第4話 タイムリープの果てに
「念のため、購入はマークシートで行う。レースの結果が変化するとは思えんのだが、何かあったときのための用心だ。裏側に参加者全員の署名をしてもらう。これで事前に購入する買い目を全員が共有するわけだ。このカードは必ず持って帰ってほしい」
決行当日午後八時。三谷の自宅前に集まったのは例のメンバー6名だった。それぞれがマークカードの裏面にサインをする。
「田中先生。資金は持ってるな。無くすなよ」
「分かってます」
「そこの直線道路を時速100キロ以上で走ってくれ。自動で2017年12月24日の中山競馬場付近に移動する設定になっている」
「はい」
「そして予定通り10Rの馬券を購入。その的中した資金で11R有馬記念の馬券を購入するのだ」
「はい。間違いなく」
「購入した馬券は換金せずそのまま持って帰る。帰りは適当な場所で時速100キロを出し、タンクの上の赤いボタンを押せ。そうすれば現在、この場所へと帰ってくるよう設定がしてある」
「了解しました」
「では頼んだぞ」
「はい」
義一郎はマッハに跨り、キック一発でエンジンを始動させる。星子も慣れてきたのか、すぐにリアシートに乗り義一郎に密着した。
義一郎は軽く頷き、マッハをスタートさせた。
向こう側でUターンをして直線道路を走ってくるマッハ。その姿を見つめるのは三谷朱人、綾川知子、有原波里、そしてトッシー・トリニティの四名だった。
マッハは光に包まれその姿は消えてしまった。
「成功しました。過去へ、2017年12月24日へと跳躍しています。あ、戻ってきますよ。来た」
光に包まれたマッハが突如現れた。マッハは減速し停止する。
「田中先生。どうだ。行けたか」
「ええ、予定通りですよ。ちゃんと馬券購入できました」
「おお、さっそく確認してみようではないか」
一同は三谷の自宅に入り、テーブルを囲む。
「先ずは中山10Rです、予定通り三連単、③-⑦-⑪、③-⑦-⑤、③-⑪-⑦、③-⑪-⑤、③-⑤-⑦、③-⑤-⑪、の六点に2500円づつ購入しました。見事に的中しましたよ。払い戻しは③-⑦-⑪で421100円でした」
「やはり若干オッズが下がったな。払い戻しは10527500円で間違いないな」
「ええ。間違いありません。その資金で購入した馬券がこちらです。マークカードはこちら」
義一郎が馬券とマークカードをテーブルの上に並べる。余った資金として1527500円もテーブルに置く。馬券は②-③-⑩、②-③-⑭、②-⑩-③、②-⑩-⑭、②-⑭-③、②-⑭-⑩の6点。一枚30万円の馬券が各5枚あった。
「うむ。間違いないな。この馬券を持って明日換金しに行こう。ふふふ。これで借金ともおさらばだ」
「借金?」
「ああ。マッハの改造費にかなり資金を投入したからな。修理代も馬鹿にならない。後はここの設備関係でちょっとな。ほんの2000万位だ。残る金額の方が多い。ふははははは」
「ミミ先生。それで必死だったんだ。で、これが本当に当たっているのか
知子がノートPCを操作してJRAのホームページを表示させた。
「何処見りゃいいのかな。あ、ここだ。払戻金だよな。2017年12月24日(日曜)5回中山8日11R 第62回 有馬記念っと」
その場にいる全員が画面を見入る。
単勝 ② 190円
複勝 ② 120円、⑭ 140円、⑩ 160円
枠連 1⃣-7⃣ 380円
馬連 ②-⑭ 510円
ワイド ②-⑭ 230円、②-⑩ 250円、⑩-⑭ 410円
馬単 ②-⑭ 770円
三連複 ②-⑩-⑭ 670円
三連単 ②-⑭-⑩ 2220円
「これは、結果が違っていますね。4着だった⑭番スワーブリチャードが2着に入ってます。1着と3着はキタサンブラックとシュバルグランで合ってます。これは1番人気2番人気3番人気の大本命ですね」
「まさか、結果が違っているだと! 私の借金はどうなってしまうのだ!」
三谷は顔面蒼白となり、唯々狼狽していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます