第47話 Darkness
「Rito今日暇?」
「暇だけど何?」
「合コン行かない?」
「お前また?」
「いいじゃん、行こうぜ」
「あー......じゃあ、行く」
別に合コンに行きたいわけじゃない
高校時代は割と大人しく過ごした
でも大人しくしたからって
何かいいことがあるわけじゃない
ここ最近、3次元にどっぷり浸かってて
5次元世界にいたことも
特別missionも
全部幻だったんじゃないかって気すらする
だったら3次元に浸かるしかない
「よし、じゃあ後でな」
「おう」
普段は週6日でバイトしてるんだ
休みの1日ぐらい遊んだって
バチは当たらないだろう
ふと目をやるとmission mobile
やっぱり幻じゃないか
どうやって進めてくんだよ
夜
「カンパーイ」
はじめて会った人たちと
何に対して乾杯してるのかも
よく分からないが、合コンはノリが命
盛り上がらなければ
見ず知らずの他人同士
その気まづい空間を
いかに気まづさを感じずに過ごせるかが
合コンの鍵だ
「今日の子たちレベル高くね?
俺、隣のAsumiちゃん狙いだから
お前、絶対に手を出すなよ」
「わーかってるよ」
今日の合コンは成功と言えるだろう
居酒屋のあとにカラオケにまで発展した
カラオケまで来ると
今日はじめて出会った人たちの集まりとは
思えないぐらい打ち解けている
疲れたー
1人部屋を出る
後ろからついてくる子が
えっ、Asumiちゃんだ
「何してるの?」
「別に、疲れたから」
「ねぇ、今からどっか行かない?」
Asumiちゃんに絶対手出すなよ
「.......いいけど」
「やった!」
「どこ行く?」
「俺んち来る?」
「行く!行く!」
来るのかよ
誘った俺も俺だけど
最近思う、また中学に戻ったなと
結局いくつになっても
やってること変わんねぇ
一応、彼女らしき子もいるんだけど
彼女らしき
好きか嫌いかと聞かれたら好きに入る
すっごく好きかと聞かれたらそうでもない
で今、合コンではじめて会った
しかも親友が好きになった子が
俺の家にいる
ほんとどうしようもねぇ
また抜け出せねぇ
二ツ木先生.....
どこ行っちゃったんだよ
Rei
あっ、河原先輩
河原先輩、テニスサークルなんだ
花道を抜ける一番最後のとこで立ち止まる
「あれ、Reiちゃん
この学校に入ったんだ」
「そうなんです」
先輩を追いかけて補欠で合格しましたとは
言えない
「良かったら、うちのサークルのチラシ
持っていってよ
あっ、でもReiちゃん
バイオリンやってるから
運動は基本禁止だったよね」
「あっ、いえ、もらいます」
確かに運動は今まで制限してきた
特に球技系は
今まで何があっでも
バイオリンだけは続けてきた
コンクールも出て
いい成績もおさめてきたと思う
バイオリニストになるために
音大を目指していた時もあった
今もまだ諦めたわけではない
それに次のコンクールで入賞したら
音楽事務所から
バイオリニスト4人でグループを作って
CDを出さないかって話ももらっている
ずっとやってきた私からしたら
願ってもいないチャンス
だからサークルには入らないのがきっと
正しい答えだろう
「今度見に行ってもいいですか?」
「えっ、来るの?俺はいいけど」
見に行くだけだもん
いいよね
だって先輩が卒業してから1年間
先輩に会うことだけを夢みて
ひたすら勉強頑張ったんだから
見に行くぐらいバチは当たらないよね
Haru
カチャカチャ
大学に入ってようやく手に入れたパソコン
今日も
ネットゲームを楽しむ
見ず知らずの人と協力して進めていく
3次元のゲームはこんな感じか
俺ならもっとすごいのができると思って
自分でサイトを作った
自分でプログラミングしたゲームを
ネットで公開していたら
いつの間にかアクセスが集中して
つい先日ゲーム会社から声がかかって
バイトするようになった
大学生のバイトにしてはいいお金だった
とにかくお金が必要なんだこの世界は
来年、弟のRikuは高校受験を控えている
塾代やら学費やらとにかくお金が必要だ
お金さえあれば何でもできる
反対にお金がなければ何もできない
作業をしていると
一つのメッセージが届く
Reincarnation様
Reincarnation 俺のネット用の名前だ
誰だ?
