第15話 決着、そして新たな始まり


 劣等種。それはエルフがこの世界で1番の上位種だと思っているからの発言だ。

「くっ!」

 宝刀に力を入れ、刀身をロイに迫らせる。だが、ロイはそれを力任せに弾き飛ばす。

「地獄の業火 フレイムヘル」

 身長130センチほどの空飛ぶ少女は、小さな手のひらを交戦をしようとするウルヌに向ける。そして、少女はそう告げる。刹那の時間も要さず、手のひらには黄金色の光が現れ、手が見えないほどの眩しい光が覆う。

 キラキラと光るようにして光は飛び出す。瞬間、光がウルヌを襲う。光はウルヌに触れると同時に闇色の焔と化し、骨の髄まで焼き付くかのごとく勢いでウルヌを包んでいく。

「ウルヌ!!」

「お仲間の心配とは、随分余裕なんだね」

 闇色の焔に全身を包まれたウルヌを見て心配しない方が無理だ。コータは悲痛の悲鳴をあげるウルヌの名を呼ぶと、その隙をつくかの如くロイは水平に刀を振るう。どうにかそれを受け取めるコータ。

「関係ないだろ!」

 交錯した刃を振り払い、今度はコータから剣を振るう。右斜め下からの斬り上げ。しかし、ロイはそれを小さく背を仰け反らすことで避ける。

「鬱陶しい、よ!」

 腕を上に上げたことにより、胴体ががら空きになる。そこへ体勢を崩していたロイが強引に半回転し、蹴りを決める。

「がはっ!」

 肺に流れていた空気が圧迫され、行き場をなくした空気が逆流を始め、口から逃れる。

 零れた空気を補うように、数回大きく呼吸をするコータに、ロイは間合いを詰めていく。

「終わりだね」

 にこやかな声色で、そう告げるやロイは刀を振るった。

「させません!」

 声と同時にキンッという、甲高い金属音が耳元で轟く。

 確実に首を狙ったロイの一撃。それを短剣を握るルーストが受け止めていたのだ。

「ルーストさん」

 もしルーストの助けがなかったら、コータの首は間違いなく飛んでいただろう。

 その事に恐怖を覚えながらも、しっかりと礼を告げ、月の宝刀を構え直す。

 ロイとルーストは膠着状態だ。今ならコータでもロイを刺せる。

 剣を後ろへ引き、コータは力いっぱいで剣を突き出した。間髪入れず、ロイは膠着状態を解き、大きく背後へとジャンプする。

「劣等種如きが……」

 端正に整った顔を歪ませながら、ロイは怒りを孕ませた声で言い放つ。


「喰らえっ!」

 どこからともなく取り出した弓を構えたサーニャは、弦を強く引っ張り矢を放つ。矢は目で捉えるにはあまりにも速すぎるスピードで、ミリの手のひらに向かう。それに気がついたミリは手のひらを引っ込め、矢をかわす。同時に闇色の焔は、存在していなかったもののように消え去る。

 焔が消えると同時に、ウルヌはその場に倒れ込んだ。焼かれていた肌は爛れ、見ている方が痛々しい。

「あァァ……」

 呻くような、喘ぐような声を洩らしながら右往左往する姿は、まるでゾンビのようだ。そんなウルヌに、サーニャは透き通るような水色のポーション──上級ポーションをウルヌに投げ掛けた。すると、見る見るうちに爛れた皮膚は元に戻り、通常時のウルヌに戻る。

「小癪な真似を」

 小学生低学年ほどの身長と、麗しい見た目に似合わない言葉を零しながら、ミリは今度は天に手を掲げる。

変化魔法イリュージョン 魅惑チャーム

 瞬間、ミリの身体を仄かに赤色を帯びた光が覆った。だがそれも一瞬。直ぐに光は消え去り、中からはグラマラスな体を持つ美女が現れた。顔立ちはミリだが、子どもらしいプクっとした雰囲気は消え去り、大人の顔つきになっており、身体も魅力的な女性のそれに変化している。

 胸元がざっくりと開いた薄黄色のシルク製のドレスのようなものに身を包んでいるミリ。大きく変化した胸は今にも零れ出しそうだが、ミリはお構いなしに走り出す。

「ロイ!」

「はいよ」

 怒りの視線をコータにぶつけたまま、ロイは眼前に手をやる。するとそこには黄金色に輝く光が現れ、黄金色の刀身を持つ短剣が現れる。

「ほらよ」

 それをミリに投げつける。ミリは軽くジャンプし、空中でそれを受け取るや、背にある羽を動かし、宙を移動する。そして、サーニャの背後に回り込み、受け取ったばかりの短剣を投げつける。

「サーニャ様!」

 それにいち早く気がついたギルドマスターは、駆け出しサーニャの背の前に立つ。

 グサッ。

 鈍い音と共に、鮮血がボトボトと落ち、血を真っ赤に染めていく。

「ミリ。王女さんは狙ってはいけない約束だろ?」

「でもでも! こいつ私に矢を放った!」

「関係ないよ」

 駄々をこねる子に言い聞かせるように、ウルヌはそう言う。それに対してミリはぶぅ、と口先を尖らせるもそれ以上何も言うことはなくなった。


「余所見してるのはお前だろ!」

 ミリを注意するロイに、コータは剣を振るう。それがわかっていたかのように、ロイは最低限の動きで剣を避ける。そして同時に黄金色の刀身を持つ刀がコータの首元を捉える。少し力を入れれば首が吹っ飛ぶ。たった一振り。生と死が隣り合わせの状況に置かれたコータは、唾を飲み事すら出来ず、ただただじっとしていることしか出来ない。


「離しなさい!」

 ルーストは短剣を構え、コータの首筋に当てる刀を当てているロイに叫ぶ。

「そんな態度でいいのかな? こいつの首、落としちゃうよ?」

 どこか楽しんでいるような様子を浮かべながら、ロイはコータの首筋に1ミリ程度刀を触れさせた。チクっとした微妙な痛みを覚え、同時に生暖かい血が首を伝う。

「っ!」

 流れる血に目を見開き、怒りを露わにするルースト。

「投剣術 穿刃ストレート・ブレイド!」

 言葉と同時にルーストは手にしていた短剣をロイに向けて投げつける。ごぉぉ、と空気を切り裂く音がロイへと近づく。だが、ロイは余裕の様子を見せている。だが、短剣がロイの間近に迫った瞬間、ロイは顔色を変え、刀をコータから離す。

「コータ殿!」

 その瞬間を逃すことなく、ルーストは叫ぶ。コータもそれに従いロイの元から逃れる。ロイは飛んできた短剣に刀を当て、短剣を落とした。

「刀身に毒を仕込むなんて……酷いことするね」

 ロイは落とした短剣を遠くへ蹴り飛ばす。首を回りし、指をポキポキと慣らしてから、怒りの宿る視線を浴びせる。

 一瞬の間も置かず、ロイは地面を蹴りコータの血が僅かに付着した刀を振るう。それをギリギリのところで受け止めるコータ。押し込まれた状態で受止めたために、体勢が悪いのはコータだ。

「そこのメイドは動くなよ」

 先に釘を打ってから、ロイは体勢の悪いコータの足を払う。立っていることすら出来なくなり、コータはこけるしかない。背中から落ちていく感覚の中、ロイの刀がロイの左肩を穿った。

 焼けるような激痛に襲われ、コータは思わず絶叫を上げる。

「「コータ!?」」

 ミリの相手をしていたサーニャとウルヌがその声に反応する。

「あんた達の相手は私よ」

 妖艶な声でそう放つや、ミリは全力で走り出す。暴れるような、しかし確実にウルヌを攻撃する動き。

 右拳からの左脚、そこからの回し蹴りに左拳のアッパー。ウルヌは双剣を構えてはいるが、止まないミリの攻撃に仕掛けるタイミングがなく、防戦一方になっている。そうしているうちに、ミリの足元には肩に短剣が刺さったまま倒れいるギルドマスターがいた。

