ぼくは正義だった
松江 三世
第1話
僕は小さい頃、アンパンマンに憧れていた。悪を倒す正義のヒーロー。
なんてカッコイイんだ。
これが僕の夢だった。
小学校に入ってできた友達のショウ君はめがねをかけてた。
ある時、僕はショウ君が変なあだ名をつけられて嫌がっているところを見つけた。三、四人のクラスメートに囲まれて、めがねざる、めがねざる、とはやしたてられているショウ君を見て、僕は止めなきゃと思った。
だってショウ君は嫌がっている。
これは悪だもの。倒さなくちゃ。
そう思って、僕は間にはいった。
「やめなよ。嫌がってるじゃん。」クラスメートの視線が僕に集まる。
「はあ?何言ってんの。意味わからない。」クラスメート達は言った。
「こいつだって楽しんでるじゃん。なあ、そうだよな。」ショウ君は少し迷ってからうなづいた。クラスメート達は去っていった。
ショウ君は去り際に僕にこう言った。「善人ぶって、迷惑。」
僕はなんでそんな風に言われなきゃいけないのかわからなかった。だってショウ君は嫌がっていたじゃん。そう思った。
僕は考えた。どうしてショウ君は怒ったんだろう。そしてわかった。ショウ君は嫌がってなかったんだ。ああやって遊んでいただけだったんだ。ショウ君をめがねざると呼ぶのは悪じゃない。正義なんだ。
次の日、僕はショウ君に声をかけた。
「おはよう、めがねざる君。」
ショウ君は少しさみしそうな顔をして、何も言わずに立ち去った。僕は少し後味が悪いように感じたけど、自信があった。
これは正義だ。
ショウ君は今、喜んでいるはずだ。
それから僕は毎日ショウ君に声をかけ続けた。時にはひとりで、時にはみんなで。
これは正義なんだ。僕は何度もつぶやいた。
ショウ君のためなんだ。
僕はみんなとどんどん仲良くなっていった。
でも、ショウ君はどんどん遠くに離れていって、ひとりでいることが多くなった。
もう、心が痛むこともなかった。
ショウ君も楽しい。僕も楽しい。
なんていいんだろ。そう思っていた。
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