第50話
観光バスによる嵐山見物から戻った千葉女子高の一行は、旅館に帰ってくると、部屋にも戻らず食堂に集合した。
若い彼女達だ。身なりを整えるより、まず飢えたお腹を満たすことが優先される。引率の先生の号令で、彼女たちは一斉に食事にかぶりつく。食器の音、談笑の声、牛乳を取り合う生徒たちの嬌声。食堂は阿鼻叫喚の谷と化している。
仲良し4人組もしっかりと阿鼻叫喚の一翼を担っているのだが、ミチエのノリだけ少しテンションが低い。アオキャンが、そんなミチエの様子に気づいた。
「どうしたのみっちゃん。元気ないわね」
「べつに…」
ミチエが軽く受け流すが、感の良いオダチンもそんなミチエの様子を見逃すはずがない。
「みっちゃんは文通相手に会えなかったのが、残念なのよね」
「べつに、そんなことないわよ」
「せっかく焼きハマグリ持ってきたのにね」
アッチャンがミチエいじりに参加して来た。
「でも、失礼よね。1カ月も前からお知らせしているのに、来ないなんて…」
「用事があるなら、仕方ないじゃない」
「あらあら、みっちゃんらしからぬ殊勝なお言葉」
「京都の風に吹かれているうちに、舞妓さんに変身しちゃったのかしら」
忙しく箸を動かしながらも、3人娘のみっちゃんいじりは果てしなく続く。
「おい、そこの4人」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます