第156話

 汀怜奈は、生唾をごくんと音を立てながら飲み込んだ。


 『凪の海のようなギター』


 意味はさっぱりわからないが、どうも自分が求めているものにたどり着く重要なヒントであることはなんとなくわかった。その言葉が、魔法使いの呪文のように汀怜奈の頭の中を駆け巡る。


「ねえ、じいちゃん。その時ばあちゃんのお腹の中にいるのは、おやじだよね」

「ああそうだ」

「親父はおばあちゃんのこと覚えている?」


 おばあちゃんというのは佑樹の父の母親である。

 会うこともなかった母親の話しに、佑樹の父親は佑樹とはまた違った感慨にふけっていたようだ。神妙におじいちゃんの話を聞いていた佑樹の父は、佑樹の問いに我に返ると、大きなため息をついて返事を返す。


「写真では見たことあるけど…まったく記憶にございません」

「そうなの…でも、いつ、どうして亡くなっちゃったの?」

「だから、まったく記憶にないんだって…。じいちゃんだって教えてくれないし…」


 じいちゃんは、またゆっくり話し始めた。

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