第44話代表決定戦 決勝
「最初から全力で行かせて頂きます! "
「"
模擬戦開始と共に"豪炎地帯"を使った薺に楽斗は攻撃した。さっきの美桜との試合から、"
「"
だが、流石は薺だ。しっかりと楽斗の攻撃を止めていく。しかしそこで諦める楽斗では無い。楽斗はすかさず"
「くっ」
「"
薺が怯んだのを確認した楽斗はすぐさま後ろに音の爆発を作り薺に近づき、音の振動を纏わせた拳で殴りに行った。
この"
「"
それを見た薺は空かさず防御技を繰り出す。楽斗の"
「"
楽斗が距離を取ったのを見た瞬間、今度は薺が攻撃を始める。
「"
新海と戦った時にも使った青い炎の風、これは楽斗と相性のいい技だった。楽斗が防御技として使っている"
これにはタビアの性質ではなく、楽斗自身が関係して来る。音を操るという、扱うのが難しいタビアを完璧に操り、七百二十人いる『鳴細学園』で十八位という高順位にいる楽斗にも一つ弱点があった。それは、一度に一つの事しか集中できないという事だ。ソーサラーは普通、最低でも二つの技を一度に使う事が出来る。もちろんこれは元から出来るというわけではなく、練習すればの話だが。
しかし、楽斗はいくら練習してもそれが出来なかった。練習方法が悪かったわけではない、タビアが悪かったわけでもない。ただただ楽斗の生まれ持った能力がそうさせなかっただけだ。
そのため楽斗は"
しかし、それがなぜ薺の"
「くそっ、仕方がねえ! "
熱に耐えられなくなった楽斗は"
(あれは確か泡島さんを戦闘不能に追い込んだ技。どんな仕掛けがあるか分からないですけど、ここで畳み掛ける!)
しかし、そう思った薺に次の瞬間強烈な目眩が襲った。その目眩で、先程までピンピンだった体が動かない程だ。そして薺はそのまま地面に片膝をついてしまう。
(な、何これ!?)
「ふう、風も収まったな。薺ちゃん、せっかくだから教えてあげるよ、俺の"
(口が動いてるのは何か説明しているからでしょうか? ダメ、意識が朦朧として来た。もう、これ以上は……)
意識を保てなくなった薺はそのまま地面に倒れ……
「うあああああ!」
「!?」
突然雄叫びをあげた薺に楽斗はびっくりする。
(ダメだ! 負けてなんかいられない! 私は絶対に負けちゃいけないんだ!
「"
薺がそう叫んだ瞬間、今まで燃えていた薺の周りの炎がさらに勢いを増した。
「おいおい、嘘だろ? まだ目眩は起こってるはずだよな!」
もちろん今この瞬間も薺はひどい耳鳴りや目眩にあっている。しかし、そんな事を意にも返さないような勢いで薺は楽斗に攻撃を始める。
「"
そう叫んだ薺の周りには今まで見た中で最も大きい炎の球が数個浮かび、楽斗の方へと飛んだ。どうやら"
(ここで、"
先ほども話した通り、楽斗は一度に技を一つしか使えない。つまり、今ここで防御技を出すには"
「仕方ねぇか、"
一瞬迷った楽斗は"
「"フォルティッシモ"! "
"
次に、楽斗が回避するために使った"
("
「"
短期決戦しか無い、そう判断した薺はすぐさま燃え盛る炎の刀を手に持ち、自分の足に炎を纏わせ、足からジェット代わりに炎を噴射しながら楽斗に近付き、そのまま斬りつけようと刀を振りかぶる。
「"
もちろんそのままやられるような楽斗ではない、すぐさま"
だが、楽斗が"
(くそっ、どこ行った!)
似たような高速移動手段の薺と楽斗の技には、大きな違いが二つあった。まず一つは速さだ、これに関しては比べるまでもなく楽斗の方が速い。ただ、ここで問題となるのは二つ目、機動力の違いだ。楽斗の"
薺は楽斗が回避したのを見た瞬間、すぐさま上に上がり、楽斗の視界から外れた。つまり、楽斗から見れば薺が消えたかのように思えるように動いたのだ。そしてそのまま、
「はあっ!」
炎を纏わった刀を楽斗の上から振り下ろす。
「"
しかし、薺の刀が楽斗に届くまでの時間より、楽斗の反応速度の方が早かった。楽斗は薺の攻撃を確認した瞬間、すぐさま左に避けた。
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様々な駆け引きの末薺が振り下ろした刀を楽斗が避けた瞬間、それを模擬戦ルームの外から見ていた三組の生徒達と若宮は、刀を全力で振り下ろして、今隙だらけになっている薺の姿を見て薺の負けを確信した。
ただ一人を除いては。
「決まりだな」
「そうね、悔しいけど京也の言う通りだわ。楽斗の勝ちよ」
「凛もいい所まで行ったんだけどな」
「和葉も美桜も後で薺さんを慰めに行けよ」
「「言われなくても」」
「違ぇ、薺さんの勝ちだ」
「「「えっ?」」」
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薺の刀を避けた楽斗は、攻撃の準備をしながら一つどうしても頭から離れなかった事があった。
(おかしい、今の攻撃、あまりにも右に寄りすぎてなかったか? 薺ちゃんならもっと完璧に狙いを定められた筈なのに。まるで、誘導されていたような)
そう思った楽斗はすぐさま薺の顔を見た。そして、すぐさま安直に左に避けた自分の行動に後悔する。
薺は…………笑っていたのだ。
『ドーーーン』
「うわあああっ!」
楽斗はいきなり後ろから来た衝撃に叫ばずにはいられなかった。そしてそのまま前に吹っ飛んだ楽斗は倒れ、衝撃のした方向を見る。
(おいおい、嘘だろ? 何で
楽斗の目に映っていたのは避けた筈の薺の"
(なるほどな、あの技、外れた後でも自分の意のまま操れたのか……道理で。こりゃ、あっちが一枚上手だな)
『佐伯 楽斗、意識不明を確認、よって勝者、ランク十四、薺 凛』
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