EX【輝く時間】
いつもより歩きづらい足元に頼りなさを感じながら、美緒はゆっくりとしたペースで歩いていた。普段の移動から足腰を鍛えようと思っている美緒は、早歩きが基本のために他の歩行者を追い越していくのが普通だ。
徐々に夏の終わりに向かい進んでいく中で日差しも少し柔らかい。最も、まだ朝の九時にもなっていない時であり、徐々に暑くなっていくであろうことは想像に難くない。
(汗、あんまりかきたくないなぁ)
美緒はロングスカートを摘みながら思う。
いつもの自分が穿くものの中には、全く含まれていないもの。人生で初めて、スカートを穿いたことに緊張し、頬が自然と熱くなった。ひらひらして両足にまとわりついてくる感覚に慣れず、さらにスカートに合わせた靴を母親から借りたため履き慣れずに、バランスを崩しつつも何とか倒れずに歩いている。
(周りの女の子はこんなのいつも穿いてるんだなぁ……大変)
自分も、十五歳の少女でこういった私服はもってしかるべきなのにと思うと落ち込んでしまう。だが、バドミントンに捧げ続けた青春の反動なのだから仕方がない。その結果、幼い頃からの約束も果たせた上、人生で初めての彼氏もできたのだから結果オーライといったところだった。
(そう、なんだよね……彼氏……かれし……)
彼氏という単語を思い浮かべただけで頬が熱くなる。つい数日前まで恋愛の「れ」の字も自分の中では全く話題にならなかったにもかかわらず、今の自分には自分には好きな人がいて、自分を好きでいてくれる人がいる。
自分が今、着ている服も好きな相手に少しでも喜んでもらおうと思って、わざわざ買ったもの。自分では全く分からなかったため、バドミントン部の仲間にコーディネイトを頼んだほどだ。
コーディネイト時は自分ではないように錯覚するほど可愛く見えたものだが、今、見下ろしてみると自分にはもったいない服なのではないかと思い始めた。
(馬子にも衣装かなぁ)
歩き慣れない靴でも何とか目的地にたどり着く。駅に隣接しているバスターミナル。そこから出ている遊園地行きのバスに乗って、二人で遊園地デートというのが今日のプランだった。立てたのは、新米彼氏――遊佐修平のほう。恋愛に興味がないようにしか見えなかった男だけに、考えつくのは定番のことなのだろう。美緒の側からしても思いつくのはその程度であり、似たもの同士だった。
(後は……遊園地に行ったとして会話が続くのかってことよね)
前日の夜に今日のことを思い浮かべて、自分が遊佐と何を話せばいいのか全く思い浮かばなかった。妄想の中の自分は無言で遊佐の隣を歩き、遊佐もまた無言で歩いていく。ただ、手を繋ぎ、自分よりも斜め前を進んで引っ張っていくだけ。いくつか乗り物に乗り、食事をして、最後に観覧車に乗って遠くまで眺めてから帰る。
その間、無言。
「嫌すぎる……初めてのデートなのに……」
ため息混じりにバスターミナルの入り口から入って、まずは椅子を探す。嫌な想像と履き慣れない靴による疲れがすでにたまっていた。今日、どれだけデートに時間をかけるのかは分からないが、開始早々いきなり疲労で倒れるわけにはいかなかった。
時刻は八時四十分。待ち合わせはあと十分後。
(……さすがに早かったかな)
そもそもの待ち合わせ時間も、念のため早めに集まるかという遊佐の助言から十分早めている。つまり、二十分早く美緒は集合場所へと来ていることになる。
(うう。緊張してきた)
