第9話  エンディング


ある時、新しく出来た平原にほど近い村の外れに王都から兄妹が移り住んできました。

村人が一度も姿を見たことがない身体の弱い姉と狩りの腕の立つ兄と明朗な妹との三人兄妹です。

兄は野山で狩りをし、妹は兄の仕留めた獲物の皮や骨を加工しつつ村の畑仕事を手伝い、家で伏せる姉を看病していました。

伏せているのに無茶をする姉と、過保護な兄を嗜める妹の笑い声が近くを通る村人の耳に毎日のように聞こえていました。

兄妹達は仲良く暮らしていましたが、先の永くなかった姉はすぐに亡くなってしまったそうです。

残された二人はとても悲しみましたが、姉に少しでも恩を返せたかなと涙を拭いながら笑顔で見送りました。

そして姉の墓石には生前姉が使っていたという刀と小さなネックレスが供えてありました。

兄と妹が言うには生まれ変わったら、再会できるようにと祈りを込めたそうです。

村人の一人がきっとまた会えるさ、と言うと兄妹は顔を見合わせて「そうですね。そのときが楽しみです。」と意味ありげに笑っていたそうです。


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ウォルフラムの見た景色 鴨田とり @kamodashi

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