第25話 ミアの変化とボク達の狩り

 お婆ちゃんの家から帰って来たその日、早速ボクはレベル上げの続きを行うことにした。

 現在のレベルは12で、目標のレベルまではあと3つだ。

 そんなボクは今日は朝から狩りに来ている。

 場所はメルフィナ南のダンジョンだ。

 前に来たときは、ここでミアに出会うことがので思い出深いといえば思い出深いかな?


「今日前衛いないけど大丈夫? コノハちゃん」

 今日の同行者の一人である、コノハちゃんに声を掛ける。


「はい、問題ありません。マイアちゃんは今日はこれないっぽいですね」

 妹の友達であるコノハちゃん。

 マイアは朝から勉強のためにこっちには来れていない。


「ちょっと勉強でね。ボクもあとでしなきゃいけないんだけどね……」

 すでに8月8日なので、残りの宿題の処理が始まっているのだ。

 月末なんてあっという間だからという理由だ。


「10日までに宿題処理して、時間がかかるものは15日までというスケジュールみたい」

 計画立案は母であるメルだ。

 ボクは宿題がほとんど終わってるので、そこまで問題にはならなかった。

 毎年大体7月中に終わるからね。


「宿題かぁ。 私もまだ残ってるんでした……。半分ほど」

「ま、まだ前半だし?」

「スピカちゃんは毎年いつ終わってるんですか?」

「ええっと。その、7月中」

「えぇ……」

 ボクがそう言うと、コノハちゃんは俯いて黙ってしまう。

 何とかしなければ!


「そうだほら、マイアのところに遊びに来たときにでも何か奢ってあげるからさ?」

「いいんですか?」

 その言葉でコノハちゃんは元気になったようだ。


「う、うん。でもそんなに多くは奢れないからね?」

 ボクの言った言葉が聞こえてるかはわからないけど、とても嬉しそうなコノハちゃん。

 まぁいっかと思いつつ、傍らのミアを撫でる。

 撫でられたミアは嬉しそうに身体をプルプル揺らしていた。


『ご主人様、ミアも人型になりましょうか? まだ打たれ弱いですが、隠れて攻撃する分には問題ないかと』

 ミアからの念話を受け、ボクは人化の許可を出す。


『うん、わかった。でも、無理はしないで』

『かしこまりました』

 そう言うや否や、ミアの身体はゼリーのように伸びる。

 やがてそれは人型になり、色合いが人間の肌の色に近づいていく。


「ミアちゃんが人型に!?」

 驚くコノハちゃん。

 実はボクも驚いた。


「この姿になったのは初めてですが、なんとかなりました。変ではないですか?」

 ミアの顔はボクとコノハちゃんの中間くらいにみえる。

 身長は160cmほどだろうか。

 青い髪に青い瞳、肌色は白っぽく、その容姿は美人に見える。

 身体つきは華奢で胸は大きめ、母性溢れる女性といった雰囲気を感じる。

 ちなみに、眼差しは優しげだ。


「うん、美人さんだね、ミアは」

「本当ですね」

 ボクもコノハちゃんも大絶賛だ。

 

「ありがとうございます、ご主人様。あっ、敵です。【スプラッシュ】」

 お礼を言うと同時に、前方から現れたワイルドボアに水属性魔術を放つミア。

 吹き上がった激しい水流が、ワイルドボアのお腹を強打し吹き飛ばした。


「コノハちゃん、トドメお願い」

「了解」

 ボクの一言でコノハちゃんはすぐさま矢を放った。


 放たれた矢は、よろよろと起き上がっていたワイルドボアの胸のあたりを貫く。

 そして、ワイルドボアはそれっきり動かなくなった。


「お疲れさま、ミア、コノハちゃん」

「お疲れ様です」

「お疲れさま、あっ、レベルが上がりました」

 どうやらミアのレベルが1つ上がったようだ。

 もしかすると今日の狩りでだいぶ上がるかもしれない。


「おめでとう! さて、ついでだしダンジョン行こう」

「おめでとうございます。薬草もゲットしましょうね」

「ありがとうございます。錬金ならお任せください」

 ミアはやる気満々なようだ。

 ところで、何でミアは人型になれたんだろう?


「ねぇミア。なんで人型になれたの?」

 ボクは歩きながら問いかける。


「人化ですか? 精霊に昇華した時に覚えました。精霊は記憶を引き継ぎますから」

 そういえば、ミアは一度精霊に生まれ変わっていたのだった。

 スライムの精霊ってなんだか不思議な感じがする。


「精霊って誰でもなれるの?」

 スライムがなるくらいだから、他にもいるのではないかとボクは考えた。

 前例があるならないわけがないのだ。


「はい、長い年月を過ごした固体のうち、知恵と明確な意思を得られれば可能です。ウルフやワイルドボア、コボルトやゴブリンなどにもいますよ。基本は穏やかな性格をしており、集落などを作れば長老として過ごします。他種族との交流が可能な魔物の集落が存在したら確実にいるでしょう」

 もしかすると、人間でいうところの仙人みたいな感じなのかもしれない。

 となると、ボクはすごい子と出会っちゃったのだろうか?


「もうすぐダンジョンですね。がんばりましょう」

「お金稼ぐよ~!」

「屋台資金とレベルアップ」

 ボクの目的はもう決まってるからね。

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