第16話 王都での日常生活 前編

 初日こそは、色々とトラブルなど発生したりしたが、以降はほぼ計画通りに1日1日が過ぎた。


 そしてシュタットの街に住み始めて1週間が経過した。


 1週間、短いようで長い期間である。


 人が新しい生活サイクルに、順応できるようになるのには充分な期間だと言える。


 まず研修において、俺は基礎部分をようやく完遂できるようになった。


 まだまだ余裕がある訳ではない。


 完了時には息が上がってしばらくは起き上がれない。


 しかし当初に比べれば進歩しているはずだ。


 他の研修生は、元々出来ていたことなので、さらに余裕になっていた。


 基礎トレーニングを完了した人から実践の稽古に入っていく。


 俺は1人で木製のナイフを素振りしていた。


 筋力が無いので、木製のナイフを振り回すだけでも結構なトレーニングになるのだ。


 初期研修メンバーは30人いたのだが、3人ほど初日に大怪我をして今は入院中ということらしい。


 あれだけスプラッターしていたら、簡単に復帰もできないだろう。


 そして27人になって、俺だけ1人余るというわけだ。


 お姉ちゃんに、あの時何をしたのか聞いたのだが、頬を赤くして拒否られてしまった。


 本人の中ではヤンチャをしてしまった認識みたいなので、それ以上は聞けなかった。



 研修生のコミュニティーというのも出来上がっていた。


 まず1番大きなグループは勇者ルシフェルを中心としたグループだ。


 しかも実力がある人達が集まっているので地力が高い。


 俺を2回目に治癒してくれた女性もこのグループだ。


 16人という過半数以上のメンバーが集まっている。


 次が友達同士で冒険者になったグループだ。


 友達同士なので息がピッタリとあっていて、連携が得意そうなグループでもある。


 メンバー数は8人。


 よく言われる1パーティーぴったりの人数だ。


 そして最後が、俺のいるグループ。


 要は落ちこぼれだ。


 3人のメンバーで構成されている。


 それぞれ売れ残っているには理由があるのだろう。


 メンバーは騎士のジュリアスさんと治癒士のリアナさんだ

 


 今日の研修の終わりに、パーティーでの行動を明日から実施するという教官からの通達があった。


 1つのクエストをパーティーで時間内に完了させるというものだ。


 個人のスキルも大切だが、今後のパーティーでの立ち回りに慣れさせるというのが目的なのだろう。


 8人で行動するので、クエストのランクは1つ上であるシルバーのものが選ばれるようだ。


 俺達は3人しかいないので、明日までにどうするのかをギルドが決めておくということだった。


 午前の研修を終えると、お姉ちゃんがお弁当を用意してくれていて一緒に食べる。


 立って食べるわけにはいかないので、公園などで座って食べることができるところを選ぶ。



 いつも、この時間になると城の兵士達が走りながら何かを探している。


「今日は南門らしい」


「どこに隠れていやがる」


 兵士達はそんな事を言っている。


 一体、何が起きているのだろうか? お姉ちゃんは、いつもこの時だけ厳しい顔をしている。


 兵士が走り去ると、何事もなかったかの様にお弁当を頂く。


 食べたあと、俺は疲れてウトウトとしてしまうのに、お姉ちゃんは何故かにこにこしている。


 以前、弟が……と言っていたのが関係あるのかもしれない。


 お姉ちゃんはすごく忙しい人でもある。


 いつも俺に付き合ってくれているのが不思議でならなかった。

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