第22話 中級悪魔退治


私と大神官が国際連邦本部の会議室で辺境伯に聖魔法をかけるのと同時に、サオリさんが辺境伯の妻に化けている中級悪魔と下級悪魔に憑依された護衛に対して結界魔法を発動して彼らを束縛した。


4体の密偵オートマタに護衛されたサオリさんが今回の作戦の要になる。


この間の訓練で実力とレベルを上げてきている彼女なら聖魔法で中級悪魔を滅することもできる。


いや、おそらく上級悪魔でも倒せるであろう。


しかし今回の中級悪魔を倒すのはパルハ辺境伯でなくてはいけない。


彼にかかる悪魔の支配を解き、彼の手で妻や家族に害を与えた悪魔を倒させなければいけない。


普通にお考えれば殺さずに中級悪魔をを拘束するのは大変だ。


でもサオリさんならできる。


何故ならば彼女は聖女なのだから。



聖魔法で悪魔の支配から解放されたパルハ辺境伯が崩れ落ちそうになったので念動力で支える。


そして、尋ねた。



「貴方は今までのことが分かりますか?」


「はい、悪魔に襲われて支配されて。とんでもない発言をさせられて・・・・。悪魔に襲われたときに私を庇おうとした妻が!!!ああ・・・」


「あなたの奥さんは悪魔の持つ収納に納められています。仮死状態です。そして奥さんを捕らえることによって悪魔は貴方の奥さんに化けています」


「使徒様。妻の敵を討たせてください。力を与えてください」


「わかりました。悪魔は貴方が討たなければいけません。貴方の奥さんに化けている中級悪魔の側には下級悪魔がに憑依された護衛がいます。彼らから下級悪魔を分離して滅するのはお任せください」


「お願いします」


「パルハ辺境伯。貴方には腕輪と剣をお貸しします。腕輪は悪魔に憑依されたり攻撃されるのを防いでくれます。剣は魔力を込めて切り裂くことによって中級悪魔を滅する事ができる物です」



腕輪は悪魔の攻撃に対して自動的に障壁を発動するようになっている。


そして剣。


そう、その剣を人は聖剣と呼ぶ。


扱う者によっては上級悪魔でさえ滅することができる。


パルハ辺境伯に実力なら中級悪魔を滅することができるだろう。


この腕輪と剣を作ったのは私だけどね。


ちゃちゃと聖魔法を付与しておいたよ。




「それでは悪魔退治に向かいましょう」



     *     *     *



各国代表団や国際連邦総長や大神官様も同行することにしている。


彼らにほとんど見たことがない悪魔というものを知ってもらい、それを倒す大変さを実感してもらうことが必要だ。


彼らの安全はオートマタと大神官様が確保してくれる。


勇者たちは連れて行かない。


中級悪魔は自分の獲物だと言ってパルハ辺境伯の邪魔をしてもらっては困る。


本部内でおとなしくしてもらう事にした。


オートマタに監視をお願いした。



パルハ辺境伯の妻に化けた中級悪魔がいる宿の前は広場になっている。


すでに神殿と国際連邦本部の衛士が地域一帯を封鎖して私が渡した魔道具を使った結界を施している。


宿の客と従業員はサオリさんが悪魔たちを結界で拘束した直後に避難させた。


周辺の住民らも同様だ。



現地に到着した直後に広場に結界を張り、パルハ辺境伯による悪魔討伐の舞台を作った。



「タカシさんご苦労様」



サオリさんが近づいて来た。



「大丈夫ですか?」


「悪魔たちが結界内で暴れておりまして、大変ですよ」


「では結界を引き継ぎます」



サオリさんが悪魔たちを閉じ込めていた結界の支配権を私が握る。


そしてのその結界ごと広場の結界内に悪魔を移動させた。


各国代表団の人たちには広場の結界外の広場が見渡せる場所にいてもらっている。


この場所にも4体のオートマタが対悪魔防御結界を張り、大神官が聖魔法の障壁を広場側に設置して安全を確保した。


私とパルハ辺境伯とサオリさんとオートマタ4体は広場に張った結界内に入った。



「初めに聖魔法で悪魔を弱体します。そうすれば中級悪魔は元の姿に戻るでしょう。そうしたら彼らを拘束している結界を解きます。左の護衛に憑依している下級悪魔はサオリさんが分離してから滅してください」


「わかりました」


「右側の護衛に憑依している下級悪魔は私が対処します。中級悪魔は辺境伯、貴方が倒してください。申しわけないが奥様を助けることはできないと思ってください」


「覚悟をしているよ。よろしく頼む」


「はい、オートマタは支援を行ってくれます」


「わかった」


<サオリさん、下級悪魔を倒したら回復魔法と聖魔法が使えるように準備をしてください。辺境伯の奥さんが収納から出てきたら魔法をかけてください。うまくいくかわからないがやれることはやりますよ。オートマタは悪魔から解放された護衛を保護するように>



