消毒液の赤
いつのまにか 手に赤い線が走っていた
じんわり 皮膚が皺に従って
ゆっくり 滲んでいく
きっと舐めたら鉄の味がする
口の中いっぱいに
前に唾液は治療として使えるなんて
都市伝説めいたことを聞いた
じっと 手を見ていた
じっと かさぶた さびいろ
醜くなってしまう前の
鮮やかな赤を見ていた
最初は、こんなに輝かしいのに
なぜ時間が経つと醜くなってしまうのか
人も、花も、生き物も
生命に限りがあるからこそ
それを生き抜いてこそ
輝かしい
その言葉は きっと間違っていない
間違っていないと思う
だが生きている証拠の方が
美しいと思い、ずっと手から鮮血が流れればよいと
思っている自身
治ることで 生きながらえることで 生命が美しいと説かれるのなら
なら、ゆっくりと消毒液など使わずに
束の間の美しい赤を眺め じっと じっと
このまま 綺麗な赤で死を迎えないかと
あとのことなど知らず、赤で、赤で
美しい赤で「生きる」を感じていた、かった
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