辺境田舎でスローライフをしてましたが、LV99の伝説騎士に修行をつけてもらってたようなので、王都で無双してくる
高橋留美郎
悪を挫き、弱きものを救える剣を
「うわあああああああああ!!!!!!!!」
俺は3mを超えるオーガに剣技を首に命中させ、首を撥ねた。
ズシーーーーン!
オーガの巨大な身体が地面に崩れ落ちた。
その瞬間、俺はじいちゃんの教えである『悪を挫き、弱きものを救える剣を』確かに受け継いだのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
俺の名前はブレイブ・ソード。今年、15歳になる。
両親は幼いころに戦で死んじまって誰かもわからない。
遠い親戚のじいちゃんが俺を引き取ってくれたようで、物心付いたころから、じいちゃんと二人暮らしだった。
そんで超超超超田舎に住んでいる。
この村で事件といえば極々たまにゴブリンが長毛獣を襲っただとか、そのくらいの雑魚モンスターが起こす小さい事件くらいしか起きない。
そんなときはじいちゃんが出張っていって、モンスターを退治して解決する。
じいちゃんは昔、結構な使い手の剣士だったとか腕がとても立つため、村でも頼りにされていた。
俺はというと、そんな凄腕のじいちゃんの身の回りの世話(掃除、洗濯、薪割、etc、etc、etc……。)をやらされながら、剣の修行をする日々だった。
じいちゃんは修行のとき必ず『悪を挫き、弱きものを救える剣を』というのだけど、俺にはピンとこない。
『悪』と言ってもこんな片田舎じゃ、スライムか、ゴブリン相手が関の山なんだけどなぁ~。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そんな毎日を送っていたある日、日課の剣の修行をサボり村をプラプラしていると、見慣れない騎士が村にやってきた。
こんな超ド田舎に都の騎士様がなんの用だっていうんだ?
「そこのかた、ちょっとお尋ねしたいことがあるのですが……。」
俺はその騎士に呼び止められた。騎士は俺の目の前に立つとフルメットの兜を取り会釈した。
現れたのはツインテールの金髪の美少女だった。
碧眼の瞳、透き通った白い肌、しかし、まなざしは勇敢で少女の可憐さと、騎士の強さのどちらも内包している不思議な魅力があった。
おお、う、美し、可愛い。
「は、はひぃ。なんでしょう?」
俺は美しい女の子が突如、甲冑の下から突然現れたため、驚きのあまり、キモいくらい声がドモってしまった。
だって、仕方ないだろう!?普段はじいちゃんと二人暮らしで女の子と話す機会なんてないんだから……。
「私の名前はローズ・レイウッドと申します。このあたりに伝説の騎士ローグ・ソード様が住まわれていると聞いたのですが、お心当たりはありませんか?」
ん?ソードって俺と同じ苗字だけど、伝説の騎士?じいちゃんが?まさかねぇ~。
「俺の名前はブレイブっていいます!う~ん、そんな伝説の騎士様、この村にいたかなぁ?ごめん!心当たりはないな……。」
可愛いローズの期待には応えたかったけど、知らないから仕方ないよなぁ。
「そうですか……。手間を取らせてすみません。私はもう少し、この村で聞き込みを続けてみますね。ありがとうございます。」
「う~ん、役に立てなくてごめんな。またな。ローズ!」
「いえ、お気になさらないでくださいませ。なにか困ったことがあったらおっしゃってください。『悪を挫き、弱きものを救える剣を』それが騎士の務めですから、では……。」
ローズは上品に会釈をすると去っていった。
本物の騎士様って美しく、かっこいいんだなぁ~。
『悪を挫き、弱きものを救える剣を』ってじいちゃんがいつも言ってる言葉だけど、騎士の間で流行ってる言葉なのかな?
って、やべえ!!!流石に長い時間サボりすぎたか!?早く家に戻んないと!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
家に戻るとじいちゃんがカンカンに怒っていた。
「こりゃあ!ブレイブ!どこで油を売っていたんじゃ!!ちゃんと日課の素振りは千回は終わってるんじゃろうな!?」
「え~っと……ちょっと……ヤボ用で……。」
キラーンとじいちゃんの鋭い眼光が俺を睨んだ。
こ、怖ええええええよぉおおおおおおお!!!!
「終わってませんんんんんんん!!!」
「ぶわっかもんがーーーーー!!そんなんで『悪を挫き、弱きものを救える剣を』得られると思うのか!!今日はいつもの倍の修行量じゃから覚悟しておけ!!!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「なぁ、じいちゃん……。こんな片田舎でこんなに修行する必要あるのかよ?俺はこの村から出て行く気はないし、もう十分修行は積んでるだろ?」
通常の騎士の剣の2倍は重さはある鉄の棒を振りながら、じいちゃんにたずねる。
「まだまだ!お前にはこの村を出てもっと大きな悪に立ち向かい、その剣で多くの人を救って欲しいんじゃ。」
「俺はじいちゃんと一緒にこの村で暮らすよ!身の回りの世話とかもあるし、じいちゃんが死んじまった後でもこの村を守る人間は必要だろ。」
「お前にはもっと大きなものを見ろといつも言っておるじゃろ!!口を閉じて素振りをせんかい!!はい、素振りも千回追加じゃあ!!」
「うぇ~~~~~~!!助けてくれ~~~!!」
やっぱこんなジジイほうっておいて、この村出ようかな……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
じいちゃんにコテンパンに修行をつけられた、次の日、俺は村の商店に食材を買出しに行っていた。
村の商店ではローズが昨日のように聞き込みをしているようだった。
なんとかお近づきになりたい俺は勇気を振り絞って声をかけてみた。
「やややややや、やぁ、ローズ!」
可愛い娘に話しかけるとなると、どうしても緊張のあまりドモってしまう…情けないなぁ~、俺。
「あら、ブレイブ!ごきげんよう。昨日はどうもありがとうございました。」
ローズは美しい笑顔を俺のほうに向けてくれた。
やっぱ可愛いな。声をかけてよかった~。
「それで伝説の騎士様は見つかったかい?」
「いえ、実はまだ……。」
ローズは困ったように首をかしげていた。
「キャーーーーーー!!!!」
「も、モンスターが出たぞぉぉぉぉぉぉ!!!」
村の入り口から叫び声が聞こえる。
「村の入り口のほうからだ!」
ローズと顔を見合わせると、俺とローズは町の入り口のほうにかけていった。
通常はあまり統率力のないゴブリンが、100体以上群れをなして村を襲い掛かってきていた。
「なんで村にこんなに大量のゴブリンが……!?」
ゴブリンたちは村人たちを女子供容赦なく無残に殺し、家に火を放ったりと暴挙の限りを尽くしていた。
「てやぁぁあああああ!!!」
ローズは瞬く間に魔物の群れに飛び出すと、村に襲い掛かっていたゴブリンを次々に倒していく。
見事な腕前だ……これが騎士の実力なのか……。
「ローズ、危ない!!」
間一髪でローズの後ろから襲いくるゴブリンを倒す。
俺もけっこうやるじゃん!じいちゃんに鍛えられただけあったぜ!!
