが、もしものためです」
エリスは『ドヤァ!』という表情をしている。
「ついでに魔法適正も調べてもらいましょう。レクトさんもどんな魔法が使えるか楽しみではないですか?」
もし使えるなら戦闘向けの方がいいかもな。何かあったら困るからな。
にしても、魔法ねぇ・・・。本当にファンタジーな異世界か・・・。
今日何度目か分からない同じような思いが胸の中を駆け巡る。
もし魔法が使えないとしても、俺はコイツでなんとかしてやるさ。
そんな思いで、俺は腰にあるベレッタを優しく撫でた。多分なんとかなるだろうとも思いながら。
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