もう少しで遊佐に会うということに、体がこわばり頬が熱くなる。いつもバドミントンをするために体育館やスポーツセンターで二人で会っているというのに、全く別のことのように思えた。友達から借りた小さめのバッグに入れてあるスマートフォンを取り出して気を紛らわそうとしたが、いきなり電話がかかってきた。
「わひゃ!?」
美緒が上げた声に待合い場所にいる数少ない人達が美緒の方を向く。慌てて頭を下げてから改めて震えているスマートフォンに目を向けると、遊佐修平の文字がある。
少しでも緊張をほぐそうと何度か咳払いをしてから通話ボタンを押した。
「も、もしもし」
声は裏がえらなかったことにほっとすると、電話口から遊佐の声が届く。
『もしもし。朝比奈』
「おはよ。どうしたの?」
『おお。横、横』
何が横なのかと横を見ると、手を振りながら遊佐が近づいてきていた。呆気にとられてスマートフォンを耳から離し、傍に立つ遊佐を見る。
「おっす。実は十分前に来てたから、ブラブラしてたんだ。で、あっちから入ってきたらちょうど朝比奈が座ってるからさ。電話してみた」
「なんで電話なの?」
美緒自身によく分からない言動をする遊佐に頭が痛くなる。遊佐は全く悪びれずに「ただの気まぐれ」と答えた。さらに。
「朝比奈の変な声聞けたし。朝から幸せ」
遊佐のいたずらに振り回された形になった美緒は、羞恥に顔を真っ赤に染めて精一杯睨みつける。視線に怖がって後ずさりする遊佐を見ながら、内心ではかなり落ち込んでいた。
(なんで初デートの朝からいたずらされて驚かされないといけないのよ……あと、なんでTシャツにジーンズとか何の変哲もない格好なのよ。男子でも少しは服に気を使えばいいのに。遊佐に期待しないほうがいいのか)
遊佐の格好はこれまでに何度も見てきた、休日の私服と何ら変わりはなかった。デートだといって気合を入れた自分がばからしくなるほどに。
小学校時代からの約束を果たすためにバドミントンに打ち込んだ生活から解放されると、美緒の中に自分でも驚くほど「彼氏彼女」についての欲求が沸き上がってきた。これまで抑圧してきたことの反動なのか、自分でも乙女だと引くくらいの妄想が頭を横切っていく。バドミントンで鍛えた精神力でそれらの妄想を押さえていたが、やはり実現しても問題なさそうな部分は叶えたい。
今回穿いているスカートも、宮越に以前似合うと言われた記憶から穿いてみたいという思いも後押しして買うことを決めた。着飾るのも、彼女として彼氏である遊佐に可愛いと思ってほしいからだ。夏休みがあければ勉強と、合間に腕を鈍らせないようにバドミントンの練習をするといいう生活習慣になり、あまりデートをしている時間はない。高校になればまたバドミントン漬けの生活が始まる。
つまり、今回の遊園地デートは最初で最後のデートかもしれない。
(遊佐は分かってないのかなぁ)
ジト目で遊佐を見つめながら負のオーラを浴びせるが、遊佐は少し下がったまま美緒をなだめさせることに終始している。そして視線が美緒から外れ、はっとした表情で言った。
「あ、ほら。もう少しでバスが出るぞ。行こう」
「あっ……」
遊佐はいきなり美緒の手首を掴み、外に向かって歩きだした。履き慣れない靴に転ばないように気を使いながら手を引く遊佐に従う。握られた手首から伝わる体温は高めで、美緒もその熱が体に広がっていくかのようだった。
* * *
遊佐の頭には下調べという文字はないのかと思って、美緒は嘆息した。勢いに任せてバスの発着場へと足を踏みいれて、そのまま始発に乗り込んだことを止められなかった自分も仕方がないと思うことで精神の平衡を保とうとする。
