第50話

 観光バスによる嵐山見物から戻った千葉女子高の一行は、旅館に帰ってくると、部屋にも戻らず食堂に集合した。


 若い彼女達だ。身なりを整えるより、まず飢えたお腹を満たすことが優先される。引率の先生の号令で、彼女たちは一斉に食事にかぶりつく。食器の音、談笑の声、牛乳を取り合う生徒たちの嬌声。食堂は阿鼻叫喚の谷と化している。

 仲良し4人組もしっかりと阿鼻叫喚の一翼を担っているのだが、ミチエのノリだけ少しテンションが低い。アオキャンが、そんなミチエの様子に気づいた。


「どうしたのみっちゃん。元気ないわね」

「べつに…」


 ミチエが軽く受け流すが、感の良いオダチンもそんなミチエの様子を見逃すはずがない。


「みっちゃんは文通相手に会えなかったのが、残念なのよね」

「べつに、そんなことないわよ」

「せっかく焼きハマグリ持ってきたのにね」


 アッチャンがミチエいじりに参加して来た。


「でも、失礼よね。1カ月も前からお知らせしているのに、来ないなんて…」

「用事があるなら、仕方ないじゃない」

「あらあら、みっちゃんらしからぬ殊勝なお言葉」

「京都の風に吹かれているうちに、舞妓さんに変身しちゃったのかしら」


 忙しく箸を動かしながらも、3人娘のみっちゃんいじりは果てしなく続く。


「おい、そこの4人」

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