 ミリは両手を地につけ、蹴りを繰り出す。それを双剣で受け止めたウルヌ。だが、その一撃はあまりに重く、ウルヌは数センチ押し込まれる。それを視認したミリは直ぐに足を引っ込める。ウルヌを数センチ押し込んだだけだ。しかしミリにとってはそれで十分だった。その数センチでウルヌの間合いから外れる。それを詰める間に、ミリはギルドマスターに刺さった短剣を抜く。

 一瞬の間でそれを済ませたミリは、短剣を構え直す。これが種族の違いというのものだろうか。人間が数センチ移動する間にエルフは戦闘態勢を整える所までもっていける。圧倒的なステータスの違いが浮き彫りになる。

「どうすればいいんだよ」

 どう足掻いても勝てる要素が見当たらない状況で、ウルヌは思わず弱音を吐露してしまう。

「死ねばいいんだよ?」

 魅惑チャームにより、誰もが目を引くような容姿もスタイルも抜群の美女になったミリは、ロイと同じく後ろへ長く伸びた耳をヒクヒクと動かしながら、ウルヌのつぶやきに反応する。

「そんなわけにいくかよ」

 先ほどの弱音を吹き飛ばすかのように、ウルヌは叫び地を蹴り駆け出す。

双剣術ツインソード 剣舞ブレイドダンス!」

 まるで剣舞のような動きで、ウルヌはミリに襲いかかる。右手と左手にもつ剣は交差するかしないかで、振り回され、それは回数を重ねる毎に速さを増していく。右手にある白銀色の刀身は熱を帯び始め、ほんのりと赤く染っている。

「鬱陶しいわね!」

 加速した剣技に、ミリはその一言を放ち双剣をそれぞれの手の親指と人差し指で受け止めた。

「なっ!?」

 人の技であることに変わりはない。だが、それでもスキルを発動しての攻撃だ。しかしエルフにとっては、それすらも遊戯。受け止められた双剣を、どうにか動かそうとするもピクリとも動かない。

「劣等種がどう足掻いても勝てるわけない。だから私たちが上位種なの」

 不敵に微笑み、そう告げ、ミリは背の羽を展開し動かし出す。

「嘘だろ……」

 ミリが宙に浮く。それに釣られるように、剣を取られていたウルヌの足も浮く。普通に生きている人間ならば生涯で宙に浮くなどという経験はしないだろう。それを体験したウルヌは、驚きのあまり掠れた声をこぼした。


 その時だった。

「そこまでだ!」

 全身を鉄の鎧で身を包み、武装した衛兵たちが現れた。

「劣等種が幾ら集まろうと一緒だよ」

 ぐんぐんと高度を上げていくミリは、15メートルほど上昇した所で停滞する。そしてその場で双剣を掴んだまま、グルグルと回転を始める。遠心力を伴い、回転するウルヌ。その速さに目を回していると、頭上から声がかけられる。

「死んじゃえっ」

 同時に双剣を抑えつけていたミリの手が離される。そうなれば世界の重力に逆らうことは出来ない。ウルヌは放り投げられたことによる加速を伴いながら、地上へと向かう。そしてその先には、現れたばかりの衛兵たちがいる。

「たっ、退避!」

 リーダーと思しき人物が、手を翻しながら叫ぶ。だが、その判断は遅かった。声をあげる頃には、既にウルヌは衛兵たちの真ん前。刹那の時間も要さず、隊列の中に飛び込む形となり、衛兵が組んでいた隊列は崩れ去る。


