八十階 003

 半ばからオレは恥ずかしくなってまともに読めなくなっちまった。

 だってオレの記録だぜ?

 目細野郎から見たオレの姿。

 恥ずかしかった。

 すこし息をつこうと思って顔を上げると、三杯目のオレンジジュースが宙に浮いている。

 準備のいいことだ。

 しゃくだったがオレは手に取る。

 美味しい。

 後で冷蔵庫を空けてレシピを見ておこう。

 絶対にキザ金髪には聞かない。

 弱みを見せたくなかった。

 キザ金髪はバルコニーに立って、外を眺めている。

 今なら突き落とせるんじゃないかとオレは思った。

 机からバルコニーまで十数歩ある。

 バカみたいに広い部屋だ。

 でもオレは足音を殺すことが出来る。

 キザ金髪はこちらに背を向けていて、気づかれない自信はあった。

 防刃アーマーをつけていたとしてもこの高さから落ちれば流石に死ぬ。

 耐衝撃アーマーをつけていたら分からないが、キザ金髪の体形から見て、装着している感じはなかった。

 装着すれば、ほんの少しであってもタイケイが変わっちまうはず。

 オレは悩んで結局やめた。

 目細野郎の手記を読み終えるまではあいつを生かしておこうと思ったから。

 それにあいつは沢山のことを隠している。

 例えば、目細のセンプクサキとか。

 オレはノートに目を戻す。

 次のページから少しの間は、継ぎ足されてるみたいでフシゼンに膨れていた。



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