お父さんの独白


 

お父さん:「はぁ、雲一つない青空だ。5月といえばゴールデンウイーク・・・それが明ければ子供たちはいそいそと準備をし始める

そう・・・母の日である。5月の第2日曜といえば、母の日。

我が家でもサプライズだといって母親に内緒で欲しいものリサーチをし始める。私も子供たちと一緒にお母さんの日頃をねぎらうため相談をするが、私が候補にこれはどうかといっても子供たちからはダサいだの、それは去年と一緒だと文句を言われ、結局は便乗するという形でプレゼントが決まる。確か、記憶が定かであればこれまで上げたものは、お母さんのすきなマスコット、お菓子のお取り寄せ、アクセサリー、日用品から記念品と種類は豊富である。

去年は行きたがっていたテーマパークのチケットだった。もちろん、エスコートは私だ。

一日中幸せそうな笑顔のお母さんを見るのは、私にとっても嬉しいものである。

普段の晩酌にプラス一品追加されるほどご機嫌になるのだ、私にとっても非常にありがたい日である。

そして先週、例のごとくサプライズだと母の日のイベントが催された。

年たつごとに子供達も大きくなり、プレゼントもどんどん奮発されていく。友達といってきてと、一泊温泉の旅ときたものだ。

当たり前だが、私のお小遣いから出ていく出費も割増しになるのである。

さて、ここで私は思うのである。

昨日浮足立って温泉旅行に旅立ったお母さん、翌日の今日、なんだねこの日曜日は。

子供たちはそれぞれゲームをしたりスマホをいじったり、そして私は一人縁側で新聞片手にぼーっと空を見ている。

いや、お母さんが旅行に行くことに不満などありはしない、逆に普段よりめかして若々しく感じるお母さんを見て、自分の事のようにうれしい、そう、自分の事のように。

待て待て、自分の事っというところで、私は気が付いたのだ。

あらためて言おう、5月の第2日曜日は母の日だ。

この日が終わったあとのこの腑抜け具合。お気づきか?お父さんは、お気づきだぞ。

なぜ、リサーチを始めない・・・。母の日と対になる日があるだろう、言わせるのか?いや、大丈夫だ、きっとこうしている間も子供たちはセンサーをはって、私が何が欲しいか調べているに違いない。

そう、そのために娘は今寝転がってスマホをいじっているのではないか?息子だって、ゲームをしながらきっと私を観察・・・。

はぁ、何年目だ、そう言い聞かせるのは。今年もあれか、あれなのか?あ、そういえば今日父の日だーと思い出したようにサプライズもなく、クールかつスマートにいつも飲んでいる日本酒よりいい銘柄の酒をもらうのか?

それともネクタイか?

待ってくれ、もうネクタイは締めてないのも数本ある、ネクタイはないなーそれないなーじゃなくて、私が言いたいのはなぜに、父の日をもっとこう・・・もっとだね、あれだ、うわぁ~っびっくりしちゃったーというリアクションをしたいのだよ。

そもそも、忘れやすい6月の第3日曜というところ・・・。

同じ第2日曜ならこの格差はあり得なかったのではないか?

私でさえ、ああ来週だ、1週間間違えちゃったよてへぺろ、というありさまだ。

いやいやいやいや、問題はそこじゃない。

100ぽゆずってサプライズなどという仕掛けがなくてもかまわん。

だが、なぜに母の日の種類ゆたかなプレゼントにたいして、父の日となると酒、ネクタイ、ポロシャツのループをするのだ。

お父さんにも好きな物はあるのだ、1人の人間なのだよ、趣味趣向があるのだよ。

頼む、探ってくれ。

実はアレが欲しいのだと、お母さん偵察部隊を組んでいた時のように、私にも捜査の手をゆるめないでくれ。

気づいてるはずだぞ?数年前にお母さんにあげたあの日から、私が目で追うようになったアレを。

しかしながらお母さんは赤い方であった・・・。

お父さんは赤じゃない。

ほらここまでヒントを出してる子供たちよ。

駅ビルにショップが出来ただろう?私は知っている。

なんせ仕事帰り、店頭でチラッと目が合うのだ。

私が見つめていたはずが、今やあっちから視線を送ってるのではと思う程、私の視界を支配するのだ。

お?娘の動きに変化あり!どこかでかけるのか、駅ビルだぞ、アレは駅ビルにいる。

しかし、お母さんと同じではないのだ。

同じなのだが、違うのだよ。もうこれで分かったであろう、ココは重要だぞ。すごいヒントだ、お父さんからのボーナスヒントなのだぞ。

復習しよう、数年前にお母さんにあげたマスコットキャラクターはなんだったかな?そう!!マイメロディ、マイメロちゃんだ。

お母さんは赤が好きだったな・・・。だが、お父さんはマイメロ、ピンク派だ。

ああー出ちゃったよ、コレ答えだね。お父さんうっかりポロリしちゃったよ。

そう!お父さんはマイメロ、ピンクのグッズが欲しいのだ。」

 


娘:「お父さん、どうしたの?縁側でブツブツ。

ああお母さん居ないからいじけてるんだ。」

 

お父さん:「ななな、なにを、そんなことは無い、タダちょっとな。」

 

娘:「まぁいいや、私でかけてくるね。」

 

お父さん:「出かける?駅前か?いやー今日は休みで駅ビルも混んでるだろうが・・・」

 

娘:「ああ、大丈夫だいじょぶ、すぐそこのカラオケ〜、みんな暇だから、いこーってチャット来たんだ。私も行ってくる。」

 

お父さん:「あ・・・そ、そうか、気をつけてな。行ってらっしゃい。」

 

娘:「行ってきまーす。」

 

バタン...

 

お父さん:「・・・お父さんは・・・・・マイメロ、ピンク派なのだよ・・・。」

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る