殺しの美術

ひぐらしゆうき

血の芸術家

第1話 血の芸術家

 4月9日


 私はいつものように早朝の6時に目覚める。

 ベットから起き上がるとまずはパジャマから正装に着替える。

 白いシャツに黒いジャケット、黒いパンツという出で立ちだ。

 洗面台の前で髪を整える。最近少し髪が伸びてしまった。気軽に散髪に行けないと言うのも面倒なことだ。

 キッチンに行くと3万円のコーヒーメーカーに電源を入れる。上部の蓋を開けてブラジル産のコーヒー豆を入れ、フィルターをセット、水タンクに水を入れスイッチを入れた。

 コーヒーを淹れている間に食パンを取り出し、トースターで焼く。

 そうこうしているとコーヒーが入る。

 サーバーを手に取り、コーヒーカップに注ぐ。

 湯気とともに昇ってくる香りを嗅ぐことで私の頭は覚醒し、頭が冴える感覚を確かに感じることができる。

 チンと音を立てて、トースターがパンの焼けたことを知らせる。

 私はパンを皿に取り出し、ダイニングでゆっくりと食事をとる。


 朝食を済ませると私はジャケットから写真を取り出した。

 写真には20代くらいの茶髪のチャラそうな男性が写っている。

 ネットワーク関連の事業で今爆発的に伸びている株式会社サーマニックの若手社長、蒲田蓮也。年齢27歳、派手で女好き。常習的に女を住処である東京の一等地に立つ高級マンション最上階に連れ込んでいる。裏では悪い噂が囁かれていて、この男に良い感情を持っている者はいないと言う。そんな彼が、今日私の作品になることになる男だ。


 私の顔には笑みが浮かんだ。

 新たな作品を創るときはいつも笑みがこぼれてしまう。私の悪い癖だ。


「さて、行きましょうか?私の芸術の1ページを彩る素晴らしい作品を創りに」


 そう、この私こそが「血の芸術」を追求する稀代の天才芸術家、赤宮康介である。

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