美緒もいきなり手を掴まれて引っ張られたことに混乱していたが、すぐに止めようとした。しかし、しっかりと手首を握られていることや入り口で口論するのも見栄えが悪い。朝だけに少なかったが、人の目はある。
結局、美緒は遊佐に手を引かれるままバスに乗り込んだのだった。
「どうした? ため息ついて」
遊佐の問いかけに美緒はジト目で返す。何か怒っていることは分かるが、何に怒っているのかは理解できない遊佐は顔をひきつらせながら再度尋ねてきた。美緒は呆れているということを前面に押し出して告げる。
「遊園地は十一時からなのに、こんな早く向かってどうするのかなって思ってさ」
「え、そうなの? 十時からかと思った」
「時間くらい調べてきてよ……」
バスは三十分ほどかけて遊園地に辿り着く。つまり、今からだと一時間以上入り口のところで待つことになる。
待ち合わせを早く設定したのは、バスターミナルにある喫茶店で簡単な朝食を食べながら時間を潰そうと思ったからだった。その意思を遊佐に伝えるのを忘れていた自分が悪いのだと思うことで諦めをつけた。
「あちゃー。でもいいじゃん。一番乗りできるし。話しながら待ってようぜ」
「座る場所ないから立ってないと駄目なんだよ?」
「一時間と少しくらい大丈夫だろ。鍛えてるし」
遊佐はさらっと言って笑う。その笑顔に美緒は何もいう気がなくなった。確かに一時間くらい待つのはそれほど問題はない。日差しはまだ柔らかく、徐々に暑くなるとしてもその頃には遊園地の中だろう。唯一不安材料なのは。
(足、大丈夫かなぁ)
履き慣れない靴のまま一時間程度立ったままでいるのは大丈夫かと不安を覚える。いつものスニーカーなら問題ないだろうが、今はパンプス。少しサイズが小さめで、かかとの方が高くなっている。つま先の方へと重さがかかっている状態が長く立っていることにどう影響するのか分からない。
(大丈夫。初めてのデートなんだし。これ以上不満はなし)
そこまで考えて、美緒は遊佐が心配そうに覗き込んできていることに気づいた。同時に遊佐の問いかけに対して答えていないことに気づき、大丈夫と返していた。
* * *
バスが遊園地に到着し、一時間以上待ってから中に入る頃には美緒のふくらはぎはすでに張っていた。今まで経験したことのないような張りに顔をしかめるのを我慢する。遊佐にはできるだけ気づかれたくないという思いもあるが、せっかくのデートを不機嫌そうな顔をしたくはなかった。
(乗り物乗るだろうし……たまに座れるだろうからなんとか、なるかな)
入り口の前でずっと立っていたことで痛みだしたが、歩いていれば痛みは分散されるはず。さらに、バドミントンのように急激な動きではないのだから、大丈夫と自分を納得させる。
「遊佐は、どれ乗りたい?」
先ほどから周囲を見回してどこに行こうかと胸を踊らせているのが見た目で分かる遊佐に笑いながら問いかける。遊佐は「そうだなぁ」と前置きした後で指さした。
「あれかな」
指の先に見えたものに、美緒は顔がひきつる。
それは木でできた建物。入り口は階段を上った先にある。通常の建物の一階と二階の中間くらいに位置しているゲート。看板には『巨大迷路』とシンプルに内容を表す文字が書かれていた。
(よりにもよって歩くやつなの……)
「俺、実はさ。遊園地って初めてなんだよなー」
「え!?」
「そこまで驚くことか?」
巨大迷路に入ることを躊躇していた美緒だったが、遊佐の言葉を聞いて我に返る。大きな声を出してしまったことに恥ずかしさを感じながら、遊佐は続ける。
