第20話 ひと時の勝利

クラリスの両手から「ボオッ!」と音と共に二本の炎に包まれた槍が出てきた。クラリスはその槍を強く持つと、左腕を前に右腕を後ろにし、構えた。そして‥‥‥


「行きます‥」


タアッ!とキマエラに突進。右腕に持つ槍を振り上げると、キマエラの左足を目掛けて振り下ろす。キマエラの切られた場所が炎でつつまれる。


「ズバァ!ボオッ!」


「ギアアアアアア!」


叫ぶキマエラは、クラリスを睨み付けると、クラリス目掛けて突進!が、クラリスはヒラリとかわす。そして次は右足に左で持っていた槍を振り下ろす。今度はキマエラの右足が炎に包まれる。


「ギィギィギアアアアアア!」


「まだよ!キマエラ!」


キマエラの前足がズズウーン!と音を立てて崩れる。しかしキマエラはクラリス目掛けて後ろ足で体を動かすと尻尾を振り下ろす。


「ヒューン!」 「ドオーン!」


クラリスは今度はジャンプでかわす。その高さは10メートルは飛んでいるだろうか。まるで体操選手の様な軽やかさで上空で体を回転させると、キマエラの背中に乗った。その戦いの様子を見ていたメイリは


「す、凄い!‥‥流石先輩です!」


魔物との実戦を始めて目の当たりにしたメイリは驚き、益々尊敬の眼差しでクラリスを見ていた。そしてクラリスはキマエラの背中に両手の炎の槍を突き刺した。


「オーバーファイヤー!」


叫ぶクラリスと同時に、槍から炎が湧き上がり、キマエラを炎が包む。そのキマエラは、痛いのか、苦しいのか、まるで悶えるような叫びをあげる


「ガア‥ガアアア!」


そして‥‥キマエラは力尽きたのか?「ズウーン!」と音を立てて地面に沈む。

そんな光景を見ていた神は、まるで夢でも見ているような表情をして、目の前の現実を見ていた。


「あの女性‥‥凄い。けど‥俺の目の前のは‥現実?」


そんな神の横で喜び歓喜するメイリ。


「凄い!凄すぎます先輩!」


そんなメイリの表情は神とは相対処な、まるで勝利の女神がいるかの様な表情で笑顔を見せていた。しかしクラリスはまだ緊張の糸は切れていない。


「まだよメイリ!ここからが本番!見てなさい!」


「えっ!」


驚くメイリを尻目にクラリスは、倒れたキマエラを前に目を閉じた。


「ミミ‥‥お願い」

『ええ、任せて』


クラリスが言うと、クラリスとリンクして一心同体、シンクロし、クラリスの中にいたミミが返事をする。その瞬間、クラリスの体が光りだす。そしてクラリスの目の色がブルーからグリーンに変わった。


「あれは‥何をしてるんですか?」


「あれは‥魔物を送り返す為に先輩とシンクロした女神候補生と精神を入れ替わっているのよ」


「はあ?送り返す?精神を入れ替える?」


メイリの言っている意味がわからない神は、もう一度メイリに質問をすると、メイリは


「まあ、見ていてください」


そう言われ、神はクラリスを固唾を飲んで見た。


「ハアーッ、精神は入れ替わったわ」(ミミ)

『ええ、後は任せたわ』(クラリス)

「ええ」(ミミ)


するとクラリスはいや、精神が入れ替わっているのでミミか、ミミは両手を合わせまるで何かに祈る様なポーズを取ると


「我が主アースよ!我に力を与えたまえ!‥‥バックゲート!」


するとキマエラの周りの地面に白い魔法陣が現れ、キマエラはまるで魔法陣に吸い込まれる様にゆっくりと沈み始めた。


「ズズズズズゥ‥‥」


「あれは‥いったい?バックゲート?」


神が不思議がって見ていると、メイリは


「バックゲートとは魔物を元の世界に戻すゲートです」


「元の世界に戻す?」


「ええ、魔物は倒すことが出来ないんです」


「はあ?倒せないのか?」


「ええ、だからああやって元の世界に返すんです。バックゲートを使えば魔物は、ゲート内で元の姿にも戻りますから」


メイリはそう説明するが、神はやはり説明の意味がわからなく、困惑していた。ただわかっていたのは危機は去った、と言うこと。




しかし‥‥‥この勝利の様なひと時も、直ぐに崩れてしまった。



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