第7話 剣の由来
「それで、おじいちゃんは何て言ったの」
息をつめて尋ねると、清乃は肩をすくめた。
「戻らないって辞退したそうよ。でも誘いを蹴ったことで、その影響が及ぶかもしれないと瑞彦さんは危惧されていた」
「まさかそんな、関係ないじゃない」
青ざめて桜子はそうつぶやいた。
清乃は首を振った。
「それが何の因果もないわけではないのよ。この
最終的に『月読』は、その剣を欲するかもしれない」
「剣って、お母さんが舞いを奉納した剣のこと?」
その様子を桜子は見たこともないし何の覚えもない——が、生前桜子の母が、巫女として
白い小袖に
特に
桜子の問いに、清乃は頷いた。
「一番怖いのは、剣を奪われることで
あの剣は『水神の剣』といって、古来は
瑞彦さんを初め、
——おじいちゃんが、そんなに凄い人だったなんて。
桜子は半ばあっけにとられて何も言えなくなった。忍びだったことは知っていたが、皇に目をかけられるほどだったとは。
父も祖父も、そのことを敢えて今まで語り聞かせずにいたのだろうか。
桜子が何も言えずにいると、清乃は目元を少しなごませた。
「秋津彦さんが婿がねを探すのは、あなたをその影響下に置かないためよ。稽古場が好きな気持ちは、私もよく分かる。あそこは本当に風通しのいい場所。
あなたの母——
母の名前を持ち出され、桜子は胸の中心が熱くなった。桜子が巫女になれないと思うのは、記憶にない母の面影が心の底に存在するからだ。
扇を手に舞う神々しい姿が脳裏で像を結び、実の娘とはいえ、そんなふうになれるとは思えなかった。
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