第64話
京都の泰滋は、ミチエから送られてきた手紙を手につぶやく。
「本当に、面白い子やな…」
手紙は約束通り写真が同封されていた。白い鉢巻に白のシャツ、そしてブルマー。スラリと伸びた健康的な足に足首までのソックスと運動靴。活発に明るく笑う女子高生。しかしそれが、8人ほど写っているのだ。どうも何かの運動大会に入賞した記念撮影らしい。
『先日体育祭で、友達の父兄に撮って頂いた写真です。私だけ映っている適当な写真が無いのでこの写真をお送りいたします。どれが私であるか、当ててみてください。ミチエ』
泰滋は8人のうちの誰がミチエであるか、あえて突っ込んで聞くつもりはなかった。そんな質問は意味が無いような気がしたのだ。泰滋は苦笑いしながら、ミチエは誰であるか目星を付ける。それは、根拠のある推察と言うよりは、この子であって欲しいという願望意外なにものでない。
この子であって欲しいが、しかしたとえその子ではなくても、自分が手紙を書く理由に、その子でなければならない理由はない。あくまでもこれは自分の訓練なのだから。
実際のところその日以来、泰滋の手紙のペンのスピードが速まり、筆圧が高まったのであるが、本人は自覚していなかったようだ。
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