Espionage5 誘引

 さーて、地下にも人間の歩哨だけだ。楽しみが出来たとは言えつまらんなぁ。仕方ない、誘引するか。


「オペレーター、誘引やるわ」

『おお、いいですねぇ』

「……通信切ってもいいか」

『えー、つけておいて下さいよ』

「なんで毎度毎度コレを見たがるんだ」

『それはもう堪らないからですし……』

「ですし?」

『誘引の動画、再生回数凄いんですよ』

「うわ、分かってたけど最悪だな、お前」

『いいじゃないですか減る物でもないですし』

「まぁそりゃそうだが」

『売上で何かおごりますよ』

「そうかい」


 私のいう誘引ってのは言ってみりゃサキュバスのそれだ。しかも雄だろうが雌だろうが否応なしに誘惑出来る。はっきり言って人間相手ならこれで封殺だ。

 何処でやっても効果はあるがまぁ一番効果を出せるのはオーソドックスに「風呂」だ。シャワーでもいい。


「このフロアにそれっぽいのは……まぁまぁあるな」

 よし、一匹捕まえて虜にするか。そこから蔓延させればいい。あんまり誘引自体やりたくないがやるなら徹底的にやる。


「オペレーター、歩哨の情報は?」

『その階は何故かアクセスしにくいんですよね、おっと出ました』

「しにくいって言う割には早えよ」

『難しい訳じゃないですからね』

「はー変態だわ。ん? やけに多いな」

『性別識別もつけましたが雄ばかりですね』

「誘引ガッツリ効くのは雄だから助かるが」

『この量は動画映え確実です』

「はぁ、仕方ない。やる以上やってやるよ」


 シャワールームに向かい、歩哨がシャワールームに入る様に仕向ける。私は天井にぶら下がって歩哨が来るのを待つ。本当に吸血鬼みたいだな。


「誰かいるのか? 居ないならシャワー止めとけよ、全く」

 獲物発見……ここまで来ると私もニヤついてくる。


「居るのは私。イイコトしましょ?」

 一瞬で歩哨に抱きつき、蠱惑的に言葉をかける。このシャワールームに入った時点でコイツは狩られる側だ。


「ぐ、貴様何者……っ!」

「そんな事どうでもいいじゃない、ねえ?」

「そんな誘惑で騙される……とでもっ!」

「言ってる事とやってる事が別々よ? 素直になりなさい」

「あ……がっ……ああ」


 はい、一人狩り終わり。

 コイツに命令すればこの階は私の物だ。












 ――ああ! もう! あんなセリフ言いたくねぇ!

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