プロローグ(8)―不退転の決意
それでも、龍馬は涼しい顔のままだった。
この反応は織り込み済みだったし、ようやく本音が言えて、むしろ清々した気分だった。政界に入って10年。
《社会保障の刷新、世代間格差の解消、若者が夢を抱ける国作り》
龍馬が叶えたいこれらの政治課題の多くは、この国のマジョリティである高齢世代の
ゆえに、問題は先送りされ、現状は維持されてきた。
この状況を変えるには、少なくとも霞ヶ関を本気にさせる「力」が必要だった。龍馬は、そのために10年もの間、自分を隠し続けた。自らを
「私はここに新たな公約を掲げたい! それは、必ずしもすべての人に
聴衆の高齢者たちは、もはや怒りを隠すことなく叫び始めた。
「――おいおい! 年金廃止ってどういうことだ!」
「年寄りいじめは、やめろー!」
「老人は、どうなってもいいっていうのか!」
その声が上がると、龍馬が
「じゃあ、若者はどうなってもいいのかー!」
聴衆は一瞬、虚をつかれたのか静まった。
「最後まで聞いてください。現行の年金制度は廃止しますが、それに代わり……」
改めて、龍馬が話し始めたその時だった――
――突如、会場の防災用スピーカーから、あの無機質な電子音が響いた。
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