スピカ降り立つ

 始まりの街『メルヴェイユ』

 この街は新しいプレイヤー達が集う街。

 様々な種族、様々な職業、そして三つの大きな国の中間という、『フィッツガルド連邦』の中でも特ににぎわった街だ。

 

 ルーナとのやり取りを終えて新世界へとやってきたボク。

 今いる場所はメルヴェイユの街の中心にある『世界門広場』だ。

『世界門広場』とはゲーム開始の初期地点のことだ。

 

「ようこそ! 私はこの世界門を管理する『ハワード』という聖堂騎士だ」

「!? びっくりしたぁ」

「おぉ、すまない。声を掛けるタイミングを間違えたようだ。異世界人の訪問者よ、ようこそ」

 白い鎧を着た大柄な男性に声を掛けられて、ボクは驚いてしまった。

 慌てて男性がボクに頭を下げて謝ってくる。

 そう言えば、ハワードさんと言っていたっけ?

 

「えっと、ハワードさん? はここで何を?」

「おぉ、聞こえていたようで何よりだ。私ハワードは世界門の警備を行っている。それと同時にこの世界にやってきた訪問者達に道を示す役割も担っているのだ。まずは冒険者ギルドに足を運ぶといい。場所は分かりやすく一本道だ。まっすぐ行った先に大きな三角屋根の建物がある。交差した剣の上に天秤が乗ったエンブレムがギルドを示しているぞ」

 ハワードさんはそう言うと、一つの方向を指示した。

 この街は大きく広いようで、言われた通りの目印はここからでは見えなかった。

 

「あっちの方向にあるんですね? ありがとうございます」

「はは、気にするな。これも仕事だからな。本来ならば我々がこの災厄を祓うべきなのだが、悲しいことに我らの力では強く汚染された者達を排除することが叶わなかったのだ。君たちが最後の希望なのだ」

 ボクが示された方向に向かって歩き出そうとした時、ハワードさんがそんなことを言いだした。

 その言葉とても悔しそうだった。

 

「きっと解決出来ますよ。とは言っても、ボクにはまだそんな力はないですけど」

「君はまだ幼いのに困難へと立ち向かうのだな。偉いものだ。それに、何やら不思議な気配を感じる」

 ハワードさんはボク達プレイヤーを救世主のように感じているのだろうか?

 もしそうなら、騙しているようで申し訳なくなってくる。

 もちろん、この世界を救うというのは共通目標だから達成はするだろうけど……。


「そうでしょうか? でも、出来るだけ頑張ります」

「あぁ、無理しない程度に頼む。それと、新人冒険者になるなら助言だ。街のお手伝いは出来る限り受けると良い。良いことがあるだろう」

「お手伝いですか? わかりました。出会ったらやってみます」

「うむ、では気を付けていくのだぞ」

 ハワードさんの助言を胸に、ボクは早速歩き出した。

 この世界の街並みは、ヨーロッパの街並みに近いだろうか。

 いわゆるありきたりな西洋風といった感じだ。

 自分達の世界にはない物が全て珍しく感じてしまう。

 

「世界門を中心に円形に広がってる広場があって、世界門のすぐ南側には噴水があるのか。周りは露店ぽいお店がたくさん並んでるなぁ」

 世界門広場はこの街の憩いの場所のようで、ベンチとテーブルが設置されておりそこで食事を摂る人の姿が目に入る。

 周辺の露店には、簡単に見た限りだと食事やお土産品、武器防具や道具類といった物が売られていた。

 

「ふぅん。見てみたいけど、お金ないからなぁ。見ても買えないんじゃ見るだけ損だよね」

 興味はあるものの、必要となる財貨が存在しない。

 なので後ろ髪を引かれつつも、泣く泣く諦めるしかないのだ。

 そんな思いを断ち切るためにも、ボクは冒険者ギルドを目指す。

 一番の目的は兄との合流。

 そして冒険者ギルドへの登録だ。

 

