白い部屋 -悪神-
大福がちゃ丸。
白い部屋
目を覚ますと知らない部屋、殺風景で寒々しい真っ白な部屋だ。
俺は、床に裸で寝転がっていた、体の節々が痛い。
「何だここは?」
何でこんな所に居るのか記憶が無い、確か馬鹿どもと飲みに行ったのは覚えている、大体何で裸で寝てるんだ? 女も居ねぇのに。
確か、いつものように酒を飲んで暴れ、金が無くなったらそこらの爺を殴りつけていただいて、女をひっかけて……。
「いてて」
体を起こすと、一枚の紙が落ちているのが見えた、俺は手に取り見てみる。
『ここはあなたの家ではありません 暮らしますか?』
それだけ書いてある。
なんだこりゃ? ふざけてんのか? こんなもん帰るに決まってるじゃねぇか。
部屋をグルリと見渡すと、扉が一つ。
ここから出るしかないのか? ドアノブを握り回して開ける。
そこも同じような部屋、部屋の真ん中に何か置いてある。
中に入ると ガチャン と音が、背後からした。
慌てて、ドアノブを回すが、扉は動かない。
反対の壁にも、扉があるのでそこに進むしかなさそうだ。
広げてみると、花柄でピンク色、間抜けなピエロのような服だった。
そして、また紙が一枚。
『これはあなたの服ではありません 着ますか? 着ませんか?』
そんなもん、着るに決まっているだろう、バカじゃないのか? 俺は裸なんだぜ、こんな間抜けな服でも、服は服だ、無いよりましだ。
くそ、俺を連れてきた野郎はどこかで見て楽しんでいるのか? バカにしやがって! 見つけてぶっ殺してやる!
次の部屋に行く、部屋に入った扉は閉じられてしまった。
今度の部屋は、真ん中に腰くらいの高さの四角い柱が立っている。
テーブルのつもりだろうか、上にはパンが一つ置いてあり、また紙が一枚。
『これはあなたの食事ではありません 食べますか? 食べませんか?』
パンを見たとたん、腹の虫が音を立てた。
そう言えば、起きたのはさっきだがここに連れて来られて、どのくらいたっているのか?
俺は、パンにかじりつく。
だが、何度かじって腹に収めても、そのたびに腹が減っていく。
どういうことだこれは?
最後の一口を、腹に収めたが、それなのにめまいがしてくる。
「クソ……何だこりゃ、ふざけやがって」
悪態をつき、フラフラとよろめきながら次の扉に向い、扉を開け中に入る。
今度の部屋には、パイプで出来た安いベッドが一つ置いてある。
俺は、空腹とめまいでフラフラとしながら、そのベッドに横になり意識を失ってしまった。
また、何時間たったかわからない、一瞬かもしれないが……、目を覚ました時は、空腹は収まらずフラフラとしていたが、めまいは取れていた。
寝返りを打つと、ガサッと腰のあたりで音がする。
体を起こし、音のした物を見ると、やはり紙切れだった。
そこには、こう書かれていた。
『あなたはここで暮らしました 次の扉を開けますか? 開けませんか?』
なんだこりゃ? 俺が暮らしたって? 服を着て、パンをかじって、寝転がっただけじゃねぇか。
「行ってやろうじゃねぇか」
次の扉のドアノブを握り開ける。
「今度は何だこりゃ?」
部屋の中ほど山詰みにされている、これは写真か?
一枚を手に取り見てみる、子供の写真の様だ、裏を見てみる。
『この子供はあなたが川に突き落とした子です 殺しましたか?』
なんだ? もう一枚取る、中年のオヤジの写真だ。
『この男性はあなたに理由もなく暴力を振るわれた方です 殺しましたか?』
次は家族の写真。
『この家族はあなたのせいで事故にあいました 殺しましたか?』
おいおい……、やった事を思い出してきた、だが、誰にも気づかれていないはずだ。
見覚えのある男の写真、舎弟のヤスだ。
『この男性は山に埋まっています 殺しましたか?』
見覚えのある女の写真、俺から逃げようとした女。
『この女性は海に沈んでいます 殺しましたか?』
「おいマジか……何で知ってやがる」
手足が震えて来る、この俺がだ! 俺を閉じ込めたのは公安の連中か? いや、公僕何てこんなことはやらないだろう、この写真共の身内のモンか? ふざけやがって、何をしようとしてるのかわからねぇが、返り討ちにしてやる!
俺は、よろよろと立ち上がり、震える手で次の部屋への扉を開ける。
今度の部屋は、広かった。
いや、部屋なのか? 見渡す限り白い床と白い天井が広がっている。
壁が無い。
後ろを振り向いて、入ってきた扉を見る。
扉しかない、ド〇えもんのどこでもドアか? その扉も今閉じようとしている。
慌てて飛びつくが、間に合わなかった、ガチャンと音がし扉は閉じたとたんに姿を消した。
なんだこりゃ? 冗談にもほどがある。
足元に何かが這い上がってくる感覚がある、見てみると何か白いモノが何本も足にまとわり付くように這い上がって来ている。
「はぁぁああ?! なんだこりゃ!」
かすれた声で、追い払おうと力を入れるが、足は縫い付けられたように押さえつけられて、ピクリとも動かない。
俺の足をつかみながら、何かが這い上がってくる。
頭が、体が、浮かび上がってくる。
見たことがある、さっき見た写真の奴ら、何人も何人も重なり混ざりながら、瞳の無い黒い目で俺を見ながらうめき声を上げ、俺の体を這いあがってくる。
床に倒され、混ざり合ったバケモノ共に体中を押さえつけられ息をするのもつらい。
そんな俺に、声をかけてきたヤツがいる、バケモノ共に床に押し付けられた俺を見下ろし、面白いものを見るように。
白髪頭の細い爺だ、こいつか? こいつが俺をこんな所に連れてきて面白がってやがったのか? 俺はうめき声を上げて睨みつけるが、爺はニヤニヤと笑っていやがる。
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