エルフちゃんとの異世界探索記
黒狗
第1話 プロローグ
「俺、
「嬉しい。私でよければ彼女にして下さい」
姫野さんはそう言うと、頬を紅葉させて俺のことを見つめた。
俺も姫野さんのことを見つめる。
艶々した絹のような黒髪。
きめ細やかなガラスのような肌。
ぷるんとしたゼリーのような唇。
どこをとっても最上級。
例えるなら、三ツ星スーパーパティシエがつくる極上のスイーツ。
おいしそう……
「宮瀬君?」
姫野さんの言葉で我に返る俺。
危ない、危ない。姫野さんを見ていたら、あまりにおいしそうで思わずよだれがでてしまった。
ばれないようハンカチで口を拭ったが、気付かれていないだろうか。
俺の本性を知ったら、きっと彼女に嫌われる……
そう、俺は超級ど変態の高校生。
可愛い女の子を見ると、性的欲望が抑えきれなくなる難儀な性格を持つ。
この性格のせいで俺は、きゃっきゃ、うふふの普通の高校生活が送れず、人知れず女子を遠ざけて生活を送っているのだ。高校を卒業するまでは我慢しなくてはいけない。
そんな中、欲望を抑えて暮らす日々が続く中、俺は出会ってしまった。
姫野
今までに出会ったどんな女の子よりも可愛い。そしてとあることをきっかけに親しくなり、今に至る。
そして俺の告白は見事に成功だ!
こんな奇跡二度とこない。
慎重にいかなくては。
俺は雰囲気を壊さないように、ゆっくりと彼女の腰に手をまわす。
「あっ、ちょっと」
「駄目……かな?」
姫野さんは少し間をあけて、俺に言った。
「ううん。はずかしいけど……いいよ」
彼女は頬を紅葉させた。
そして顔を傾け、そっと目を閉じた。
全ては整った。
後は、後は……
心臓がバクバクいって、今にも爆発しそうだ。
俺はゆっくりと彼女に近づき、唇を重ねようとする。
もうちょっと、もうちょっと。
ついに、俺は!!!
と、思ったのもつかの間……
「あっ!」
その言葉と共に目が覚めてしまう。
夢落ちであった。
「はぁーーーーーーーーーーーーーー」
俺は大きくため息をついた。
まじ、ふざけんなって、あんないいところで終わるなんて……
俺は寝起きにも関わらず憤慨する。
怒りは俺自身にだ。
この慎重野郎。だから俺は今もなお童貞なんだよ!
俺なんかが姫野さんと付き合えるはずがなかったんだ。
もっと早く夢と気付けていれば、欲望マックスで攻めてキスくらいできただろうに。
「あっ」
俺はある名案を思いつく。
そうだ、今からもう一回寝て夢の世界へダイブすればいいのだ。
俺って天才じゃん!?
そんな都合よく夢の続きを見れるとは限らないのは百も承知だが、俺なら絶対できる。
やってやるさ。
だって俺は姫野 杏月花とキスがしたいんだ。
何度だってTRYしてやる。
と、決意を固めていると、声がしてくる。
「ちょっと、そこのお兄さん。危ないからそこをどいておくれ」
「ん? 誰だ、俺の欲望計画を邪魔しようとするやつは」と、声がした方向を見ると、そこにいたのは、いや、いらしたのは猫耳を持った女の子だった。
それもかなり可愛いくて俺のタイプ。
と、俺はなぜか道のど真ん中に突っ立っており、馬車の進路妨害をしているようである。
現在の状況が理解できないのだが、そんなことよりも女の子の猫耳のほうが気になった。
かなりの美少女で、本物と見分けがつかないほど精巧に作られている猫耳が彼女を可愛く見せるアクセントになっている。
撫でたい……撫でたい……撫でさせろぉおおおおーーーーー
「おにーさん。聞いているのかい?」
「あっ、ごめん、あまりにもその猫耳が可愛くてつい、我を忘れてしまいそうだった」
まずいまずい。余計なことをいって、猫耳少女に変に思われなかったかな……
とりあえず俺は道の端によった。
「ん? 何か気になることを言ったような気がするけど、まぁいいよ。道を開けてくれて、ありがとう、とお礼を言っておくよ。それにしても見かけない顔だね。どこから来たんだい?」
「どこって……夢の世界からか?」
俺がそう言うと、猫耳少女はかわいそうな目で俺を見つめる。
そして猫耳少女は心配そうな声で、
「それは余計なことを聞いてしまったようだね。ごめんよ」
「謝らないでくれ! そしてそんな哀れな目で俺をみるな。現実だけじゃなく、夢の世界でもそんな目で見られたら、俺は、俺は……」
「夢の世界? まぁ、あれだ。人生いろいろあるって。これでも食べて元気をだしなっ。生きてればいいこともあるからさ。それじゃあっ」
猫耳少女はそう言って俺に渡すと、馬車で走り去った。
なんかとんでもない誤解をされた気がする。
それにしても、現状が理解できない。
まだ寝起きで頭がフル回転していないこともあるが。
とりあえず俺は猫耳少女にもらった見たことがない果物らしきものにかぶりつく。
見た目はりんごに似ているが、桃のようにジューシーで甘みがあった。
果物を食べたら少し落ち着いた。
周りを見渡すと見たこともない大草原がどこまでも広がっている。
猫耳少女を乗せた馬車ももう見えなくなってしまった
ほんとここどこよ?
この年になって俺迷子。
って、いやいやいや。
これもどうせ夢でしょ?
と、俺はずいぶん前から気づいていたけどね。
だって、俺はベッドで寝ていたはずだ。だから大草原にいるこの状況はおかしいのだ。
これは夢が覚めたけど、まだ夢の中パターンだな。
夢だとわかっていれば、何も怖くない。
しょうがないから、この夢の世界を楽しんでやろうじゃないか。
俺はそれから猫耳少女が向かった方向へ行ってみることにした。
ワンチャン、あの少女と再会してムフフなことができるかもしれんしな。
しかし歩いても歩いても、風景が変わらない。
一体どこまで歩けいいのーとおもっていた矢先、殺風景な風景の中に一際目立つ大きな岩が一つ見えた。
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