誤字ではありません、暗号です

pizmo

ネットの主役はチャットでした。

その昔、まだスマホやLINEなんてない時代にチャットが流行った。

当時は電車男などネットコミュニケーションが話題となっていて

掲示板や対戦ゲームなどでも盛んに交流がなされていました。


そんな中、インターネットという大海原で一癖も二癖もある

ツワモノが集まる社交場がチャットだったのである。


基本的に文字のみで交流する場ですから混乱します。

集まる人々は我が強く個性的ですからなおさらです。


そして、言葉のバトルが始まるのです。ことバトル。(謎)


言葉の行き交う戦場では目立たなければなりません。

イカシタフレーズを浴びせかけ、旬な話題に食いつく。

マシンガントーク炸裂、追いつけないひと続出。(ヨーヨー)


そんな戦場のウェポンは愛用キーボードとタイピングスキル。

ブラインドタッチは当たり前、脳とタイピングがシンクロする。

高速タイプでライバルを蹴落として場の主役になる。


バトルは深夜まで続きます。さすがに強者達も疲れが出てきます。

当然ながらタイプミスも多くなります。


しかし、そこは負けず嫌いなチャットマスターの面々ですから

ミスを簡単には認めません。何食わぬ顔でログを流そうとします。


すかさず痛烈に指摘するひとも現れます。バトルの場ですから。

でも、ツワモノは動じません。苦し紛れに放った一言。


「それは誤字ではありません、暗号です」


このような修羅場が毎夜となく繰り返されました。

暗号は伝説となり、ネットスラングになっていきました。

ネット文化は誤字という暗号によって育まれてきたのです。


ことバトルによって生み出された暗号よ永遠なれ!

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