第37話「犯人が分かる最強の一手があるかもッ!!」
「意外ね。自殺はしないと思っていたのだけれど」
ニョニョは
「もしかしたら謎が解けたのかもしれないよ」
「それはないと思うんだけど。あの暗号はたぶん……。でも居なくなった人の事を考えても仕方ないわね。ところでティザン。坂上さんの部屋を見てきたのよね?」
「うん。写真も撮ったよ」
僕はそのデータをニョニョへと渡す。
ニョニョは写真をまじまじと見つめると、首をひねった。
「う~ん。この小物の動き方って一方向よね。凄く体躯の良い人物が入って来たみたいだけど、そんな人居なかったわよね」
僕はニョニョのその一言で
「わかっ……てないや。どうやって鍵を開けたのかがわからない」
殺害方法は分かったと思うけれど、坂上さんの部屋の扉を開ける方法もわからないとダメだよね。
「えっとティザン、鍵って何?」
「えっ!?」
僕はニョニョの言葉に驚きつつ、説明をした。
「この部屋に入って鍵を掛けなかった?」
ニョニョは複雑な表情を浮かべたまま首を横に振った。
「ほら、メニュー画面に『ルーム』って表示されて、『セーフティを掛けますか?』ってところを選択するんだけど……。知らなかったんだね」
「うぅ、そうよ! 普通こんなの知らないわよ! 鍵はオートロックだと思うじゃない!?」
「ニョニョって金持ちだっけ?」
「普通の中流階級よッ!」
「それならリアルでも手動で鍵をかけるよね?」
「リアルはリアル! CTGはCTGよ!」
そんな
僕は苦笑いを浮かべながらニョニョをなだめる。
「でも、ニョニョのおかげで鍵の件はクリア出来たから! ありがとう!」
「ま、まぁ、そうよね。あたしですら分からないんだから、坂上さんもきっと」
「うん。鍵は掛けていなかっただろうね」
「じゃあ、ティザンの推理が成立する訳ね。聞かせてくれる?」
僕は頷いた。
名探偵なら、ここは想像の域を出ないからと断るところだろうけど、生憎僕は『名』になれない探偵だから、出し惜しみは無しだ。ガンガン言っていく。
「これはたぶん、ここに居る人物では僕とアリー、それから犯人しか知らないだろう方法なんだけど、一応念の為聞くけど、MPKって知ってる?」
「いいえ。知らないわ。PKはプレイヤーキルでしょ。残りのMは何かしら?」
ニョニョは
「一回ニョニョが僕にやりかけたけどね」
僕は意地悪く言ってから、MPKのMはモンスターのMだと説明した。
「つまり、モンスターを引き連れて故意に他のプレイヤーに押し付けプレイヤーをキルすることをMPKって言うんだよ」
「あ~、なるほど、わかったわ。ティザンはフェニックス樹海の事を言いたいのでしょ! でもあれはあたし悪くないじゃない! むしろ落とし穴に落とされたんだからあたしの方が被害者よッ!!」
「ま、まぁ、その件は置いといて……。つまり、何らかの方法でモンスターをここに出せれば、PK不能な状態だったとしても、プレイヤーを殺せるんだ」
「なんらかの方法って?」
僕のいまいち歯切れの悪い推理にニョニョから突っ込みの声が入る。
「う~ん。それが断定出来ていないんだよね。もしかしたらこのギルドスペース内にモンスターが出る場所がある可能性もあるし、他にはモンスターを呼び出すアイテムが使われたかも。あんな毒を使ったくらいだし、そんなアイテムを持ってても……」
「つまり、殺害方法は分かったけど、犯人が分からないってことね。でも、ここまで分かっていれば、あとはここにモンスターが出る場所がないか探す事で犯人が見つかるかもしれないわね。ってティザン、聞いてる?」
ニョニョは難しい顔をしながら、僕が言いたい事を要約するが、僕は自身の言葉の引っかかりが気になり、それどころではなかった。
「え! あ、ああ、ごめん。ちょっと気になる事があって。確認してみないと何とも言えないけど、もしかしたら犯人が分かる最強の一手があるかもッ!!」
それは僕だけが持っていた情報。犯人すら、誰かが知っているなんて想像もしないとっておきの情報だッ!!
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