Reila
美大に入って好きな絵を描きまくるって
思ってたけど気づいた
ここに来たら皆当たり前のように絵が上手い
上手いという普通の表現を超えてるくらい
勘違いしていた
絵を描き始めたのは最近だし
美術部にいた時は部員は基本2人か3人
そこで上手いと言われていたとしても
狭い世界の中でのこと
バレーの時も思ったけど
上には上がいる
たまたま描いた絵が入賞して
先生から推薦をもらえて
なんとか入れた大学
個展をいつか開くっていう夢があったけど
あっという間に打ちひしがれる
入学式にたまたま隣に座った
Nanaと仲良くなって
今日彼女の家にお邪魔して気づいた
彼女の才能は比べ物にならないぐらい
すごいってことを
斬新だった、衝撃的だった
「この絵のテーマは何?」
「うーん、
いつも明確なテーマは決めてなくて
バーッと降りてきたのをもとに
仕上げていくから
心の葛藤かなぁテーマは」
降りてくるんだ
私はいつもテーマとか被写体とかを
細かく決めていたから
私にはこんな斬新な絵は描けない
すごくショックだった
「ご飯できたよ」
「うん、ありがとう」
彼女も私と一緒で1人暮らしだった
ただ違うのが
彼女の家は貧しいみたいで
仕送りもなければ
学費を払うお金もないらしく
一度は美大を諦めたらしい
それでも諦められなくて
画廊でアルバイトをしている時に
雇ってくれた人に才能を見込まれて
学費を出してもらったという
今はアルバイトしながら少しずつ
返しているらしい
それに比べて私は学費も出してもらってるし
仕送りも十分すぎるぐらいもらってる
彼女とは本気度が違う
それだけじゃなく、彼女は性格も良くて
なんというか完璧だ
彼女には勝てない
はじめて嫉妬する気持ちを覚えた
Rei
「あっ、ほんとに見学来てくれたんだ」
「はい」
「見てるだけじゃつまんないよね」
「いえ、そんなことないです」
「ねぇ、Ryoちょっと来て」
「呼ばれてるから、行ってくるね」
「はい」
することもなく先輩と女の人とのやりとりを
ひたすら眺める
「やだぁ」
「えー、どうしよっかなぁ」
女の人の嬉しそうな声が聞こえてくる
それだけじゃなく
河原先輩の腕を慣れた感じでつかむ
今気づいた
先輩あの女の人と付き合ってるんだ
胸が痛い
「Ryo、ペアでやろうよ」
「いいよ」
「先輩、私もテニスやってもいいですか?」
とっさに言ってしまった
「えっ、大丈夫なの?」
「はい」
「知り合いなの?」
「うん、高校の後輩」
「そうなんだ
よろしくね私、Mikaって言います」
「はい、宜しくお願いします
Reiです」
「じゃあ、やる?」
「はい、お願いします」
球技なんてはじめてやった
でもあのまま見学していたら
先輩との距離は永遠に縮まらない
そんな気がした
少しぐらいなら大丈夫だよね
「泉さん
はじめてにしてはなかなか上手だよ
球技はじめてとは思えない」
「ありがとうございます」
「見学で終わるのもった いないぐらいだよ
でも、バイオリンがあるからね」
「あの私、正式に入ります」
Rito
またやってしまった
朝目が覚めたら
見知らぬ女性じゃなくて
昨日合コンで知り合った名前は.....忘れた
携帯を見ると
彼女から大量のメールと着信
面倒くさい、言い訳をするのが
なんて思ってると、また着信
仕方なく出る
「もしもし」
「Rito、今どこなの?」
「今、家だよ」
「うそ、昨日気になって見に行ったら
いなかった」
そりゃそうだ、帰ってきたの明け方だから
「今は、家にいるよ」
「今は?どういうこと?」
怒り出した
「ねぇ、どうしたの?」
タイミング悪すぎる
「今の声、誰?」
またこのパターンだ
この彼女とはこのパターンははじめてだけど
歴代の彼女とはこれを繰り返してきた
「面倒くせぇな」
「面倒くさいってどういうこと?」
「面倒くせぇは、面倒くせぇなんだよ」
「今からそっちにいく」
「今日は来なくていい」
このやりとりもはじめてじゃない
これでまた彼女とは終わりだ
ほんとにどうしようもねぇ
Haru
Reincarnation様
はじめて連絡します
あなたの活躍はネット上で
よく知っております
プログラミングの技術と能力は
相当だと思います
その才能をそのままにしておくのは
少しもったいない気がして連絡しました