「痛いのか?」

 左肩を穿った刀は、捻るようにしながらコータから引き抜かれる。その際、大量の鮮血が宙を舞い、地を毒々しく染め上げる。

 ロイは端正な顔に似合わない、禍々しい笑顔を浮かべながらコータの傷口を、蹴りつける。

「あァァ」

 焼け切るような痛みがコータを蝕む。


 【称号『異世界の戦士』の効果を発動します】


 コータの視界に現れた文字。それと同時に、左肩から発されていた痛みが消え去る。

「いける……か?」

 血が止まったわけではない。だが、痛みは消えた。コータはしっかりと月の宝刀を構える。ロイの左脚。コータはそこ目がけて剣を振るった。

「何っ!?」

 痛みで動けない、そう踏んでいたのだろう。コータの一撃に、咄嗟の動きを見せることが出来ず、ロイの左脚に剣先がかする。

 切り傷のような傷がつき、たらーっと血が流れる。

「小癪な真似をッ!」

 怒りを露わにし、ロイは神速に似た速度で黄金色の光を放つ剣を水平方向に振る。だが、『異世界の戦士』の効果を発動したコータには、その動きが見えていた。少し体を屈めることでそれを避け、その姿勢のまま、居合斬りの如く剣を抜く。

「なッ!?」

 決して重くはない一撃だ。だが、エルフにとって劣等種と見下している人間に斬撃を喰らわされたのだ。それだげでも十分に意味がある。ロイは怒りを抑えられない様子で、咆哮を上げる。そしてその怒りに任せ、剣を振るう。コータは一度大きく後退し、ロイの間合いから離れる。


「なんだよッ!」

 そんな時だ。ロイは急に叫んだ。

 その事に違和感を覚えながらも、油断することなくコータはロイを見据える。

「だからなんで!」

 剣は構えたまま、だがこれまでとは違う怒りを見せるロイ。

「……分かった」

 そして次の瞬間、ロイは静かにポツリと零す。瞳には絶望にも近い色が浮かび上がるのがわかる。

「ミリちゃん!」

 宙に浮かび、隊列を崩した人間を悦に浸った様子で見下ろしているミリにロイは叫んだ。

「何?」

 大きな声で自分の名を呼ばれたのが気に食わなかったのか、ミリはわかりやすく嫌な態度を取る。

「撤退だ」

「……」

 ロイの言葉にミリは目を丸くする。

「どうして!」

「あの人からの命令だ」

「嘘!」

「嘘じゃない!」

 強く言うロイに、ミリはウルヌたちから視線を逸らし、ロイの元にに飛んで行く。その光景を見たウルヌは立ち上がり、隊列の中から前へ出なから言葉をこぼす。

「逃げて……くれるのか?」

「油断しないで」

 その言葉にサーニャは弓を構えたまま告げた。


 ロイの元へ辿り着いたミリは、ロイの胸ぐらを掴み睨みつける。

「劣等種相手に逃げるなんて嘘でしょ!?」

「ボクが嘘でこんなこと言う人だと思う?」

「それは……」

 ミリはロイから視線を逸らす。その様子を見守るコータ。ここで攻撃すれば恐らくダメージを与えることは可能かもしれない。だが、そのせいで撤退しなくなったら元も子もない。撤退する、コータは剣自体は構えたまま、その言葉に淡い期待を抱く。