サオリさんとオートマタに念話を送った。



「では行きますよ」



結界内に聖魔法をかけ、悪魔を拘束している結界を解いた。


右側の護衛を空間内に拘束して下級悪魔を分離して分析、新しく開発した対悪魔浄化で滅した。


その間約2秒。


倒れそうになった護衛はオートマタが保護、私が回復魔法を施した。



サオリさんは左側の護衛を結界で拘束し、その中に聖魔法を発動する。


耐え切れずにでてきた悪魔に私が教えた対悪魔浄化をかけて滅している。


オートマタが保護した護衛に回復魔法を施している。



中級悪魔に対してパルハ辺境伯が切りかかるも躱されている。


剣が聖剣であることに気が付いた中級悪魔が高速移動で避けている。


それではパルハ辺境伯を少し支援することにするか。


パルハ辺境伯に身体強化を施す。


そして中級悪魔には障壁の出現させて動きを阻害する。



「ぎゃあああああー」



動きが鈍くなった中級悪魔の左肩を聖剣が掠めた。


叫びをあげ、さらに動きが悪くなった中級悪魔にパルハ辺境伯が切りかかる。


聖剣の一閃一閃が悪魔の力を削っていく。


苦し紛れに放たれた中級悪魔の反撃も腕輪の防御によって無効化されている。


私も聖魔法でパルハ辺境伯を支援していく。


そしてパルハ辺境伯の持つ聖剣によって中級悪魔の体が切り裂かれ、霧散していった。


その瞬間、悪魔の持つ収納からパルハ辺境伯の妻が放り出された。


その体はオートマタによって受け止められ、サオリさんが回復魔法をかける。


しかし回復しない。


予想はしていた。


だが、方法はある。


事前に行ってある打ち合わせ通り、生命神であるクリス様許可を求めた。



「パルハ辺境伯の妻ルミネさんの蘇生を許可してください」


「了承します、手順に従い実行しなさい」



今回は仮死状態で収納されており、収納から放り出されて死が確定した直後なので私以外は死を認識していないという条件によって蘇生が許可された。


そして、



「辺境伯、奥様は悪魔の収納から放り出された瞬間に仮死状態から死の状態になりました。彼女の死を認識しているのは私だけですので貴方が私の指示に従えば蘇生を施せます。どうしますか」


「お願いします。私はどうなっても構いません」


「わかりました。まず、蘇生の事実は口外しないこと。口外すると貴方も奥様も報いを受けます。そしてあなたの生命力をは3割頂きます。生命力の上限は今までの7割になってしまいます。よろしいですね」


「はい、お願いします」


「でははじめます」



密かに発動した蘇生の聖魔法でパルハ辺境伯の生命力の上限をルミネ夫人に移す。


そして回復魔法をかけ生命力満タンにする。


パルハ辺境伯の生命力の上限が高いからできる芸当だ。


ルミネさんが目を開いた。


成功した、大丈夫そうだ。


パルハ辺境伯と抱き合って喜んでいる。


一方、パルハ辺境伯の地元でも中級悪魔の支配から解放され、囚われていた家族も解放されたことがオートマタによって編成された別動隊から報告があった。



「クリス様、蘇生が完了しました」


「ご苦労様。今回はうまく条件があったけどいつも使えるものではないですからね。まあ、わかっているでしょうが」


「はい、ありがとうございました」



ルミネさんについては国際連邦本部で経過を観察する。


医療用オートマタに付き添ってもらった。


悪魔討伐の事後処理があるので会議の続きは明日になった。


上級に進化する恐れのあった中級悪魔を討伐できてよかった。


また、これで鶯シティーの承認と国際連邦加盟は順調に進むだろう。


腕輪には事前に付けて封印しておいた機能がある。


鶯シティーの住民の持っている腕輪と同じような機能だ。


腕輪は封印を解き、聖剣と共に個人認証の登録を行って、改めてパルハ辺境伯に中級悪魔討伐の褒美として与えた。


腕輪の中に収納できる聖剣と神の使徒タカシの加護とともに・・・・。



そう私は加護を与えるようになっていた。


神様の祝福の2倍の効果がある。


元々実力があるところに加えて力を得て中級悪魔を倒したパルハ辺境伯は神の使徒の加護を得たことにより勇者になった。


この世界で実力によって生まれた勇者だ。


34歳と少し齢はいっているが地元で育った勇者だ。


これで私の協力者がまた一人増えた。



ルミネ夫人は自分の身を盾にパルハ辺境伯を守った。


元々、人を癒す力をもち、人格的に良い資質を持つ彼女にも夫同様に神の使徒の加護を与え腕輪を与えた。


そして彼女は聖女となった。


辺境伯夫人聖女ルミネの活躍も期待しよう。


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