ヒカリの評価
俺とアオが転移した先は、壁や天井がところどころ壊れて割れたステンドガラスの隙間から鈍い光の差し込む廃教会だった。
「また、すごいところだな」
「ボロボロの教会でジューンブライドって不吉じゃない?」
「たしかにな」
武器を構えながら教会の中を進む。今見た感じだとまだモンスターや仕掛けはない。
外に出てみると周りは謎の見えない結界で戻ってきてしまう。つまり、マップ的にはこの教会のみということだ。
「うーん。これはどうすればいいんだ?」
「なにか仕掛けがあるんだとは思うけど」
「だよな。アオ的に気になる場所ってあるか?」
教会の中に戻って俺は聞いてみる。正直謎解きとかは得意じゃない。
「さすがにそんなにわかりにくいことはないと思う。そうなるとやっぱりあの台座みたいなのが気になる」
アオがそう言って杖を向けた先には結婚式とかで神父が立ってたりするイメージのある台座だけが無傷で残ってる。
たしかに、こんだけぼろぼろになってる廃教会で、あそこだけ綺麗なのは気になる。
俺が先に立ちながら台座を調べてみると、掴んで引っ張れる取手があった。俺はアオに伝えて警戒してもらいながらそれを慎重に引っ張る。
一度引っ張るとガコンという音がなり、台座の更に奥の床が音を立てて横に開いていく。そして地下への階段が現れた。
「こっからが本番ってことか」
「だね。あたしが後ろ歩いていけばいい?」
「だな。ただ、広くなったら前後ろよりは並んで歩いたほうがいいかもしれないな。敵がどこからくるかもまったくわからないし」
「わかった」
俺はアイテムのランタンを取り出してベルトに引っ掛ける。そしてゆっくりと階段を降りていく。教会と同じ質の石造りの地下らしくしばらく降りていくと、横で3人ちょっとは並んで歩ける通路に変化する。
「ところでさ」
「うん? どうした?」
広い通路になって横並びでゆっくり進んでいると、静かだったアオが何かを聞いてくる。
「ナツってヒカリのことどう思ってるの?」
「どう……とは?」
アオにしては珍しい質問だ。
「いや、なんとなく。ナツが仲良くなる女子って久しぶりだから」
「まあそうだな。というかアオを除くと初めてか?」
「幼稚園とか小学校の低学年の頃はいなかった?」
「まあいないわけじゃないけどさ。あの頃って年齢的に男女の意識もなかったしな。てか、その頃ならもう仲良かったし知ってるだろ」
まるで知らないような雰囲気だったけど、ずっと一緒なはずだ。
「まあ話の流れ的に改めて覚えてるかね」
「あー……ホント珍しいな。まあ、でもどう思ってる言われても。絡みやすくはあるな」
「そうなの?」
「まあうん」
ヒカリさんであり大川さんはゲームでも現実でも積極的に話しかけてくれるから、特に女子相手だと受動的にしか話せない俺としては絡みやすい。
「あたしも絡みやすい」
「だろうな。仲良くなるの珍しいし」
「うん。でもヒカリって……あれ。その、モテてるイメージがある、けど。好きになったりはしないの?」
ものすごい歯切れが悪いがどうしたんだろうか。触れないほうがいいのか。
「まあ友達的には好きだけど、恋愛的には考えてないな。というか、あんまり意識的に恋愛がわかってないからな」
「そうなんだ」
「そうなんだよ。っと、なんか扉だな」
モンスターに特に出会うこともなく両開きの扉の前にたどり着いた。
「まあ、話の続きはこの部屋が安全かわかったらでな」
「わかってる」
俺とアオはゆっくりと扉を押す。
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