「行くよ。ボクもダメージを負わされちゃったし」

「そんな……ロイが?」

「まだまだ未熟みたい」

 そう呟き、ロイはミリの頭を撫でる。ミリは胸ぐらを掴んでいた手を離しロイの横へ移動する。

「この借りは大きいからね。コータと言ったかな? ボクは君のことを忘れないよ」

 そう言うやロイは、黄金色の刀を力いっぱい振った。瞬間、黄金色の斬撃がコータに向かって飛び出した。

「撤退しないのかよッ!」

 左足を一歩後ろに下げ、コータは月の宝刀を立てに構える。そしてそのまま、黄金色の斬撃が剣の間合いに入った瞬間、コータは剣を振り下ろした。

 甲高い金属音とともに、コータの剣と斬撃が衝突する。重たい衝撃がコータの手にのしかかる。

「うぅ……」

 あまりの重たさに、コータはジリジリと押されていく。あと少し、もう少し押されれば剣が折れてしまう。そう思ったの同時だった。


 【剣術レベルアップ Lv1→Lv2

 斬鉄撃Lv1獲得】



 突如として視界に現れた文字。ジリジリと押されていくこの状況で、コータは藁にもすがる思いで叫んだ。

「斬鉄撃ッ!!」

 月の宝刀の刀身が閃光を放ち、斬撃に押されていた状況から一転、押し返し始めた。

「コータッ!」

 放たれるウルヌの声。だが、反応は出来ない。コータに反応する余裕などない。

 鉄の如く強度になった刀身が、黄金色の斬撃の形を歪めていく。

「うぉぉぉぉ!」

 ありったけの咆哮を上げる。同時に、黄金色の斬撃は跡形もなく弾け飛び、振り切った力の余り、月の宝刀は地に突き刺さる。

「はぁ……はぁ……」

 眼前にロイとミリの姿はない。どうやらコータが黄金色の斬撃と対峙している間に撤退したようだ。

 エルフにとってはただの斬撃。だが、コータの全力を以てようやく相対することができた。

 僅かに鳴るファンファーレ。コータのレベルが3に上がったらしい。だが、そんなものは微々たる変化。まだまだ強くならなければ、今回の事件を解決することなどできない。


「一先ずは助かった、と言うべきだろう」

 弓を下ろしたサーニャは地に広がる鮮血に顔を歪めながらポツリとこぼす。

「そうですね。ただ事件は完全に闇の中です」

 無造作に転がるイサベルの頭を視界の隅に収めたルーストが静かに呟く。

「オレは関わりたくないってのが本音だ」

「ここまで関わってしまった以上、貴方も抹殺リストに上がるでしょうね」

 ウルヌの発言に、ルーストは少し意地悪な笑みを浮かべた。

「嘘だろ」

「間違いないだろう。俺がエルフでもそうする」

 コータの言葉に、更に落胆した様子を見せるウルヌ。そこへ詰所に勤務している衛兵たちが隊列を崩さずに近寄ってくる。

「一体何があったのですか?」

 歴戦の勇士とでも言えそうな、大きな傷が顔の至る所に見受けられる、屈強な男性は亜人種の奴隷、第2王女サーニャ、ギルドマスター、それから首を切り落とされ殺された領主イサベルを順に見ながら訊く。

「それは言えん」

 サーニャは一蹴する。そして、加える。

「このことについては箝口令を敷かせてもらう。もし破るものがいたならば、詰所の人間を皆極刑にする」

 鋭い視線と口調で、武装した衛兵たちに告げた。一瞬、衛兵たちの間に動揺が見られた。

「分かりました。我々は何も見ていない。何も知らないです」

 だが、その男の言葉に衛兵たちは静まり返った。

「助かる」

「では、撤退」

 サーニャの言葉に僅かに口角を緩め、男性は叫ぶ。それと同時に衛兵たちは詰所へと戻っていく。


「まだまだ分からないことだらけですが、これは一度正式に王に伝える必要がありそうですね」

 ルーストの提言に、サーニャは静かに頷きコータを見た。

「コータ、王都へと来てもらう」

 有無を言わせない圧のある言葉に、コータが返事が出来ずにいる。

「悪いが、拒否権はない」

 するとサーニャはそう加え、視線の先をギルドマスターへと移す。

「冒険者コータを王都へと連れていく。問題ないな?」

「はい、ございません」

 恭しく頭を下げるギルドマスターに、ウルヌは何か言いたそうな表情を浮かべる。

「それからこの亜人種奴隷についても王都へと連れていく」

「分かりました」

「行くぞ」

 ギルドマスターの言葉を聞き届けたサーニャは、コータと亜人種奴隷に目をやり、そう叫んだ。



 画してソソケットで起きた事件については、民間人が何も知ることなく幕を閉じた。ただ死んでしまったイサベルは病死、という扱いとなり、次の選挙までの間、ギルドマスターであるオネスタッタが代理を務めることになった。

 何故、どこで、イサベルがエルフと繋がり、亜人種の奴隷を手に入れたなのか、など分からないことだらけで終焉を迎えた事件。

 真相を握っているイサベルは消され、エルフは姿を消した。

 そんな状況の中、コータは一部始終を王に伝えるためにサーニャたちと共に王都へと向かうのだった。

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