第3話 私にしかできないこと

 目を開けると、町にいた。後ろを振り返ると、あの花園ではなく、いつものカフェが、そこにあった。周りにはモニターで見たように、多くの人が苦しんでいた。近くにマスターが倒れているのに気付き、駆け寄る。

「マスター!大丈夫ですか?!!いったい何が?」

「……あぁ、メルちゃん、無事だったかい。私は大丈夫。教会の近くの湖の妖精がいきなり町を襲ったんだ。」

「クラリッサが……?!!」

マスターが驚いた。

「メルちゃん、妖精の名を知っているのかい。妖精は、心を許した相手にしか、名を教えないんだ。それどころか、姿を見せようともしない。なぜか今は、私達にも姿が見えているが……。本当に、仲が良いんだね。」

「え……。」私は、心の中で名前を呟いた。

 マスターや町の人たちを教会へ避難させ、シスター達とも合流した。

「メル!姿が見ないから、心配で……。けがは?さぁ、早く中へ!」

「大丈夫です、ありがとう。心配かけて、ごめんなさい。でも、やらなくてはいけないことがあるの。私にしかできないことなの。」

私の瞳を見たシスターは、

「わかりました。気を付けて。」そう言って、私の頬を優しく包む。

「いってきます。」


 行き慣れた道を走り続ける。だんだんと辺りが暗くなり、いつもとは違う雰囲気に少し身を震わせる。しかし、私は決して止まらなかった。

クラリッサがいつもいる湖に着いたが、姿が見当たらなかった。

「どこにいるの、クラリッサ……!」

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