塔の外

賑やかな光と街の声色の中

赤紫塔からつまみ出された黄金の髪に

眩く光るターコイズの瞳。


綺麗な顔立ちの騎士は剣を腰に挿し直し

塔の上を見つめる。


塔の出口で待っていた彼の従者2人は

すかさず美しい青いマントを付け、頭を下げる。


「ありがとう。

今日も今日とて姫は堕ちないな。」


苦笑いするように呟くと

マントを翻し帰路につく。


その整った顔立ちから数多の売り子が声を掛けるも見向きもせず

真っ直ぐと進む。


花の先で国を出る前に振り返り

小さく微笑み外に待機させていた白馬に跨ると

足早に森を抜けていく。


必ずや、また来ようと心に留め

その馬の腿を叩く。


彼は水の国メーアの誇る王子ベニトアイトだ。

通常はブルースターと呼ばれ

流れるように押し寄せる水を操る軍師でもある。

水の中で踊るように振るう剣は

まるで最後の娯楽のように美しく綺麗で

見とれている間にのまれて散ると

戦では悪魔の微笑みと恐れられている。


ガラドルの中では、唯一他の国へも顔が知られてる存在だ。


花の国に何度も足を運ぶも

一向に現れない花のガラドルに

少しばかり不機嫌になりながらも楽しむ姿は天使の外見に悪魔の内面、とでも言おうか。


柔軟な水というよりも全てを壊す波のようである。

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