紅葉は散らず

ヘルツ博士

紅葉は散らず

 道端が赤と黄色に染まる頃、秋風に散った枯れ葉は美しい風景を生み出していた。紅葉もみじの葉は穏やかな川の流れに身を任せ、透き通る青色に暖かみのある一本道を連ねている。すっかり葉のなくなった木の根元は、その周りを取り囲むように銀杏いちょうの黄色で染め上げられている。

 ある紅葉の木に一枚だけ葉が落ちずに残っている。強い秋風にも負けず生き残った最後の一枚は、その力強さをまざまざと見せつけているように見える。それとは裏腹に葉がほとんど残っていない木にはどこか秋の終わりを告げる空気を感じ取れる。

 川の色が暗い青緑に変わる頃に紅葉の無くなった木は雪化粧が施され、木の根元には小さな紅葉が一枚だけ顔をのぞかせているのだろう。

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紅葉は散らず ヘルツ博士 @Hakase10Hz

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