第7話 が

 ああ、そうだ。

 つまらないのは、俺の作るものなのだ。

 それを、言葉のせいにしている。

 もはやどの音を良くて、どの音をいけないのは知らない。でもそれは大きな思い違い。そこじゃあない。

 もっと、出来るはず。俺なら、もっと。

 打ち込め。打ち込め。打ち込め。打ち込め。

 気持ちを整え、筆を執る。



 ひっそりと、俺はまた、気を持つことなく、通り過ぎる。

 それを行く、戻るするうち、生きることはひとりでに進む。ああ、二度の無駄。知るはずを知らず、出来るを出来ず、どうにもならない苦悩に苛まれ、また一人。

 二人いるはずのものであるのに、一人。

 二人いるはずのものであるのに、一人。

 壊れているのは、俺と世のどちらだ?

 それらの息吹を側に置くことのみを望むのに、何故それらを遠ざけるようなことを?

 苦しみ。

 それは、昼に飛び、夕に舞う。

 さも、俺の知るものであるように。



 ああ、駄目だ。

 やっぱり、言葉、出てこない。

 言葉無ければ、俺は誰なのだ?

 少しの音も失ってはいない。そのようなことはない。俺は、何も失っていない。俺は、何も失っていない。

 明日あすも、俺はあるだろう。だが、そこに俺はないのだろう。

 やはり、どの音良くて、どの音駄目は知らない。駄目は一つも無いようだし、全ての気もする。

 逃げる。ここは、息が出来ない。

 息を、するのは出来ない。

 次は、「は」だ。

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