1.秘密結社MPD
名取
プロローグ
異常・正常の区別をつけたいと思ったことはおよそない。
なぜなら、それは私の仕事ではないからだ。
何が異常で、何が正常なのか、それを決めるのは私の親であり、私の意見など採用されない。この家では、親の意見こそが子にとって絶対なのである。反論してもいいのだが、その場合、冷たく見放される。幼い子供は親に見放されては、生きていけない。なので、黙る。
けれど、私は決して親を憎んではいない。
なぜなら、私の苦しみは親が愚かなのが全て悪いのであり、私の落ち度ではないからだ。私はたまたま、「上司の命令に従うしかない部下」として生まれたにすぎない。そのことを考えないようにしていれば、なんら苦痛など感じない。報酬だってちゃんと与えられる。つまり親は、ただのシステムだ。自動販売機のようなものだ。自動販売機に対して怒りを抱くのは、バカのすることだろう。自動販売機が壊れたのなら、然るべきところに連絡するか、修理をするかすればいい。それだけのことだ。
話は逸れたが、そういう理由で、私は他人を正常か異常かに分ける作業が、全くと言っていいほどできない。
誰かが何かを異常なのだと言えば、まあ、そうなのだろう。
誰かが何かを正常なのだと言えば、まあ、そうなのだろう。
という感じに生きてきた私・市ノ瀬リアだが、最近、少し困っていることがある。
しばしば、記憶が飛ぶのだ。
気がつくとものすごく時間が経っていたり、知らない場所にいたりする。
そして親曰くこれは「異常」なことらしく、ものすごい形相で連れて行かれた先は、精神病院であった。私は少し困った。
入院などということになれば、好きなアニメが見られない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます