149_描き続けること

一面には子供のころの僕が描いてあって

一面には生きていた頃の親が描いてあって

一面には友人とか曖昧なものが書いてあって

一面には背けたくなる気味の悪いものが描いてあって

一面には真っ白で何も描いていないものがあって

天井はずっと先で明るいのに暗くて届かない見えない



これが僕の世界

これから過ごす僕の世界



新しいことを覚えようとして

その真っ白な一面に描こうとする

新しい事なんてたくさんあるから

すぐに埋まってしまってさ

なんとか描きたい衝動を抑える

ふと冷静になってみると

飛び散った絵の具が他の面を汚してた事に気づいて

汚れてしまったのだからちょっとくらい

はみ出してもいいだろうなんて思ったりして


子供のころの僕を浸食して描く

生きていた両親を侵食して描く

思い出せない人を侵食して描く


本当なら背けたくなるような一面を

塗りつぶしてしまえばいいのにって

でも塗りつぶすのが怖いと思ってしまう

普段から見てない思い出したくないものなのに


増える描きたい衝動と絵の具が増えてきて

天井に向かって描こうとして筆を振るう

自分が汚れてしまうのに振るう

天井は相変わらず綺麗な真っ白で真っ暗だ


真っ白だった一面が脆いことに気づいて

この先は何だろうと穴をあけようと

なれない暴力で自分が傷ついてもなお



ようやく空いた穴は真っ暗だ

天井の綺麗な真っ暗とは違う

また背けたくなるものが増えてしまった



相変わらず描きたい衝動と絵の具は増えるばかり

でももうかけるところがない

子供のころの僕はもう見えない

生きていた両親の顔は見えない

友人なんて僕にいたんだろうか


ようやく僕は背けたくなる綺麗な壁に筆を振るった



綺麗な絵が描けた

これこそ僕が描きたかったものだ

これが最初からできたならどれだけよかっただろうか

残ったのはこの絵と後ろの真っ暗な穴



あとはもう知らない


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