プロローグ(7)―怒る聴衆
聴衆は、一層騒ぎ始めた。
「そっ、それは……制度の問題だろ! 俺たちには、どうにもできない問題じゃないか! むしろ、おまえら政治家のせいだろ! ひ、人のせいにすんな! 俺たちはなにも悪くない!!」
まさに団塊の世代だったのか、男性は顔を真赤にして叫んだ。
龍馬は、その声に鋭く返した。
「たしかに、政治の責任が一番重い! しかし、あなた方だって声を上げることくらいはできたんじゃないですか? 長生きであればあるほど、その時間も、チャンスもあったはずですよね? 特に団塊の世代のみなさんは、かつては安田講堂に立て籠もり、あるいは国会を包囲し、机上の空論に終わった革命を声高に叫んでいた世代ですよね? 日本史上、最もボリュームの多い世代であるあなた方が本気を出せば、潮目くらいは変えられたんじゃないんですか? わが国は民主主義国家なのですから。民主主義とは、誤解を恐れずあえて単純化して言えば、多数決ということだ。数で圧倒するみなさんが本気になって世論を形成すれば、20年以上も前から制度限界を迎えていたわが国の年金・社会保障制度にメスくらいは入れられたんじゃないですか? しかし、しかしだ! 実際、あなた方は動こうとしなかった。むしろ、社会保障の受益者になった途端、制度
高齢者たちのどよめきや
先程までの歓迎ムードは一転、明らかに反感や敵意に変わっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます