神霊の子
第88話 風雨
小高い山の頂きにあるとはいえ、
だが境内には
瑞彦や充房を初めとした宮司たちは、ありったけの
日頃の
負傷したなかでも、一番ひどいのは右腕を失った桂木だったため、お宮にたどり着いた面々は、社務所のなかでも数少ない
桂木がまず腕の状態を見られ、その隣には意識の戻らない桜子が横たえられた。
社に運びこまれてからも桜子は目を閉じたまま、さながら眠っているようだった。しかし呼気があるとはいえ、寝ているだけではないことは、数刻ののち次第に明らかになった。
里の
その合間にも、桜子の心臓がひとつ脈をとばす。
(——私、死ぬのかしら)
意識の底で、気脈が弱っていくのを感じながら、桜子はそう思った。
生じた闇は、徐々に桜子を
あのとき——五瀬川のほとりで『水神の剣』を手に振るったとき、桜子は気力を使い果たしていた。
それでも平気なように思えたが、体にかかる負担はいつのまにか限界を超えていた。
——少し横になれば動けるようになる。
君の母も、疲れるとそうしていた。
不意に、いつかの優の言葉が浮かぶ。
——ここにつかまって。
今度それは、薫の声に聞こえた。
(薫。どこへ行ってしまったのだろう——)
桜子が意識のはざまでそう思ったとき、ふわっと体が浮遊する感覚があった。
瞬間、
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