第2話 異世界パスロと集団転移事件
「パスロの管理システムの管理を担当しておりますアリスと申します。タカシ様、よろしくお願いします」
「タカシです。よろしくお願いします。ところで管理システムというのは何でしょうか」
「はい。そのことも説明させていただきますが、その前に大変に不味い事が判明しました」
「不味い事ですか」
「はい、地球の時間で約1時間前に約500名の人が地球から召喚されたようです。今は召喚が禁止されていたはずなのに」
「どこの誰が召喚されたかわかっているのか?」
地球神様が訊ねた。
「ほとんどが若い女性のようです。日本人のようですね」
「若い女性の集団?女子高か女子大または女子中学か」
「時間から考えてその大量召喚によってできた通路を使ってタカシ様を傷つけた上級悪魔がパスロに入ったものと考えられます」
「確か、私が悪魔と戦った廃墟の近くに鶯学園の宿泊研修施設があったと思いますが」
「タカシ君、よく知っているね」
「除霊を行う時には周辺のことを調べますので」
「うむ、確認が取れたようじゃ。女子高の生徒476名と教師男性8名女性22名と施設管理関係者男性2名女性6名が転移している」
「それでは地球は大騒ぎになりますね」
「今、道を封鎖させた。周辺の気象操作をしたので3日は孤立状態になるだろう。頼む、悪魔を倒すとともにその間にこの問題も解決してくれ」
「わかりました。パスロに着いたらすぐに彼女らを送還しましょう」
「そのことなのだが悪魔を倒さなければ送還を行う時に悪魔が地球に戻ってきてしまうというリスクが生じてしまう。タカシ君は地球に入れないから悪魔を討伐できなくなってしまう」
「では彼女らをどうしたらいいのですか」
「彼女たちだけの町を造ってそこで生活してもらうしかなかろう」
「年単位でパスロに滞在することになりますよね。そうすると地球での数日で年単位の成長することになりませんか」
「それは大丈夫だよ。召喚された者は地球の時間で歳をとる」
「それなら大丈夫ですね。パスロにどのように町を造るかが問題ですね」
「それはこちらに任せてくれるかな」
「お願いします」
その後アリス様から異世界パスロのことについて教えてもらった。
大陸は一つ。
そこには6つの王国と2つの帝国があるらしい。
他に2つの島国がある。
全ての国が参加している世界連邦があるらしい。
国連のようなものか?
大陸の中央にはパスロ大森林という地域がありどの国にも属していない。
神の管理区域だ。
町を造る場所はここだな。
人類の種族には人族、獣人、エルフ、ドワーフ、竜人、魔族がいる。
魔族は魔法を得意とする種族で邪神や悪魔の手先という訳ではない。
多くの国では各種族が共存している。
一部の国では差別があるようだが・・・・・・・。
言語は世界共通語。
宗教はこの世界を管理している8柱の女神を信仰するパスロ教。
宗教戦争はない。
各地に神殿がある。
宗教が直接政治にかかわることは禁止されている。
しかし。灰色の部分もあるようだ。
そして神以外のものを信仰する新興宗教ができてきているようだ。
通貨も世界共通で10鉄貨が1銅貨、10銅貨が1銀貨、10銀貨が1大銀貨、10大銀貨が1金貨、100金貨が1白金貨だそうだ。
4人家族が一月生活するのに必要な金貨1枚だということだ。
1日が24時間、ひと月が30日、1年が12ケ月。
奴隷制度は10年前に廃止されている。
全ての国の裁判制度は共通だ。
裁判は2審制。
死刑制度はない。
死刑にするなら働かせて罪を償わせた方がよいという考えだ。
だから終身刑は当然ある。
魔法があり、魔石を持つ魔物がいる。
ダンジョンもある。
そこから得られる素材や魔石は貴重な資源であるようだ。
科学はあまり発達していないようだ。
銃や重火器はないようだ。
ステータスを確認すればその人物や魔物の強さや能力を確認できる。
ゲームのような世界だね。
まさか地球のゲームを参考にしていないよね。
そして本来は神が行うパスロの管理は世界管理システムというものに任せている。
「ではその管理システムの管理者権限は現在は誰も持っていないということです?」
「はい。はじめは大賢者と私が持っていたのですが・・・・」
「今はアリス神様も持っておらず、大賢者が亡くなったあと引き継ぐものもいなかったという訳ですか。アリス神様はそれに気が付いていなかったということですか」
「申し訳ありません」
アリス神様は土下座をしている。
何故か慣れているような感じがするのだが気のせいだろうか???
世界管理システムの管理者権限は100年前に亡くなった大賢者とアリス神様が持っていた。
本来、常日頃から管理システムを制御し、自らパスロの管理にかかわるべきであったアリス神様は地球のゲームに嵌って管理を大賢者一人に押し付けた。
アリス神様の怠慢に憤った大賢者は管理者権限からアリス神様を外してしまった。
大賢者は自分の死期を悟った時、アリス神様に連絡を入れたのだがアリス神様は気が付かなかったという。
現在は最高職の超越者と大賢者だけが自動的に管理システムの管理者権限を持つことができるのだが該当はなしだ。
(しかし、危ないシステムだな。神様全員に管理者権限を持たせて外せないようにしないといけないよね。私がレベルを上げて大賢者か超越者になるしかないか。しっかし、アリス神様は色々やらかしているよね。大丈夫か?)
世界管理システムの知識やサポートが受けれれるアクセス権限はレベル51以上で得られる特別職のみが有する。
管理者権限はないが便利だということだ。
特別職はレベル100になれば次はレベル101の大賢者か超越者になれる。
まあ、いくつかの条件があるようだけど・・・・。
特別職中でもレベルが高いほどより多くのシステムからの恩恵が受けることができる。
転移者のレベルや能力は転移前に持っていた能力が反映されるようだ。
「あと問題としては簡単に地球人を召喚するということですよね」
「それに関しては申し訳ありません。最近は勇者召喚禁止の神託を降ろしてあったのですが・・・・」
「何故、勇者召喚という事を許可しておいたのですか?」
「いや・・・・・」
「アリス神様が楽をしたかったという訳でしょうか?」
「ひっ」
不味い、アリス神様を威圧してしまった。
あ、漏らしていないよね?
大丈夫だよね。
「正直にお願いしますね」
「すみません。楽もしたかったです。管理システムの管理者権限を失ってしまったので勇者や賢者を召喚して超越者や大賢者を育てれば管理者権限を取りも出せると思って・・」
「二度とこのような事がないようにお願いします。地球神様、完全に召喚ができないようにすることはできますか」
「ああ、悪魔が逃げないように今パスロを隔離してある。だから人類の力では召喚はできない」
「わかりました。そうだ、パスロにも元々上級悪魔がいるのですよね」
現在、パスロにいる上級悪魔はパスロで誕生した悪魔パルカ、タカシの肉体にカウンターで呪いをかけ地球から逃走した悪魔クルロ、地球からクルロとともに逃走した悪魔クハルがいる。
その他にも中級や下級の悪魔はいるようだがパスロの住民でも対処できるだろうということだ。
「今回召喚されてしまった約500名の人たちはどのようになっていますか」
「召喚したのはアクレア帝国。悪魔と戦う強力な兵が欲しくて召喚をしたようだ。しかしほとんどが女性であったため召喚した者たちは混乱している。召喚に気が付いた神殿の上級神官が駆けつけて保護と対処にあたっている」
「神殿ですか?」
「先程も話には出ていたが、この間の度重なる召喚に対処するために神殿に召喚の禁止の神託を降ろした。もっとしっかりと召喚を封じておけばよかったのだが」
「ではアクレア帝国は神託に背いたということですよね」
「そうじゃな。今はアクレア帝国があらかじめ用意していた宿舎で召喚された者たちは過ごしている。神官たちが帝国がおかしなことをしないように見張っている」
「では私が神からの遣いということで迎えに行けばいいのですかね」
「お願いするよ。ただ帝国が簡単にその約500名を手放すか心配だな」
「うーん、とにかく準備をしましょう。この場所で10日あると言え、やるべきことも多いからね」
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