第13話 桂木
夕暮れの前に小山を降りて家にたどり着いた桜子は、秋津彦にさんざん叱られた。夏芽にもこっそり嫌味を言われたほどだ。天気が天気だけに、秋津彦も心配したのだろう。
桜子の様子に覇気がなく、どこか悄然としているのを反省している色ととったのか、謹慎させられることだけは
祖父に詳しい事情——『月読』という組織や薫のこと——を聞きたかったが、稽古場に行ってもあいにく不在だった。そこでは連日、師範代の
***
いつまでも祖父が帰ってこないことに焦れた桜子は、稽古を終えたある日、桂木の方に歩み寄って言った。
「おじいちゃんがどこに行ったかを、桂木さんは詳しく聞いているの」
桂木は里のなかでも、人の良い壮年の
「それが突然のことで、私もよく知らないんですよ」
その言葉が本当かどうか、桜子は分からなかった。でもそう言われた以上、さらに追及することはできなかった。
桜子は話題を変えた。
「薫は——おじいちゃんの内弟子の、
和人とは、身寄りのない薫の世話をしてくれた里の
桂木はいきなり薫のことを聞かれ、やや困惑した様子だった。
「たぶんそうでしょう。今もそうだと断言はできませんが」
含んだような物言いに、桜子は口をつぐんだ。桂木も一連の出来事について、何か知っているのだ。そしてそれを桜子に言う気はないのだ。
そう思うとやりきれなくて、桜子は何も言わずに表に出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます