第19話 二人の変化とマタンガ狩り

「えっ? 二人とも、どうしたの!?」

 マイア達と合流したボクは、美影と瑞樹の変わり様に驚いてしまった。


「えへへ、だいぶ変わったでしょ? 変わりすぎかもと思ったんだけど、ちょっと思いきっちゃった」

 照れながらもそう言う美影、今の名前は『エレクトラ』になっており、髪色もなぜか茶色になっていた。

 てっきりピンク辺りにすると思ってたんけどなぁ。


「なんでピンクにしなかったの?」

 実は美影はピンクが好きだったりする。

 今はエレクトラだけどね。


「実際明るめで良かったんだよね。ただ悪目立ちするかな? と思って控えることにしたんだ」

 得意顔でそう言う美影。

 そんなに誇らしげな顔しなくてもいいと思うんだけどなぁ。


「というわけで、ちゃんと『エレクトラ』って呼んでよね!」

 ばっちりVサインを決めながらボクにそう言ってくるエレクトラ。

 なんでそんなポーズ決めたんだか……。


「それで、瑞樹……もう『ケラエノ』だっけ。水色の髪にしたの? ケラエノにしては冒険したね」

 瑞樹こと『ケラエノ』はその髪を水色に染め上げていた。

 対照的にやや派手目を選んだ辺り、心境の変化を感じ取ることが出来る。


「いつも大人しいとか真面目とか言われるので、ちょっとだけ頑張ってみました。こう、やってしまうと開放的になりますね」

 少しだけすがすがしい顔をしながらそう言うケラエノ。

 なんだかんだで鬱屈していた部分はあったんだろうと思う。

 ここでくらいはそういう面出しても良いんじゃないかな?


「ちょっとびっくりしたけど、悪くないね! さて、それじゃいこっか」

 一通り確認し、マタンガ狩りへと出発する。

 7レベルの双子に、もうすぐ13になりそうなマイア。

 三人の育成の為にもひと頑張りしなきゃだよね!



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



「きたよ! マタンガ大きいの!」

 さっそく森までやって来たボク達は、近くにいた大きなマタンガを相手に戦闘を開始した。


「おーけー、任せて! 【剛力】」

「風を纏い駆けよ【風走(かざばしり)】」

 エレクトラの【剛力】とケラエノの【風走】がボク達全体を強化する。

 これで少なくとも負けることはないだろう。


「へぇ~、いい強化術ね。なら!」

 マイアはそう言うと、身体強化術を使う。


「【マイトフォース】」

 ボクは力がさらに強くなるのを感じた。

 どうやら【剛力】とは違い、単純に攻撃力を倍に上げる効果があるようだ。

 剛力の強化を倍にするとか、ものすごく強そう。


「いっくよ~! おりゃあああああ」

 エレクトラの物凄い速さの剣閃が大きなマタンガを襲う。


 マタンガは反応するも、間に合わず胴体から真っ二つになって倒れてしまった。

 おそるべし、筋肉娘エレクトラ。


「いやっほ~! すっごい威力ね! あたしこれ好きかも!」

 そんな脳筋的な発言をする烏天狗にボクは一言言うことにした。


「それじゃ鬼人と一緒だよ~?」

「!?」

 ボクの一言を聞いたエレクトラは驚愕の表情を浮かべながらこっちを見ていた。

 ボク達の間で脳筋とは鬼人族のことを指すので、鬼人族=脳筋という図式が成り立っているのだ。

 差別ってわけじゃないんだけどね。


「あたしはこれでも烏天狗よ!? 鬼人なんかと一緒にしないで!」

 鬼人と一緒にされたことでご立腹のエレクトラ。

 まぁ鬼人族に烏天狗みたいだねって言うと、あの鳥野郎と一緒にするな! って怒るからお互いさまなんだけどね。


「はぁ、エレクトラ。落ち着きなさいよ。そんなんだから言われるのよ? ちなみに私は言われたことないわ」

 ケラエノはエレクトラを見ながら余裕の表情でそう言う。

 

「ぐぬぬ~!!」

 それを見たエレクトラは何とも言えない顔で悔しそうに歯噛みしていた。


「ほら、次来たよ! やろやろ!」

 ボク達は次々とやってくるマタンガ達を相手にしばらく圧倒して回った。

 エンチャントが強力すぎてちょっとぬるげーになってきてるけど、レベリングも含んでるから気にしない気にしない!



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



「レベル10達成! おめでとうあたし!」

「レベル10です。もう転職ですね。進化は15レベルだそうなので、まだまだ先ですね」

「えっ? あたしは20だよ!? 何それずるくない!?」

 同じタイミングでレベル10になった二人だけど、進化のタイミングはバラバラなようだ。

 特性とかそういうのがあるんだろうか?


「双子でも違うなんてことあるんだね。でも二人とも烏天狗になるんでしょ?」

 今までの傾向から考えると、二人は烏天狗に進化するはずだ。

 ボクと同じだと思うのでハズレはしないだろう。


「うん、そうみたいね。最初に候補にあったから入れたんだよね」

「そうですね、やはり自分のルーツが一番です」

 どうやら二人とも自分の種族には誇りを持っているようだ。

 烏天狗は自尊心高い子多いからなぁ。


「スピカみたいに耳や尻尾はありませんけど、大きな翼があるので問題ありません」

 ケラエノはボクを見ながらそう言った。

 現在のボクは、前回同様人化を解除しているので妖狐姿だ。

 青銀色の狐って感じだね。


「お姉ちゃんのモフモフは最高だから、あとで心行くまで堪能すればいいんです」

 マイアはそう言いながら、ボクの尻尾を触ってくる。


「ちょっと、やめてよ。その指先でなぞるのは禁止!」

 妙なゾクゾク感があるので禁止することにした。

 触るならしっかり触ってほしい。


「は~い」

「ふふ、マイアちゃんは本当にスピカが好きね」

 ケラエノは嬉しそうにそう言う。


「ならあたしも触らなきゃね!」

 指をうねうねと動かしながらにじり寄ってくるエレクトラ。

 その動きと表情が激しく気持ち悪いので、ボクはうんざりした気持ちになりつつも、その場から逃げ出すのだった。

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