「ずっとバドミントンしてたからさ。父さん母さんが逆に遊園地に一緒に行こうって誘うくらいだったんだぜ。でも、俺がバドミントンしたいってこと分かってくれて、尊重してくれたんだ。だから、土日は基本的にバドミントンするか、友達と遊ぶかしてたんだ」
「……そんな小さな時からバドミントン馬鹿だったのね」
「まあな。だから、時間ないだろうけど、できるだけ順番に行きたいんだ」
巨大迷路は入り口から少し進んだところにある。アトラクションの一つ目。美緒は理由に納得行って、覚悟決めた。
「うん。いいね。順番にいこうよ」
「ほんとか。ありがとう! じゃあ、行こう!」
遊佐にまた手を引かれていくが、速いために自然と足に負担がかかる。それでも美緒は顔には出さずに遊佐と共に巨大迷路の入り口へと入っていった。
* * *
巨大迷路巡りから始まり、美緒と遊佐は次々と乗り物に乗っていく。迷路をクリアするのに四十分かけてから次には水の上を進んでいき、最後に高い位置から落ちていく急流滑りに乗り、池の周りを回る電車。タコの触手の先が乗り物になっているものなど、乗り逃さないように進んでいく。間には中がガラス張りになっている館や、定番のお化け屋敷などもあり、楽しみ、怖がりながらも二人で歩いていく。
そんな一時に美緒は心が穏やかになっていった。初めてと言ってもいいくらいの、バドミントン以外での友達との外出。人生初の彼氏とのデート。足の痛みも忘れて歩みを進めていく。
(いいなぁ……こういうの)
遊園地内を次々と遊び続けて、昼食を食べる時になってようやく過去を振り返る。美緒を席に座らせて、遊佐は食事を取りに行っていた。時間は正午になり、親子連れや彼氏彼女という組み合わせが多くなってきていた。これからピークになり、なかなか乗り物にも乗れなくなるのだろう。
(結果的に、早く来てよかったのかもね)
乗り物の制覇まであと半分。後半には美緒が苦手なジェットコースターやゴーカートが控えている。ゴーカートはまだしもジェットコースターは乗らなければいけないかと思い、少し気が重くなる。
「持ってきたぞー。って、どうした? 疲れたか?」
手に焼きそばを二つ持って、遊佐が立っていた。美緒の顔に陰りがあるのを見て疲労したのかと思ったのだろう。当たらずとも遠からずの推測に苦笑して、美緒は素直に言う。
「ううん。この後のジェットコースターを想像すると気が滅入っただけ」
「ジェットコースター乗るの?」
「へ?」
美緒の言葉に即座に返してきた遊佐。反応の早さに美緒は変な声を上げてしまう。心なしか顔が青ざめていて、大きな体を小さくして震えていた。
「もしかして遊佐。ジェットコースター苦手なの?」
「ああ。ちょっと高所恐怖症気味で。急流滑りとかくらいなら何とかなるんだが高かったり回ったりは無理」
「……じゃあ、観覧車も無理なんだ」
「あれは高さがオーバー」
遊佐の意外な弱点に美緒は笑ってしまう。遊佐は笑われたことで不機嫌な顔になり、二人分の焼きそばをテーブルに置くとすぐに食べ始めた。美緒も謝ってから焼きそばに口を付ける。
(遊佐の意外な一面か)
自分が知らなかった遊佐。遊園地を子供のようにはしゃいで楽しむところから、ジェットコースターや観覧車が苦手というところまで。美緒の知らない遊佐修平が前に座っている。バドミントンプレイヤーとしてではなく、素の遊佐が。
今まで接していた人物像とはまた別の一面を見ることができて、美緒は嬉しくなる。
(あと、どれだけ見れるのかな?)
