第30話 母親の秘密
大樹寺と聞いてから、言葉をあまり話さなくなったギルシェ。
そんなギルシェにジンは問う。
どうして大樹寺と聞いて黙るのかと。
何か知っているのかと。
しかしジンの問いにギルシェは答えようとしなかった。
「はあ〜っ。別に答えたくなければいいですけど‥‥‥。だったらこれには答えてください。貴女達は何者なんですか?魔法力てなんですか?」
ジンがそう言うとギルシェは目の前にあるソファにゆっくりと自分の腰を落とした。
そして口を開いた。
「私達は異世界を魔物、魔人から護る為に結成されたチーム」
「異世界救助隊‥」
「そう、異世界救助隊。そして我々はその内の一つのチーム、ブルードラゴン」
「ブルードラゴン?あの青い機械の様な龍ですか?」
「ああ、そうだ」
ギルシェはそう無表情の様な顔つきで、ジンの問いに答えて行く。
「では、魔法力とはなんなんですか?俺はいままで自分の力を超能力と思ってました」
「超能力?‥ああ、この世界の魔法力のことか。魔法力、それは何処にでも存在する力だ。ただ、その魔法力も薄い所と濃い所がある。そしてこの世界は極端に魔法力が薄い。ないと言っても過言じゃない」
「この世界は魔法力が薄い。だったら俺のこの力はなんなんですか!」
ジンが最後の辺りを強調しながら話すと、ギルシェはやはり無表情の様な顔つきで、わからないと言ってきた。
そして今度はギルシェがジンに問う。
「お前は何者だ?何故その様な力を持っている?」
「あっ!それ、私も聞きたい!」
いつのまにかジンの目の前にあるソファに座り、舞が出してくれたジュースを美味しそうに飲みながらミュウが言ってきた。
「お前、いつのまに‥‥‥。俺が何者か?俺はこの世界の人間だ。これの力は生まれついての力だ」
「生まれついての力?」
「ああ、そうオヤジと母さんが言っていた」
「ではお前の親は‥‥‥」
ギルシェが言いかけた時、リビングのドア開いた。
「ジン、舞、お客さんが来ているの?だったら何か出して‥‥‥」
入って来たのはジンと舞の母親、茜。
茜はリビングに入りギルシェ達を見ると、手に持っていたスーパーで買った食材の入ったビニール袋を落とした。
そして、目を丸くして再度ギルシェを見ると、体を震わせながら立っていた。
「やはり‥‥‥か」
「ど、どうして‥‥‥」
「久しぶりだね」
ギルシェのそこ言葉にジンと舞は驚いた。
しかしそれに輪をかけた様に驚いていたのは茜だった。
「何故‥‥‥ここに?」
「ああ?この世界に魔物、魔人が現れた」
「!」
茜はさらに驚きギルシェに
「魔物、魔人は?」
「うん?ああ、送り返した」
それを聞いた茜は安心したのか、力が抜けた様に膝を落として座り込んでしまった。
だがギルシェの次の言葉に茜の体から血の気が引く事になる。
「お前の息子、ジンによってな!」
「ジン‥‥‥!ジンて!なんでジンが魔人を!」
「ジンはリンクをしたんだよ。そこに居る女神候補生とな」
茜はソファに座るミュウを見た。そしてゆっくりと立ち上がると、ミュウに近寄る。しかしその表情はまるで何かに取り憑かれた様な表情。憎むべき者が目の前に居るような表情。
そしてミュウの前に立つと、ミュウの両肩を掴み
「なんで貴女がジンと!なんで!なんで!」
叫びながらミュウを揺らした。
あまりの急な事で、ミュウは抵抗も出来なく、なすがままの状態。
「‥‥‥はあ!か、母さん!何してんだよ!」
「ジン離しなさい!この子が!この子が!」
「ママやめて!」
叫ぶ舞にジンはミュウから茜を無理やり離した。
「母さん!いったいどうしたんだよ!」
「帰って‥‥‥」
「えっ?」
「帰って下さい!」
「母さん!」
「いいから帰って下さい!」
放心状態なのか、茜は泣き叫びながらミュウやギルシェ達に言う。
「母さん!いい加減にしてくれ!あの時ああでもしないと俺や舞は死んでいたかもしれないんだ!」
ジンが茜にきついような言葉言うと茜はジンの顔を見ると急に膝まずき、両手で顔を覆うと涙を流した。その姿はまるでジンがどこかへ行ってしまうのではと、思う不安な気持ちがあるかの様に。
「ジン‥‥‥」
「ミュウ‥‥‥その、すまなかったな。母さんがここまで取り乱すとは」
「ううん。いいの。それよりこの人はジンのお母さんよね?」
「ああ、そうだけど」
「ジン、この人私と同じ感じがする」
「はあ?ミュウと同じ?ありえないだろう!母さんはこの世界の人だぜ!」
そう言うとミュウは首を傾げる。だが、ギルシェが言う言葉にジンまさかと思った。いや、そうであってほしくないと思った。
「ジン、お前の母親は女神候補生だ!」
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