お力をお貸しいただけないでしょうか
もちろん報酬はお支払いします
仕事内容はReincarnation様からしたら
簡単なことだと思います
暗証番号でロックがかかってる携帯の
ロックを解除してもらいたいのです
その中の情報を取り出したいのですが
なかなかできずに困っていました
報酬は15万でいかかでしょうか
まずはお手並み拝見ということで
チャットのやりとりだと
セキュリティの心配もあるので
もしご興味があれば下記のアドレスまで
お願いします
ではいいお返事をお待ちしています
Storm
何だ、このメール
なんかの罠なのか
携帯の暗証番号を解除する
俺からしたら楽勝だ
報酬15万
今のバイトも悪くはないが
あっちは頭を使う上に
ゲームが出来上がるまでに何度もテストを
繰り返してとにかく時間がかかる
1回で15万
しかも暗証番号を解除するだけで
弟の学費がいる
生活費も必要だ
カチャカチャ
Storm様
Reila
もうすぐ絵画コンクールがある
一応参加する予定だった
テーマは「夢」だった
締切りは1か月後
全く手をつけていなかった
描こうと思っても何も浮かばない
たまたまNanaもそのコンクールに
参加することが分かった
学校の画廊に
彼女のものと思われる描きかけの絵を
チラッと見てしまった
凄かった
感覚で描いているのだろう
彼女はいわゆる天才
Nanaの絵を見てから集中できない
どんなに頑張っても勝てない気がする
それとともに最近Nanaとの関係にも
距離を置くようになった
Reila、元気?
最近会わないけど、どうしてる?
コンクールの絵、順調??
はじめて彼女からのメールを無視した
Haru
ピピピッ
ほんとに振り込まれている
結局、仕事を引き受けた
報酬が振り込まれるまでは
何かの罠だと思っていた
今日が約束の報酬日
口座を確認したら15万が
ほんとに振り込まれていた
Reincarnation様
さすがです
やはりあなたはすごい
では、次の仕事の依頼です
次は、ある会社の財務システムに
入っていただいて
取り出してほしいデータがあります
この会社はある場所から不正にお金を
受け取っている可能性があります
ただ、はっきりとした証拠がなく
不正を暴くことができないでいます
今回もReincarnation様にお願いできればと
思います
今回の報酬は50万でいかかでしょうか
それでは、いいお返事をお待ちしています
Storm
この会社、めちゃくちゃ大手じゃないか
クリーンなイメージしかなかった、今まで
報酬は50万
この前の約3倍
引き受けるか引き受けないか、答えは一つ
Storm様
Rito
あれから彼女とは別れた
で、今また新しい彼女がいる
気持ちはない
俺はいつも自分からは声をかけない
誰のことも好きにならないから
声をかけることはない
向こうから寄ってくるんだから
俺の責任ではない
声をかけられたら断らない
ただそれだけ
たが、今回はじめてトラブルが起きた
彼女が妊娠してしまった
これは予想外だった
結婚する気は全くない
彼女も当然おろすという選択を
するのかと思ったら
予想外の返事がかえってきた
「私産みたい」
えっ
「いや、妊娠させたのは悪いと思ってるけど
おろしてほしい」
「いや、おろしたくない」
このやりとりを散々繰り返す
あと1週間でおろせなくなるという
時期にきた時に
彼女に何度もお願いして
ようやく同意をもらえる
彼女の親にも事情を説明して
めちゃくちゃ怒られた
当然のことだ
今まで散々遊んできた俺に
罰が下った
今、泣いている彼女と一緒に
病院に来ている
Rei
テニスサークルに正式に入って2か月
コンクールまであと1週間
先輩のことも好きだったし
もともとの入部の動機は
先輩と彼女が仲良くしている姿を
見るのが辛かったから
近くにいればいつか別れるかもしれない
そんな不純な理由からだった
でも今はテニスが楽しい
今まで思いっきり運動をしたことが
なかったから
その反動なのかもしれない
バイオリンも
もうすぐデビューの話もあったし
先輩と一緒のサークルにも入れたし
順調に思えた
バコン
バコン
ダブルスで打ち合いをしていた
その時
グギっ
痛っ
手をひねってしまった
痛い
試合を止めてもらう
