第31話 ソリティア

「どこの世界に女神に親友の暗殺依頼を出す馬鹿が居るんだよ」

「だって、愛する人たかしと離れたくなかったんだもん」


馬鹿な事をほざく坂神に拳骨を落とす。


「いったぁぁ」

「通り魔に刺された時の俺の方が遥かに痛いかったわ!」

「そんなに怒らないでよ。転生出来たんだし良いじゃない……」


反省してない様なので再び拳骨を落とす。


「いたいぃぃ」


転生してからエニルに会うまでの半年間、俺がどんな気持ちで生きてたと思ってんだこいつは。


地べたに正座させている坂神を、怒り心頭の思いで睨みつける。


「うぅ。ごめんなさい」


このあほをどうしてやろうかと考えていると、エニルが割って入ってくる。


「まあまあ、落ち着け。気持ちは分かるが、ティアもお主に会いたい一心でやってしまった事。愛ゆえの過ちじゃ、許してやれ」

「ししょう……」


思いもしない横やりに面食らう。

まさか命を狙われていたエニルが坂神を庇うとは夢にも思わなかった。


「たかしさん。私からもお願いします。どうかティアさんを許してあげてください」


エニルに続きプリンもティアを許すよう懇願してくる。


「レルのー顔に免じてー、許してあげてくださいー」


何で上から目線?

エニルなら兎も角、お前の顔はサンドバッグであって免じる物ではないんだが?


しかしまいった。

まさか周りがこうも坂神に同情的になるとは。

女ってのはどうしてこう愛って言葉に弱いんだ?


個人的な落としどころとして、坂神には2度と俺に近寄らない様約束させようと思ってたんだが。それを口にしたら絶対非難されるよな?


「たかしよ。どうか私の顔を立てて、ティアを許してやってくれ」


どうした物かと困っていると、エニルが俺に深々と頭を下げる。


「何でそこまでするんだ?坂神はあんたを殺そうとしてたんだぜ?」

「別に殺されたわけじゃないからの。それに愛する者と引き裂かれる気持ちは、同じ女として良く分かる。だからこの通り」

「じしょうぅ……」


同じ女?

坂神君は男の子ですけども?


まあエニルに頭下げられたんじゃ断れないか。

彼女には色々と借りがある。

それを無視するようなら勇者失格だ。

ってそういや俺、勇者でも何でもないんだっけか。


坂神に用意されたプレゼント、それが俺だ。

今まで必死になって頑張って来てたのが馬鹿らしくなるぜ。


「はぁ、まあいいや。素直に謝ったって事で許してやるよ。但し今回だけだぞ」

「たかしぃ……」


坂神が顔を上げ、潤んだ瞳で俺を見つめる。

俺はその瞳を見つめ返し。

静かにファイティングポーズをとった。


「たかし愛してる!!」


蛙飛びの様に坂神が飛び掛かってくる。


うん、知ってた。


唇を突き出して飛び掛かって来る坂神の顔面をチョッピングライトで迎撃。

これでもかと言うぐらい綺麗に決まり坂神は吹き飛ぶが、直ぐに起き上がり抗議の声を上げた。


「ちょっと!女の子の顔を殴るなんてひどいじゃない!!」

「飛び掛かって来るからだろうが」

「仲直りのキスをしようとしただけじゃないの!?」


あの流れでキスできるとか、本当に真正のあほだなこいつは。

やっぱりペナルティは必要だな。


「良いか坂神!これから俺に迫るのは一切なしだ!!」

「そんなの酷いわ!!」


いや、酷くねーから。

自分を殺した首謀者。

しかも同姓にがんがん迫られるとか、どんな罰ゲームだよ。


「たかしさんそれは……」

「悪魔ですー」


え?何?

これでも駄目なの?

相当妥協した方だと思うんだけども?


「たかしと一緒になれないなら死んだほうがましよ」


だったら死んでください。

引き止めませんから。


「まあ落ち着け、ティアよ。迫れないというなら、相手に迫らせればいい。要はたかしを口説き落とせばいいだけの事」

「ぅぅぅ、でもぉ」

「安心せい。男の口説き方ならこの私がきっちり伝授してやろう。たかし如きヘタレ、イチコロじゃ」


エニルは親指を人差し指と中指で挟み込むように手を握り込み、にやりと笑う。

下品だから止めろエロ婆。


「本当ですか!?」

「じゃあーレルもー。ヘタレさんをー手玉に取りたいんでー。教えてくださいー」

「あ、あの!あたしもお願いします!!」

「おう!任せておけ!まずはじゃの――」


こうしてエニルのたかし口説き講座が始まる。

本人を目の前にして。


物すっごい気まずいんですが?



そんな俺の気持ちなどお構いなしに、口説き講座兼女子トークは朝まで続くのだった。


~result~最終結果


暇だったので朝までメイとソリティアしてました。

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