第52話学園への襲撃
「くそっ、"
少年が手に電気を通しながら目の前の男に向かって拳を放つが、男はその攻撃を黒い板で防ぐ。絶縁体で出来ているのだろうか、男は痺れた様子を見せない。
「諦めなさい、この学園で『一位』であるあなたのタビアはすでに把握しています。大人しく呪縛から解放されるのです」
「くそっ、何なんだよお前ら! 俺らが何をしたって言うんだ!」
学園の中庭には生徒がそこら中に倒れており、校舎も半壊、立っているのは襲撃して来た者達だけ、まさに地獄とも言える光景だった。その地獄とも言える場所で、少年は一人で、襲って来た者達と相対していた。
最初は訳が分からなかった。まず初めに生徒が複数倒れ始め、結界があった筈がいつのまにか襲撃者達が学園に侵入しており、気が付いたら教師も倒れ、少年が最後の一人となっていた。
「我々はあなた方を苦しめに来たのではありません。救いに来たのです」
「訳の分かんねえ事言ってんじゃねえぞ! "
少年はそう言いながら手を地面につけ、逆立ち状態になる。
「なっ!」
そしてそのまま、気付いた時には男の傍で、男に蹴りを入れていた。男はそのまま吹っ飛んだが、相当鍛えているのだろうか、蹴られた部分を抑えながらも、すぐに立ち上がった。
「くっ、なるほど。磁場を操って私の元へ高速で来たのですか。さすがは『一位』と言ったところですね」
「まだまだこんなもんじゃねえぞ! "
少年は引き続き男に蹴りを入れようと逆立ちの状態のまま男に近付く。だが、
《ガシッ》
少年の足は途中で割り込んで来た何者かに掴まれてしまった。それに驚いた少年は思わず距離を取る。
「くそっ、俺の"
自分の蹴りを止めた人物、その正体が分かった途端、少年は思わず言葉を失う。
「悪いが、彼を傷付ける事は許されない。私の依頼主なものでね」
「そんな事はどうでもいい! そんな所で何やってんだよ
「何って、彼らの協力だが?」
そう、少年の蹴りを止めた人物、それはこの学園の学園長だったのだ。
学園長が裏切り者、その状況に訳が分からなくなった少年は今度は近衛に向かって攻撃を入れようとする。
「ふざけるなよ! "手雷そっ……」
しかし、その前に近付いて来た近衛によって腹を殴られ、気絶させられてしまう。
「悪いな少年。はあ、ではあとは頼みましたよ」
「分かっています。本当はあなたも呪縛から開放してあげたい所ですが、あなたは『鳴細学園』が終わってからにしましょう」
「そうですかい、では自分はこれで」
そう言い、近衛はその場から立ち去ろうとする。しかし、
「ま、待て」
「なんだ、こんな所まで来てたのか」
這いずって来た五十代くらいの男性に足を掴まれてしまう。その男性を見た近衛は立ち去ろうとするのをやめ、男性の顔を真正面から見る。
「お前……ソーサラー……だろ。なんで……『聖人教』の味方なんか……する」
「……それが依頼だからだ」
「私の……生徒を……殺めたお前らは……絶対許さない。必ず……林道が……仇を……取ってくれる」
「へぇ、じゃあその林道とやらには気を付けないとな。それと安心しな、あなたの生徒は死んでいない。気を失ってるだけだ」
近衛が最後の言葉を言う前に、男性は気を失ってしまった。
「それじゃあ新しい人生を楽しみなよ、
そう言い、近衛と思わしきはその場から立ち去った。
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