期待に胸が膨らみ、気が緩む。
それが、きっかけになってしまった。
「――っ!?」
急に痛みが走った左ふくらはぎに手を当てる。テーブルに勢いよく突っ伏してしまい、額をぶつけてしまった。それでも額の痛みに構えないくらいのふくらはぎが痛みに悲鳴を上げないだけで精一杯だった。
「ど、どうした!?」
慌てて遊佐は美緒の足下にしゃがむ。美緒がさすっている左ふくらはぎを見ただけで、ある程度状況を把握したのだろう。遊佐はテーブルの上に顔を上げて美緒に尋ねる。
「いつから?」
遊佐の問いに少しの間を置いて、美緒は素直に言った。
「ん……ここに入る直前、かな。ずっと立ったままだったから、痛くなっちゃって」
「馬鹿。先に言えばまず休んでから遊んだのに」
遊佐はまたテーブルの下に潜るとふくらはぎにさわりマッサージを始める。美緒も突っ伏していた額をテーブルから離して体勢を整える。遊佐を見下ろす形になる美緒は、どこかで見たことのある光景だと思い、すぐにため息をついた。
(何度、遊佐にマッサージされた気が済むんだろ、私)
同じことを繰り返す自分に呆れてしまう。今回は履き慣れない靴が主な原因だろう。しかし、全国大会も終わっての気の緩みと、夏の暑さに体力も削られていたに違いないと結論づける。それでも、痛みがあっても美緒は止めたくはなかった。
「先に言えば良かったって。言ったよね」
「ああ。俺が話しづらい雰囲気作ってたならすまん。初めてだから浮かれてたんだ」
遊佐が申し訳なさそうに発する言葉に首を振る。ふくらはぎを見ている遊佐には見えないだろうが、頭を振ったことにより、体の動きや空気の流れの変化で伝わったと考えて、続けた。
「私も、止めたくなかったんだよ。遊佐と遊園地。楽しみにしてたし」
言葉にした瞬間、頬が熱くなる。自分の顔は今、鏡で見たくないほど赤く染まっているだろうというのは想像に難くなかった。言われた遊佐も驚いて見上げると、美緒の顔を見てから頬を赤くする。
「え、なんで赤くなるの?」
「いや……照れてる朝比奈。凄く、可愛くて」
「――っっ」
遊佐から可愛いと言われて頭が爆発しそうになる美緒。お互いにクールダウンのためか遊佐は俯き、美緒は上を向く。しばらくの間は無言でマッサージをする側とされる側に分かれた。十分ほど過ぎたところで徐々にレストランにも人が集まってくる。少し昼の時間を外していた来場者がこぞってやってきていた。テーブルの下にもぐってスカートから伸びた足をさすっているという状況を他人に見られると誤解をうけそうだと判断して、美緒は「もういいよ」と遊佐を美緒の横へと立たせた。
「そろそろ行こうか」
「ああ。楽になったか?」
美緒の言葉に遊佐は足の様子を聞く。ゆっくりと立ってみて軽く動かしたが痛みは特になかった。
「うん。大丈夫。元々、運動で痛めた訳じゃないしね」
「そうだけど……癖になってるのかもな。注意しろよな」
次の瞬間、美緒は動きを止める。差し出されてるのは遊佐の左掌。そこにあるのが自然な形と言うかのごとく、掌の上に重なるものを待っている。美緒はゆっくりと右掌を重ねて、握った。
「ゆっくり歩こうか」
「……うん」
伝わる体温が暖かく、美緒の手から全身を満たしていくようだった。恥ずかしくむずがゆく、内からくる衝動に走り回りたくなるが、押さえ込む。試合の時は痛みや弱さを押さえるのに使った精神力がこんなところまで役に立つとは。しかも、押さえているのは、自分の中の嬉しさ。幸せだと思う気持ちだ。
(やばい……嬉しくて、どうにかなりそう)
自分を支えつつ導いてくれる遊佐の手。同年代にもかかわらず自分よりもよっぽどしっかりしてそうな大きな掌。自分を包み込んでくれるかのように、守ってくれるように握ってくる。斜め前を歩いているためはっきりと顔は見えないが、頬が真っ赤になっているのは見えた。自分と同じく照れているのだろう。
(こうしてられるのも、少ない期間だし。その分、精一杯楽しもう)
お互いにスポーツ推薦は決まっているが、勉強をおろそかにするつもりは美緒にも遊佐にもなかった。夏休みが終われば実力を落とさないようにバドミントンもするし、勉強も成績を今よりあげるために頑張る。そうなれば、今日みたいにデートをしている余裕などないはず。一緒に勉強やバドミントンができたとしても。
だからこそ、こうした時間を愛しく思い、一つ一つかみしめていくことこそが大事だと美緒は思えた。
「これからもよろしくね」
小さく、遊佐に聞こえないように呟く。
聞こえてしまえば、また恥ずかしさに気持ちが浮ついてしまうから。
燦々と光る太陽の下、二人は遊園地をゆっくりと進んでいった。自分達なりの速度で。
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