第1章

塔の中

中心部の塔、それは赤紫城。

最上階には最高の権力者が居る。


街中ではきゃあきゃあとさまざまな種族の女が男に声をかける。


ここに入ったモノは中々抜け出す事が出来ない。

夜の国の蝶達に酔ってしまうのだから。


店の枠からほっそりとして、真っ白な綺麗な手を出す女に見惚れる男。

夜の街らしく二人は奥の部屋へと進んでいく。


この国の蝶の長

そう、赤紫に住むものが城の窓辺に腰掛けて下界を見る。


「今日も客が多そうね。わらわも少し見て回ろうかしら。」


そうつぶやきながら窓から離れる。


「いけませんよ。貴女様が外へ出向けば客は彼女達から貴女様へ乗り換えますぞ。」


白い服を着た狐がお茶を持って部屋に来るなりそう伝える。

せっせとお茶の準備をしつつ

外を見る蝶へ部屋を出る事がない様に念を押して伝える。


「わかっておるよ。月に一度しか人前に出れないのは寂しいものよ。して、小姓よ。先程から下が騒がしいようだが、何かあったのか。」


お茶を飲みながら狐をちらりと見る。

狐は深々と頭を下げ報告をする。


「実は先程、例のお方が貴女様を一目見たいと騒がれており…」


ふぅむ。と呆れたように茶器から口を離し

小姓を見つめる。


「彼奴はまだおるのか。長引くようなら摘み出せ。」


その言葉に小姓は深々とお辞儀をし

仰せのままにと答え部屋を出る。


騒がしい夜の街はまたいっそう賑やかになり

フロックスの夜を盛り上げる

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