第19話「いったい犯人は何を狙っているの?」
ニョニョの報告を受け、僕は一度事務所へと戻った。
そこにはすでにニョニョと初めに依頼を持ちかけたスティングが対面にソファーに座っていた。
「ティザン、遅かったな」
スティングは言い方こそ普通だが、今回の件でだいぶイライラが
「ごめん。それで、今回はどこの誰が?」
僕は遅くなった謝罪もそこそこに、どちらかが答えてくれるのを期待して問いかけた。
「今回は、『チリペッパー』の『ハッカク』というプレイヤーが断頭PKにあった」
スティングが悔しさを滲ませながら答えてくれた。
「相手のギルドは分かる?」
「確か、『マスターはんど』っていう中小ギルドだったな」
僕はある共通点というか、必然性を見出し、確認する為、スティングに問いかけた。
「ねぇ、ギルド『スタちゅ~』って結構大手のギルドだったよね?」
「ん? ああ、そうだな。GvGにも出るが、主に生産系で大活躍しているギルドだな」
「それと、『ローリング』さんが出向いた所も大手じゃない?」
「そう言えば言っていなかったな。『ローリング』は俺のギルドの傘下にあたる、『スタちゅ~』というギルドに出向いていたんだ。もちろん、『リバティ』に次ぐ大手だぞ!」
「やっぱり!!」
僕は机の上に画面を表示させると、皆に見えるように図を書いた。
1人目 『イーノ』 自分
2人目 『ローリング』 自分G『スタちゅ~』 相手G『だいあもんど』
3人目 『ハッカク』 自分G『チリペッパー』相手G『マスターはんど』
「2人共これを見て気づくことはない?」
スティングが頭を悩ませていると、ニョニョはすぐに気が付いたのか、「あっ!」と声を上げた。
「これって全部PKに会っているのが大手ギルドねっ!」
僕はその言葉を満足気に聞くと、さらに付け足した。
「それだけじゃないよ。相手のギルドも絶対に中小クラスのギルドなんだ。まぁ、これは必然っちゃあ必然なんだけど、
自信満々に言ってのけたけど、何やらニョニョは不満気だ。
「それなら、中小ギルドだけでいいんじゃない? 相手が大手なのはなんで?」
あれ? そう言われてみれば確かにそうだ。
確実にこれは共通点で犯人が狙う何かになっているはずなんだ。
僕は自分で書いた図を見ながら、頭を捻って考えたけど答えは出なかった。
こういうときは、とにかく足で稼ぐに限る!
「スティング! 相手が中小ギルドに総当りでGvGを仕掛けるよ!!」
「ああ、わかった! それしか無さそうだし、悩んでばかりで動かないのは俺の
僕はスティングに大手に臨時で入れるように頼んでもらい、中小ギルドとのGvGに
スティングも『リバティ』を率いて、中小ギルドとのバトルに
※
数時間後、全く成果を得られなかった僕ら2人は遠い目をしながら事務所へ戻って来た。
「ごめん。ニョニョ。成果無しだ」
僕らは疲れもあり、ソファーへドカッと座る。
テーブルの上にはまだ先ほど僕が書いた図が置かれている。
改めて眺めて見てもサッパリだ。
「くそっ! ティザンの話が本当なら、連続殺人事件だろっ! うちのローリングが何をしたって言うんだッ!! さっさと姿を見せやがれってんだチクショウめッ!!」
スティングは大きな握りこぶしを怒りに任せてテーブルに叩きつける。
ドンッと大きな音が響き、テーブルの一部テクスチャが揺れる。
リアルであったならテーブルを叩き壊しかねない威力だ。
その衝撃と音が鳴り響いたその時、僕の脳裏に電撃が――走らなかった。
替わりにニョニョが何かに気が付いたようで、急に立ち上がって僕が書いた図を覗き込む。
「連続殺人……。そしてプレイヤー……。アタシ分かったかもッ!!」
「本当に!? いったい犯人は何を狙っているの?」
「ふふんっ」
ニョニョは誇らしげに大きな胸を張ると、女教師のように説明を始めた。
「見て欲しいのはギルドではないのよ!」
「ギルドじゃないって言うとプレイヤー?」
「ええ。そうよ! ほら、これでティザンも分かるでしょ?」
僕は自分で書いた図をもう一度覗き込む。
「ああ、なるほど。そういう事か。だから人が多いギルドが……。でも、これだと……」
僕はニョニョの表情を伺い見ると、視線に気づいたのか、ニッとイタズラっ子の様な笑みを見せる。
やばい。嫌な予感しかしない。
僕は装備とスティングを確認してから腹をくくった。
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