「泉さん、大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
やってしまった
「今日は、見学します」
見学中もひねった指がズキズキしていた
Reila
コンクールまであと10日
全く仕上がっていなかった
このままじゃ参加することもできない
あれからNanaとは疎遠になっていた
Nanaは何も悪くない
悪いのは嫉妬なんていう狭い心を持つ私
はぁ
ため息をつきながら画廊の前を通りかかる
そこにはほぼ完成したと思われるNanaの絵
予想通り
いや、予想を超える完成度だった
しばらく彼女の絵をぼーっと眺める
次の瞬間
とっさに床に置いてある絵の具を手に持ち
バシャッ
バシャッ
Haru
今回の仕事が完了したことを伝えた2日後
朝、ニュースを見ていたら
俺が依頼された会社のトップの人が
不正取り引きの証拠が見つかったとして
捕まっていた
えっ、俺が情報を取り出したからだ
Reincarnation様
さすがです
ありがとうございます
先程約束の報酬を振り込みました
また依頼のメールをします
Storm
50万振り込まれていた
Rikuの学費を出してやれる
普段のバイトと今回の報酬でRikuを
高校に行かせることができる
これでいいんだ
捕まった奴は、不正を働いたんだ
捕まって当然なんだ
その不正を暴いた
正しいことをしたんだ
Rito
病院の待合室
彼女の手術を待っていた
彼女のかばんに数枚の写真
これって
まだ形にもなっていない
これから形になる予定だった子供の写真
楽しみにしてたんだ、ほんとに
改めて自分のしたことの責任の重さを
痛感する
ごめん
今までの自分の愚かさを悔いる
今さら悔いたところでどうしようもない
「手術無事に終わりましたよ」
看護婦さんに声をかけられる
見に行くと彼女はまだ
麻酔が効いているらしく眠っていた
Rei
グギっ
痛い
サークルが終わってからいつもは
そのまま飲み会という流れだが
今日はやめて病院に向かう
「結構強くひねってしまったのと
何かの衝撃で
ヒビが入ってますね」
えっ、ヒビ
「私、バイオリンやってるんですけど
これからも続けられますか?」
「うーん、バイオリンのことは
詳しくは分からないけど
治ってから弾いてみるしかないね
前と違和感を覚えるか」
「.....」
どうしよう、コンクール来週なのに
今回のコンクールに参加しなかったら
デビューの話はなくなる
コンクールで入賞することが
条件だったから
家に帰ってバイオリンを手にとる
痛っ
こんな手でできるわけがない
泉さん、大丈夫?
手を怪我したって聞いたから
ごめんね
俺が誘ったばっかりに
ううん、先輩のせいじゃない
入部するって決めたのは私
大丈夫です
少しひねっただけですから
Reila
バシャッ
バシャッ
無意識に絵の具の入った水を
Nanaの絵にかけていた
私.....
どうしよう
Nanaの大切な絵を
ふと周りを見渡す
誰も見ていないことを確認して
画廊を飛び出す
胸のドキドキが止まらない
どうしよう
どうしよう
私とんでもないことをしてしまった
Haru
Reincarnation様
あなたの能力、想像以上です
また依頼があって連絡しました
今回もあなたなら簡単だと思います
仕事内容はある会社に勤めている男性の
パソコンに入って頂いて
ネット口座の現金の履歴を
追ってもらいたいのです
前回よりも簡単なのではないでしょうか
この男性は会社のお金を横領している
疑いがあります
その証拠をつかみたいのです
今回は個人的に私が依頼してるので
報酬は前回よりもはずみます
100万でいかかでしょうか
宜しくお願いします
Storm
えっ、1回100万
前回の2倍だ
しかも前回より簡単な内容だ
個人的な依頼
この人に何か恨みでもあるのか
100万.....
俺の1年間の学費
やるかやらないか、答えは一つ
Storm様
Reila
コンクール前日
当たり前だけど、回復しなかった
それどころか
今後のバイオリン生命も怪しい
私バイオリン弾けなくなったら
何が残るんだろう
何も残らない
ピアノもバレエも途中でやめてしまったから
今さら頑張ったってプロにはなれない
そんなに甘くない
前日になってしまったけど
音楽事務所にメールをしなければ
お世話様です
泉です
実は.....