 しばらく歩くと、一軒の大きな建物が見えてきた。

 おそらくこれが冒険者ギルドなのだろう。

 入り口はどこだろう? と思って見てみると、何やら見知った人の姿を発見した。

 黒い短髪の髪に、170センチくらいの身長、すらりとした体躯。

 優しげだが同時に好奇心旺盛そうな雰囲気も感じる。

 その上顔が整っているものだから、さっきから近くの女性に声を掛けられ、筋骨隆々な男性にも声を掛けられている。

 それはどう見てもボクの兄だった。

 そんな人が今、こっちを見つけたようで慌てて駆け寄ってくる。


「おぉ!? 昴か? よかった助かった」

「はぁ、何やってるのさ。賢人兄」

 賢人兄こと八坂賢人。

 ボクの大好きな家族の一人だ。

 そんな兄は現在、ボクをひしっと抱きしめている。

 公衆の面前でそれはどうなの? 賢人兄……。

 

「ひゅーひゅー、お熱いねぇ!」

 どこからともなくそんな冷やかしの声が飛んでくる。

 なんだか急に恥ずかしくなってきたじゃないか!

 

「おっと、ごめんごめん。俺はここでは『アークトゥルス』だ。適当に『アーク』とでも呼んでくれ」

 指摘されてすぐ、アーク兄はボクから離れた。

 ちょっとだけ寂しい気もするけど、言わないでおこう。

 

「いやー、助かったよ。女性陣のしつこい勧誘も大変だったけど、妙にお尻ばかり見てくる男にも難儀しててなぁ。おっとそうだ。この後冒険者ギルドに登録しに行くわけだけど、自分のステータスの見方は分かるか?」

 アーク兄は心配そうにボクにそう言う。

 ナビゲーターとの会話で自分の姿とか確認していたため、何度か初期ステータスは確認していた。

 だからボクはすぐにナビゲーターに教えてもらったと答えた。

 

「ナビゲーター? そんなのいたっけ? まぁ俺の後に実装されたんだろうな。俺はベータテスターやってたから省略されたんだろう」

 アーク兄は一瞬疑問を浮かべたものの、そう結論付けた。

 

「ベータテスターと新規プレイヤーって結構違うの?」

「おう、ベータテスター組はちょっとしたプレイボーナスが付いててな、ギルドの説明とかそういったものも省けるんだ。武器防具も特典装備が貰えるから結構最初から強いんだぞ?」

「なにそれずるい!」

「そう言うなよ、最初なんて種族は人間しかなかったんだからさ」

 どうやら思ったよりもベータテスターは優遇されていたらしかった。

 特典装備いいなぁ……。

 

「はは、いいだろう? うらやましいだろう? でも俺としてはそのナビゲーターとやらも見てみたかったなぁ」

 アーク兄は若干残念そうだった。

 そのうち会えるかもしれないから、その時見せてあげよう。

 合えると言っていたしね!

 

「そんじゃ早速ギルドにいくぞ? ステータス確認忘れるなよ? 初期スキルに何があるのか理解しておくと楽になるからな。それと、ステータスはここによって差があって一定じゃないけど、低くても悲観するなよ? やりようはあるからな」

 アーク兄はそう言うと、ボクの頭を優しく撫でてくれた。

 今は人化してるので耳はないけど、それでも若干くすぐったい。

 


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 名前:スピカ

 年齢:12歳

 種族:妖狐族

 性別:

 職業:道士見習い

 所属パーティ:

 所属クラン:

 登録ギルド:

 冒険者ランク:


 レベル:1

 HP:10

 MP:10

 SP:10


 筋力:2

 耐久:3

 俊敏:1

 魔力:1


 所持スキル:

 ■武器マスタリー

 【短剣マスタリー:ランク1】【スタッフマスタリー:ランク1】

 ■防具マスタリー

 【ローブマスタリー:ランク1】

 ■知識

 【薬師の知識:ランク1】【彫金の知識:ランク1】【鍛治の知識:ランク1】【木工の知識:ランク1】【鑑定:ランク1】

 ■攻撃術

  ■符術

  【炎符:ランク1】【雷符:ランク1】【氷符:ランク1】【水符:ランク1】【風符:ランク1】【土符:ランク1】

 ■変化術

  【人化:ランクMAX】

 ■所持中の加護・権能

  ■加護

  【女神の加護】

  ■権能

  【妖狐の権能】

  

================================

 ※人化中は能力値が一律10%マイナスされます。

 ※種族特性により性別確定まで能力値の伸びに制限がかかります。


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 最初から前途多難だった。

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