「ありがとう、ブレイブ!あなたも戦えるのね!」
「あぁ!多少はね!このままやっつけちまおうぜ!!」
俺とローズは連携し、ゴブリンたちを倒していった。
「調子に乗るなよ、人間ども」
ゴブリンたちの群れを倒しきった俺たちの目の前に、ゴブリンを優に超える大きさのモンスターが姿を現した。
あれはゴブリンなんかじゃない!?オーガ!?なんでこんなところにこんな上級モンスターが!?
筋骨隆々のオーガはゴブリンなんかよりもずっと強いモンスターだ。燃え上がるような赤い肌に、鋭い牙と角を持ち、丸太のような腕には2mを超える大剣を持っていた。
「ブレイブ、こいつの相手は私が!」
ローズがオーガに切りかかる。
――キィン……!!
オーガはローズの剣技を大剣で軽く退けた。それと同時に、彼女の身体もろとも弾いた。
その弾いた衝撃で身体が宙に浮いたローズは壁に激突し、そのまま気絶してしまった。
「ローズ……ッ!!」
「ザコが……。」
――ブンッ!
容赦なくローズに止めを刺そうとオーガが大剣を振り上げた。
その時!!
「ばぁかもん!!!!何をあきらめとるんじゃあ!!!」
その瞬間、鋭い一閃がオーガの腕を通過し、オーガの腕が大剣ごとズルリと地面に落ちた。
「じいちゃん!!!」
「村の様子が気になってきてみたら、こんなことになっていたとはな。」
「わかったよ、じいちゃんって、うわあああ!!!」
離れていたと思ったオーガが目にも留まらぬスピードで迫り、俺の元に大剣を振るった。
やられる……!!そう思った瞬間、じいちゃんが俺を突き飛ばし庇った。
その瞬間、オーガの大剣がじいちゃんの身体を貫いた。
「ガハッ……!!」
「じいちゃん!!!!!!」
「ぬううううううう!!!おおおおおお!!」
じいちゃんは身体を大剣で貫かれながらもオーガの腕を掴んだ。
オーガはじいちゃんのすごい力で抑え込まれ、動けなくなってしまい困惑している。
「な、なんだ!?この人間の力は……!?」
「今じゃあ!ブレイブ!わしごとオーガを斬れ!!」
「できないよ、そんなこと……!!」
「今、この機会を逃したら村を守れなくなる!早くするんじゃぁぁぁぁああああ!!!」
「うわあああああああああ!!!!!!!!!!!」
俺は3mを超えるオーガに剣技を首に命中させ、オーガの首を撥ねた。
ズシーーーーン!
「じいちゃん!!」
俺と目を覚ましたローズはすぐにじいちゃんの元に駆け寄った。
「よ、よくやったぞ……。流石はわが孫じゃ。お前は勇気を出し、悪に立ち向かい戦いを挑んだ。そして、この村を守ることができた。」
「もう喋るなって……。そんな話よりもじいちゃん、早く手当てを……。」
「あなたはローグ様……!!あぁ、なんてこと……。」
「なんだってってことは、やっぱりじいちゃんが伝説の騎士!?」
「その名前で呼ばれるのも久しいな……。だが、わしはもうこのとおりじゃ……。」
じいちゃんの腹にはオーガに空けられた大きな穴が空いていた。もう助からないのは明白だった。
「じいちゃん!もっと教えてもらいたいことがあるんだよぉぉおおおおお!!弱気になるなよ……!!」
「お前のその力、弱きもののために使うんじゃぞ……。」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「じゃあ、じいちゃん、行って来るよ」
じいちゃんの墓で別れの挨拶を終えると、俺は家を後にした。
俺はローズに誘われ、村を出て、王都で騎士の入団試験を受けることにした。
今、世界中で原因不明のモンスターが人間の村を襲う事件があり、それの原因を突き止めるべく、王都ではなるべく多くの腕に覚えのあるものを集めているそうだ。
これから俺は多くの困難や敵に出会うだろう。
けれど、俺はけして挫けない。
なぜならじいちゃんから教えてもらった剣技と『悪を挫き、弱きものを救える剣を』という教えがあるから。
辺境田舎でスローライフをしてましたが、LV99の伝説騎士に修行をつけてもらってたようなので、王都で無双してくる 高橋留美郎 @Rumilow_Takahashi
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