Espionage6 支配

 さっき虜にした奴を階に放ってやった、じきにゾロゾロやってくるだろう。


「オペレーター、監視カメラは?」

『無力化してあります』

「ならいい」

『エレベーターにも細工しました。その階の支配者は貴女になりますね』

「響きは嫌いじゃない」

『それで、どんな支配にするんです?』

「今回は数が多いから『女王クイーン』でもやってやるよ」

『どんな女王なんです?』

「色香で意のままに雄を操る暴君」

『人気の出るパターンですね』

「お決まりだろ?」

『安直でいいんですよ』


 もっともだ。私の誘引は視覚だけでも十分効果がある。変にコネくりまわすより安直な方がわかりやすい。


 さてそんな話をしていたら奴らが集まってきた。

 徹底的にやる方が誘引は幾らか楽しい。


 一番最初に虜にした奴はその功績を讃えて特別賞をやろう。

「あらあら、沢山つれて来たのねぇ」

「せ、精一杯やりました……」

 そう言う一号の目はもうラリラリ。ご褒美が欲しいと言わんばかりだ。だから少しイジってやる。

「ご褒美、欲しい?」

 分かりきった上で聞く。

 この瞬間も悪くはない。

「は、はひ! 欲しいです」

 呂律も怪しい。

 まあ誘引の前では仕方ないか。

「素直な子は好きよ」

 悩ましい腰つきで一号に近づく。これだけでご褒美になっている。だがもっとやってやる。ははは、愉快愉快。


「ごくろうさま」

 一号に密着し耳元で囁く、そして手を下に伸ばす。後はちょっとイジるだけだ。

「あっあ……あ、あ……ぁ」

 はい、これでコイツは完全に堕ちた。さーてダメ押しの一撃だ。

「ねえ、床が硬いわ。この意味分かる?」

 とびっきり艶やかな笑顔でそう言う。

「は、はい! お座り下さい!」

 あはは、一号は思った通りに動いた。ここまで来ると誘引も愉快痛快だ。

「いい子ね」

 そう言いながら一号の背中に座る。この瞬間はとても楽しい。


 観衆も完全に私の虜になった。近寄るだけでヤバいのにこんなものまで見せつけたのだ、人間なら一溜まりもない。


「さあ、みんな。私の為に動いてね」


 全員に幻惑をかけるような笑みを投げかけてやった。


 情報収集させてる間、残った奴らにマッサージでもさせて気まぐれにイジってやろう。

 丁度いい休憩時間になりそうだ。











 ああ! それにしてもあんなセリフは苦手だ!

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