Reila
次の日
気が重いまま学校に行く
ほんとは休みたかった
でもやってしまった事実は変わらない
Nana、もう気づいたかな
気づいたよね
タイミングが悪いことに
目の前からNanaが歩いてくる
その表情からは彼女の感情は読み取れない
「Reila、おはよう」
「おはよう.....」
まだ気づいていないんだろうか
いや、気づいてる
彼女の持ってる大きな手提げには
あの絵が
Nanaを直視できない
うつむいていると
「Reila」
「ごめんなさい、それやったの私なの
ほんとにごめんなさい
謝っ て済む問題じゃないのも分かってる」
下を向いていて彼女の表情は分からない
「Reila だったんだ
正直ね、Reilaって聞いてショック
でもね、私もこの絵はいまいち
納得いってなくて
画廊に置きっぱなしにしてたの」
「何で、そんなに上手なのに」
「うーん、私の中ではこれはいまいち
だからコンクールに出すか出さないか
ずっと迷ってたの」
えっ、そうだったの
「Reila
この世界は厳しい
嫉妬する気持ちも分かる
私も過去に嫉妬したことがあるから
その気持ちよく分かる」
Nanaでも嫉妬することあるんだ
「ごめんなさい
私もう学校やめようと思ってる
絵ももう描かない
Nanaとももう友達でいる資格もない」
「学校やめるなんて言わないで
なんかね、Reilaが絵の具をかけて
絵がだめになったお蔭で吹っ切れた
もちろんはじめはふざけんなって
思ったよ
でもね、どこかほっとしたの
あぁ、この絵はもう出せないんだから
仕方ないって」
「.....」
「Reilaは絵を描くべきだよ
私にはない才能があるんだから
これからは正々堂々と勝負だよ」
Nana.....
Rito
麻酔から彼女は目を覚ます
「手術終わったの?」
「終わったよ
ごめん、さっき写真見た
ほんとにごめん」
「私の方こそごめんなさい」
「えっ」
「どうしてもRitoと付き合いたくて
友達にお願いして近づいたの
でも、Ritoの気持ちが
全然こっちに向いてないのが分かってて
なんとかしたくて
妊娠したら
振り向いてくれるんじゃないかって」
えっ
「ほんとはピル飲んでなかったの」
「そうだったんだ」
「怒らないの?」
「怒らないよ」
今まで女の子を散々傷つけてきた罰だ
今までそれだけのことをしてきたんだ
Rei
音楽事務所から返事が来た
残念ですが
今回の話はなかったということで
宜しくお願いします
泉さんの今後の活躍をお祈りしています
多分もう活躍できない
前のようにはバイオリンは
弾けない気がする
あの怪我以来
サークルには行かなくなり
いつしか先輩とも連絡を取らなくなり
月日だけが過ぎていく
Haru
仕事を完了した次の日
横領事件でニュースは賑わっていた
横領した男は自殺未遂を図ったらしい
えっ
これ俺が暴いたやつじゃないか
Reincarnation様
ありがとうございます
報酬、先程振り込みました
今までずっと悔しい思いをしてきましたが
ようやく前に進めそうです
あなた様の益々のご活躍を
お祈り申し上げます
Storm
これで全部終わったのか.....
口座を見ると確かに100万振り込まれていた
コンビニで立ち読みをしていると
週刊誌の見出しに
横領事件のことが書かれていた
有名な商社で
横領した男性は不倫をしていたらしい
不倫相手の奥さんの旦那さんもまた
同じ商社で働いていたらしい
その不倫がバレて離婚したみたいだ
ただ立場的なこともあり
不倫をしていたことも
離婚をしていたことも
伏せていたのだろう
でもそれでは気がすまない
奥さんを取られた男性は
ある人を雇って脅していたらしい
それに応じた男性は
だんだん自分のお金では回らなくなり
経理という立場を使って
会社のお金を横領したのだろう
その額は5000万
その奥さんを
取られた被害者の男性というのが
今回俺に依頼してきたStormなのだろう
はぁ
これで依頼はすべて終了
疲れたな
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