第35話
届いた手紙が12通を越える頃になって、ふとミチエは手紙を送ってくれるこの青年がどんな青年なのだろうかという関心を持つようになった。興味の対象が、手紙の内容だけではなくその書き手にも湧くようになって来たのだ。
考えてみれば月に3通程度の一方的な手紙とはいえ、男性である相手の考えや気持ちを読み聞きすると言うことは、自分にしてみれば同じ男性と毎月3回デートをしているようなものだ。当時の女子高生では考えられない経験だ。
ミチエは、手紙の文字を改めて見直した。筆圧が低く流れるような文字。それでいて粗雑には書かれてはいない。感情のほとばしりを記すというよりは、静かにゆっくりと語るような温厚さを感じさせる。
この手紙を書いている青年に会ってみたい。そんな想いが、自然と湧いてきた。しかし、想いは湧くものの、相変わらずミチエは忙しさを理由に、返事も出さない。青年からの手紙は積み重なり、年が明け、冬が過ぎ、そしてミチエも3年生になった。
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